27 投資信託の話
「他には?」
「他に近況と言えば……株かな。前に利益が出てるって話、したじゃん。70万とか。一時期はもっと利益がでたんだけどね。結局もってる株の株価が下がって、それからむしろ損がでた。株って難しいね」
「70万ってすごいね。そんなに儲かることもあるんだね。いや、本当にすごいよ」
「うーん、そう言ってくれるとありがたいけど、結局その利益も消しとんだからね」
「そうかあ。そうは言っても70万はすごいけど。……今後に期待だね。まだ続けてるんでしょ」
「うん、そう。まあ今度は堅実にやるよ」
「私はiDeCoで投資信託始めたよ。今はちょっと利益でてるかな」
「あ、iDeCoやってるんだ。そうなんだ。いや、私も前からやろうやろうと思ってたんだけど、まだやってないんだよなー。利益でてるんだね。それはいいね」
あんなに投資関係の記事を読み漁っているにも関わらず、沙優はiDeCoを始めていなかった。iDeCoは個人がそれぞれに老後の資金を貯める為の制度であり、沙優なら月額1.2万円、年間14.4万円まで積み立てることができる(自営業者か会社員かなどによって最大積立金額は異なります)。積み立て時は所得控除の対象になり、運用益にも税金がかからないので、節税効果があり、お得なのだ。ただし60歳まで原則的に引き出せなかったり、運用方法が投資信託か定期貯金などかしか選べないという制約もある。つまり、沙優のやっているような個別株への投資はできないのである。
沙優はもちろん、iDeCoの対象が会社員などに拡大される時から関心を持っていた。公務員として仕事を始めたら、すぐにiDeCoも始めようと思っていたのである。しかし、公務員になった直後に株式投資、つまり元本割れの危険のある投資を始めてしまったので、同じく元本割れの危険があるiDeCoを利用した投資信託は見送ったのである。株式投資以外のお金はとりあえず安定した資産として貯金しておくことにしたのだ。iDeCoでは定期預金も選択できるが、貯金がそこまでない状態で、何かあった時に引き出せないところにお金を入れておくのもどうかと思ったのだ。働き始めて2年目からは思っていたより貯金もできるようになっていたのでiDeCoを始めようかとも思っていたのだが、先延ばしにしているうちに株で儲けるようになってしまい、iDeCoで運用するよりも株に資金を集中した方がよいと感じるようになっていた。再び株で損失を出してからはやはりiDeCoを始めたほうがいいかもと思っていたのだが、また先延ばしにしていたのだ。半分忘れていたとも言う。沙優はすでに十分リスクをとっているので、iDeCoを始めるならとりあえず定期預金から始めようと思っており、なんかそこまで気が乗らなかったというのもあった。節約や投資に関心があるはずなのに、関心にむらがある沙優だった。
「そうそう、ちょっとだけど利益でてるんだ。節税効果もあるしね。積み立てNISA(2024年からNISAの制度が変わるので、これはそれ以前の制度です)もやってるよ」
「そうなんだ。積み立てNISAもやってるんだ。すごい計画的に積み立ててるね」
「iDeCoも積み立てNISAも元本割れのリスクがあるから、リスク取りすぎかなって気にはなるけどね」
「積み立てNISAって年間の上限っていくらだっけ?」
「年間40万だよ」
「あー、そうなんだ。まあそれくらいなら、ありじゃない?」(※個人の感想です。運用する時は自分でも情報収集をして、よく考えてからしてくださいね)
「うん、そうかな。そうだと思う。安定した仕事についたのが遅いから、老後が不安なんだよね」
「それ、分かるわ」
積み立てNISAは沙優の使っている一般NISAと違い、投資信託を選んで積み立てる方針である。投資信託とはプロが株などの色々な金融商品を組み合わせて運用しているもので、一般的には購入手数料や信託報酬と呼ばれる運用中の手数料などがかかるが、積み立てNISAの場合は購入手数料はゼロだし、信託報酬も低水準に抑えられている。一般NISAと同じく税金の支払いを免除されている期間があり、最長20年間は税金もかからない(2024年からは制度が変わります)。一方iDeCoについては信託報酬がそこそこかかる場合もあるので、手数料のことも考えて選ぶのが重要とされている。※
「まーでも、莉緒花はすごいちゃんと積み立ててるんだね。なんかびっくりした」
「それをいうなら沙優も株してるじゃん」
「してるけど、私の場合は投機に近い時もあったし。あんまり堅実じゃないからなー。まあでもiDeCoは前からやろうと思って忘れてただけだし、これから始めるよ」
「そうだね。それがいいかも。沙優もだけど、私も定職につくのが遅かったからちゃんと貯めていかないとと思ってるんだ」
なんだか、沙優のうっかり具合が引き立ってしまうしっかり者の友達であった。
※iDeCo(投資信託の場合)もNISAも元本割れのリスクがあります。なるべく正確に、ある程度の情報を書いたつもりですが、全部は書き切れていないですし、もしかしたら不正確なこともあるかもしれないので、始める時には自分でも詳しく調べてからにして下さいね。新しいNISAについては、先の方で書ければいいなと思ってます。
この作品中の会社、人は全てフィクションです。株式投資は元本割れするリスクがある投資です。始める場合はリスク管理などの情報収集をしてからにしてください。




