22 一歩進んで二歩下がる?
一ヶ月後、沙優は頭を抱えていた。分割で株価が上がるはずとの目論見が外れたのである。株価は上がるどころか下がり、一時少しだけ戻したが、また下がっている。分割の日を迎えても上がる気配はなかった。証券口座のHighネットの株数は200から600に増えているが、合計した価値は横ばいどころか下がっている。どうやら失敗したらしかった。
その後もどんどん株価は下がっていき、損切りができない沙優もたまらず1283円で200株売った。残りは様子を見ることにしたが、さらにどんどん下がっていき、年末には残りの400株も売ってしまった。なんとなく、年を越す前にスッキリしたかったのだ。
今回はグダグダながらも最後に何とか損切りができた。数年前は、投入したお金から純粋な損が出たので損切りにかなりの抵抗感があったが、今回は株ですでに稼いでいたので、なくなる金額の多くは利益だった。利益がなくなるのは虎の子の貯金がなくなるのに比べたらまだ許せたのかもしれない。それに、一度稼ぐ経験をしているのでまた取り返せるかもしれないと思っていることもある。一応、成長していると言えなくもないのである。
結局沙優はHighネットの取引で100万円以上の損を出した。ちなみにA社の100株はまだ持っているが、そちらも15万以上の含み損が出ている。一時期出していた株の利益は全部吹っ飛んだ上で更に25万のマイナスになっているのが現状である。沙優は意気消沈していた。一時の盛り上がりは見る影もない。あれはビギナーズラックだったのかなと遠い目になるのだった。一応プラス材料があるとすれば、Gooodは買ってからほとんど含み損を出したことがなく、ここしばらくはずっと含み益を出し続けている。数ヶ月前より含み益は減っているがそれでも6万円はプラスである。100株しか持っていないJ商社も20パーセント近く上がっている。株数が少ないので利益は3万円にもなっていないが。PERで見つけた株の実力を感じる。
沙優は株の話をほとんど誰にもしていないのだが、何人かには少しだけ話をしている。ものすごく儲かっていた時期に母親に少し話をして様子をみたし、学生時代からの親友にも話をした。ちなみにバブル期に親戚が株で損したらしく、母は株への投資を疑問視していた。とは言え、儲かった時に話題に出したのでやめろとまでは言われていない。大金を投入するのはよしなさいと言われただけである。沙優の株取り引きの実態を知れば止めてくるだろうが沙優はそこまで詳しくは話していない。
もう一人、まりこさんにも話はしていた。まりこさんは地元の美味しい店の情報をよく知っているので、たまに一緒にご飯を食べにいくのだが、職場ではしづらい話はそういう時にしている。お金の話はデリケートだし難しいが、まりこさんは自分自身のお金の話もポロっとしてしまうタイプなので安心して話ができるのである。少々口が軽いところもあるが、話したらいけなさそうなことは他人に話していないようなので、ある程度信用もしている。今回のように株で損をした話もアドバイスをしたり叱ったりもせず、ただ笑いとばして話ができるので助かるのである。というか、まりこさんもだめだめなので叱るという発想もない。
そのまりこさんは最近も、ほとんど使っていないのに定期購入していたサプリメントをやめたり、通っていたはりをやめたりして少しずつ節約をしている。しかし、そう聞いてちょっと安心すると、今度はなんだかよく分からない健康食品をはじめたり、ピラティスの教室に通い始めたりもしているので、結局変わっていない。3歩進んで2歩下がるどころか、文字通り一進一退な感じである。そんなまりこさんとご飯に行くとお金を使わせることが気になるので、なるべく沙優が払うようにしているが焼石に水な気もする。他人の心配をしている場合じゃない沙優だが、まりこさんもたいがいなのであった。
この作品中の会社、人は全てフィクションです。株式投資は元本割れするリスクがある投資です。始める場合はリスク管理などの情報収集をしてからにしてください。




