24 マイブーム、去る
「日常の中でいい感じの写真をとって投稿したら、いい感じに応援してもらえるかも、そしてフォロワーが増えたらお金にもなるかもって、ちょっとは思うよね。インスタって手軽に始められるし夢があるって思うよね」
何かというと、まあ沙優のぼやきである。ある程度インテリアを整えて、アカウントを取得した彼女は、一日一投稿しようと決めてインスタを始めた。人に見せたいけれど機会がなかったカーテンや小物の写真を撮って、毎日投稿していった。最初はうきうき投稿していたのだ。
沙優が最初に直面したのは写真を撮るのがめんどくさい問題である。彼女は写真を撮り慣れていない。思い出を写真に残そうとするタイプではないのだ。記憶に焼き付けておけばいいと言う、今時古風とも言えるし、周りにいたら面倒とも言えるタイプなのである。とはいえ、もちろん記念に写真を撮る人を否定したりはしないので、普段は世の中の流れに紛れていられるし、問題もない。しかし、急に写真を撮るとなると何だかんだ気をつけることがでてくる。光の加減とか、画角に他のものが写って生活感が出ないようにしたいとか。生活感が出るものは移動させればいいのだが、やり過ぎると嘘をついているようで気が引ける、という謎のこだわりもインスタの邪魔になっている。
初回は自分なりに上手く活けた花と昼食を並べた食卓にしてみたが、いい感じの写真を撮るだけで一苦労だった。次は、他の人はそうそう持っていないだろう水玉模様のやかんを中心にした写真を撮ったり、オーダーカーテンの写真を撮ったりしたが、夜だと影が入ってしまっていい感じに撮れなかったりもする。思ったよりも時間がかかってしまうのである。毎日投稿しようと5日間はがんばったが、その次の日にさぼってそこからずるずる投稿しない日が続いた。
もともと沙優は飽きっぽいので、ある程度予想された結果である。加えて、周りにほとんど言わずに始めたので、知り合いがいいねをくれることもない。一応、まりこさんには話したが、彼女はインスタをしていないので、閲覧したり、いいねをする戦力にはならないのである。沙優も最初からうまくいくと考えていたわけではない。ある程度は投稿していかないと閲覧数もフォロワーも増えないだろうとは予想していた。最初は無反応でもがんばるつもりだったが、本当に反応がゼロだったのである。ハッシュタグをつけた方がいいと聞きかじっていたので、それもつけてみたが結果は変わらなかった。……インスタ挫折である。早い。
沙優もインスタそのもので最初から利益を出そうとは思っていないし、とりあえずは趣味的に楽しんで続けようとは思っていた。コロナも長引いてきて家での暇も持て余しているし、ネット記事や小説投稿サイトを漫然と何時間も読むよりは生産的な楽しみができたらいいなと思っていたのである。しかし現実は厳しかった。インテリアはそもそも人気のカテゴリーで有名インスタグラマーがたくさんいる。沙優は差別化がはかれると思っていたが、彼女が続けていくためには一定の応援や結果が必要で、それを短期間で得るほど沙優のインテリアはインパクトがなかったのだった。こうして沙優は、ほとんど活動していないインスタアカウントを世の中にもう一つ作っただけで、インスタマイブームを終えた。




