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投資らいふ、時々副業夢想  作者: とうきのかえる
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28 人生の充実

 観光地に一泊して莉緒花と別れた後、電車に揺られながら沙優は考えていた。莉緒花が就職できて本当によかったと思っているが、充実した生活を送っている彼女にかすかな嫉妬を感じる場面もあった。

 沙優は弁護士になる夢を諦めたが、公務員として採用されて、人の役に立ちたいという気持ちはある程度満たされている。仕事では実際に市民の役にたてていると実感する瞬間もあるのだ。もちろんうまくいかなくて落ち込むこともあるのだが。

 公務員になれて満足している。だが、弁護士になったらもっと充実していただろうとか、もっと収入があったかも、と思う瞬間もある。それに莉緒花と違って沙優の仕事は休日や余暇の時間までそれに費やしても平気だと思える類のものではない。莉緒花の場合は生きがいと仕事が分かち難く結びついているのである。自分が株にのめり込んだり、お金が欲しいと思い続けているのは、弁護士になれなかった代わりに生きがいを求めたり、収入面だけでもロースクール時代の友達に追いつきたいという気持ちがあるのかもしれない、と沙優は思った。実際、よくよく考えてみたら、そういう気持ちが結構あるという確信めいたものがわいてきた。公務員になれただけでもラッキーで、非正規の仕事を転々とする未来もあったかもしれないと思うと贅沢な悩みではあるのだが。

 仕事を始めた直後は仕事を覚えないといけなかったし、プライベートでもインテリアに凝ったり服を買ったり、婚活を意識してみたりと新しいことを色々やった。それから四年がたった。仕事で新しく取り組むことはまだまだたくさんあるが、先輩方を見ているとなんとなく将来の見通しは立つようになり、プライベートでも欲しいものはある程度買って、目新しいことはそれほど起きなくなってきている。いや、株では起きているが、今は株もいい方向にはいっていない。

 結婚して子供ができたら子供にかかり切りになるだろうが、どうも結婚の気配は今のところない。今後の人生を充実させようと思ったら、自分から行動する必要があるのかもしれなかった。

 老後の心配をなくす為、急に仕事を辞めなくてはいけなくなった時のリスクを軽減するためにお金は欲しい。けれど、ある程度お金が儲けられたら満足というタイプでは自分はない。人生の充実もほしくて、沙優の場合、それはお金だけの話ではないのだ。それなら今後自分はどうするのだろうか。

 そういえば、イヤリングを作ったり、インテリアを充実させたり、投資する株価を選んだりするのは楽しかったが、それは沙優が物を作ったり、デザインを工夫したり、考えたりするのが好きだからである。司法試験の勉強をしている時は無駄に時間を使うのが怖くて、長編マンガは読まないようにしていたし、小説も読まないようにしていた。他の趣味も時間やお金がもったいなくて極力抑えていたのだ。だから仕事を始めたての頃の沙優の暇つぶしはネット記事を漁ることやネット小説を読むことしかなかったのでいる。ちなみにネット小説にはものすごく長いものもあるので読まないようにしたかったのだが、手軽なので勉強に疲れた時や暇な時についつい読んでしまい、時間を無駄にしたと感じて後悔したりしていた。

 株は長期で持つことにしたので割と暇を持て余していることだし、自分が何をしたら楽しいのか追求してみようと沙優は思った。子供の頃、絵を描くのが好きだったので画材を揃えて絵を描いてみてもいいかもしれない。一人暮らしを始めてしばらくは料理を頑張っていたが、最近は面倒になってきているので色々作ってみてもいい。本格的なお菓子作りに子供の頃から憧れがあったので、ケーキやタルトを焼いてみてもいいかもしれない。昔から物事を突き詰めて考えるのが好きだったので哲学か何かを勉強してみてもいいかもしれない。沙優は新しい趣味を見つけることを決意するのだった。

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