21 株式分割にかける
5月の連休中、沙優はまた株をチェックしていた。ちなみに、この連休中はまりこさんの運転で連れだって、別の同僚が買った古民家に遊びにいってもいる。不便だが風光明媚なところにある家で、その同僚はその家にすっかり夢中である。彼女は業者に頼んで、生活に最低限必要なところから少しずつリフォームしているらしい。職場に来るのに片道50分はかかるようだが、それも気にならないという。都会で片道50分は普通だろうが、沙優の住んでいる市は田舎の方にあるので1時間程度かけて通勤する人は少数派なのだ。楽しそうな同僚をみて、こういうのもいいなと思った沙優である。このゴールデンウィークは沙優にしては充実していて、別の同僚グループとも近場にドライブに行っている。彼女の交友関係は少しずつ充実してきているのだ。
さて株価である。沙優はそのことをあまり考えたくなかった。というのもA社はあれからさらに下がって、その後一度戻したものの、また下がって3000円ほどになり沙優の購入価格を下回ってしまった。利益が出るうちにさっさと売ってしまったら良かったのだが、夢よ再びと上がるのを待ったのがいけなかった。A社についても売り時を逃してしまったようである。Highネットは少しだけ戻したが、それでも7000円ほどと、30万円以上の含み損が出ている。そしてやはり、沙優は損切りに踏ん切りがつかなかった。売れないまま塩漬けにするよりは、損が出ても売ってしまって儲かりそうな株に投資すべきと言う人も多いが、やはり出来ないのである。また上がるのではと思ってしまうのだ。損切りはできない株素人も多いと聞くので、できなくても仕方ないと自分を甘やかす沙優だった。ちなみに株価が下がっても損切りせずに上がるまで待つ投資家もいるようだ。株のやり方には色々あるのだ。
沙優はネット証券のマイページで株価チェックをした時には、条件に合う株を探せるスクリーニングの画面も出してPERの低い株をチェックするようにしていた。Iホールディングスがうまくいった経験から学んでいるのだ。そうすると今回、彼女でも名前を知っている総合商社のPERが低いのを見つけた。彼女は口座に残っているお金で買える分を計算して、400株このJ商社の株を買うことにした。
J商社の株も無事買え、さらにおよそ1週間後、沙優は証券会社からの通知で、Highネットが株式分割の予定を発表したことを知った。1株を3分割するらしい。彼女はA社の株式分割が発表されてから株価がどんどん上がって行ったことを強烈に覚えていた。これは損を取り返すチャンスに違いない。このチャンスはぜひものにしなくては。
この機会を最大限いかそうと彼女は頭を回転させた。現時点で結構損を出しているので、損を取り返すには新しく株を買って平均取得価格を下げた方がいいんじゃないだろうか。ナンピン買いと言って、購入した株の株価が下がったら更に買い増しして、平均取得価格を下げる方法があり、沙優の発想はまあそれと同じである。スイングトレードをしていた時にはナンピン買いもしていたので特に目新しい方法でもない。ただし、下がったと言ってもHighネットの株価は7000円を超えているので、このままでは十分な現金がない。沙優は早速、まだ入金していなかった今年度の投資分40万円を銀行口座から移した。それでも足りないので買ったばかりのJ商社の株を100株だけ残して売った。そうしてようやくお金を用意した彼女はHighネットを100株、7100円で買った。一ヶ月後の分割に期待である。これで損失を取り戻し、更に大きく儲けるのだ。一発逆転を狙って沙優は勝負に出た。
この作品中の会社、人は全てフィクションです。株式投資は元本割れするリスクがある投資です。始める場合はリスク管理などの情報収集をしてからにしてください。




