19_隠密機動の初陣と、地に潜む痕跡
「コモレビ、到着しました。隊長の月乃です!」
「入りなさい」
「はい! 失礼します」
翌日、学園の理事長へと就任した第三席に呼ばれていた。
「ようこそコモレビ諸君。早速だけど、アンタたちに任務を与える」
鋭い目つきで威圧的な態度に全員の背筋がピンと伸びる。
「概要は国王秘書より聞いていると思うけれど、昨今の魔物襲来に向け我々ガーディアンは世界的な緊急対応を取っている。そして、このアルカディア王国についても然りです」
世界各地に駐屯しているガーディアンには、七大執政から各隊長クラスに向けて防衛体制の強化が伝達されている。
「はい! 我々コモレビ部隊には特別任務があると聞き及んでいます」
「よろしい。これよりお前たちコモレビはこの第三席の傘下となり、隠密機動を主体とした特別部隊としての権限を与えます」
第三席の言葉に、 コモレビ全員が敬意を込めて頭を下げる。
「お前たちは他の部隊とは違い、少数精鋭の部隊。だからこそ秘密裏に調査をしてもらいたい案件があるわ」
「それが我々コモレビを隠密機動部隊にした理由ですね?」
「そう。それにお前たちの評価は第七席からも聞いている。期待していますよ」
「っ?! はい! 是非、お任せください!」
約一名を除いては、急に元気な表情となり、活気に満ちた表情となる。
『打ち合わせと違いますが!?』
『いいじゃない、この子らもやる気が出たでしょ? 国王様のアドバイスよ』
誰にも見えない死角で口パクを交わす二人。
乃愛の『国王のせい』にするまさかの茶目っ気に、桜夜はこっそり溜息をついた。
「それで第三席様、我々はまず何を?」
「アンタたちには『魔帝王』とその配下である『使徒柱』という魔物についての調査をしてもらいます」
「私たちも遭遇した、あの喋る魔物についてですね。ですが、まだ我々だけではあのソルベとかいう魔物に対抗できませんでした……」
「だからこそ、お前たちの引率をコイツにやらせます」
第三席がそう言うと、一人の男が入ってきた。
「なっ? ! なんであなたがっ!」
乙羽はその者に向けて一直線に飛び掛かる。
しかし、その者が指をパチンと鳴らすと、一瞬で乙羽の後ろを過ぎ去った。
「こんな野蛮なガキの引率などお断りしたいものだな、第三席よ」
呆れ気味にため息をつくのは、桜夜を第六セクターヘと飛ばした張本人、七大執政の第六席だった。
「黙れ外道。いや、無能と呼んだ方がいいか? 自らの副長に騙されていたマヌケなお前に選択肢はない」
「くっ……」
「なんや? どういうことや?」
乙羽と同じく敵意をむき出しにしていたコモレビへ、第三席から衝撃の事実が告げられる。
「……桜夜が第六セクターに飛ばされたことが、最初から計画されていただとぉ?!」
「それが自分の威厳のためやて?! それをあの副長が計画していた?! はぁ?!」
「それでまんまと騙されたってぇ~? 七大執政ともあろう者がぁ~?」
「……言い訳をするつもりはない。この者は俺が飛ばした先で保護される予定だった」
「惨めに騙された挙句、その者にも逃げられたと……本当に救えない無能ですね」
まるで虫を見るかのように蔑んだ目で第六席を見るコモレビの面々。
「私はこの外道メガネを絶対に許しません!」
乙羽はそう言うと、光の剣を鞘から抜く。
「野蛮な野犬が。俺に剣を向けるか」
「乙羽、落ち着いてください。私は大丈夫です」
今にも噛みつきそうな乙羽を、桜夜は背後からギュッと抱き寄せた。
その腕の中で乙羽が「うーっ!」と喉を鳴らす。
「乙羽、私の部隊である以上、コイツに敬意は必要ない。この者がもたらした影響を考えれば死刑もの。煮るなり焼くなり好きになさい。しかし、コイツにはまだ使い道があります」
第三席の言う通り、こいつにはまだ使い道があった。
少なくとも、消えた副長は同じ空間魔法の使い手であり、その痕跡を辿ることが出来るのはこの者だけ。
国王秘書たちの調べによると、乙羽や桜夜たちを隔離した特殊な結界はこの空間魔法を応用したものだった。
だからこその人選なのだろうが……いまだに歯を剥き出しに怒りを露わにする乙羽の姿に、桜夜は頭をかかえる。
――ここはソルベとの闘いがあった第三セクターのとある場所。
「しっかし、派手な戦いだったんだなぁ……」
「全くやで……よくウチら無事やったわ」
「本当に白姫様に感謝だよねぇ!」
「はい! 今度お会いした時に何かお礼が出来るといいですね!」
「うん! お体も回復されたって聞いたから、またきっとどこかで会えるよね! 桜夜っ!」
「え、えぇ……」
コモレビはさっそく第三席からの指示により、この場所の現地調査を行っている。
正確には姿を眩ませた第六席の元副長の追跡調査だ。
「全く頭が痛い……なんで俺がこんなクソガキどもと」
「黙れ外道メガネ。いつかお前は私が斬る。それまでせいぜいこき使ってあげる」
「お前が俺を斬れるようになる未来は一生来ないがな。せいぜい頑張れよ、クソ犬」
パチパチと火花を散らす二人を無視し、他のメンバーは周囲の捜索を開始する。
すると、穂香のドローンと美咲の魔導獣が、均等に地中に埋もれていた魔物の死体を感知する。
美咲の魔導獣がそれらを掘り起こすと、体内に不自然な反応を示す物体を発見する。
「これ、魔導力の痕跡が残ってるよね」
「えぇ。しかもこの魔物の魔導力に加えて、『他人の魔導力の痕跡』も残っているようです」
「地中に隠されてりゃあ気付かねぇわけだぜ」
「……ふん。わざわざ地中に隠して偽装した意図は、そういうことか」
「えっ?」
「この魔導力の痕跡、見覚えがある。……やはり、ヤツのものだ」
第六席の発言に、全員が鋭い目つきへと変わった。




