20 株は売り時が難しい
株の調子が悪い。年が明けてしばらくした2月末である。A社はあれから徐々に株価を下げて4000円をついに割った。夏にNISAで買っていたIT企業の株も11月ごろには20万近くの含み益が出ていたのにどんどん株価が下がってきている。Highネットの状況はさらに悪く、6600円ほどと、沙優の購入価格である10490円を大きく下回っている。Highネットだけで40万近い含み損である。こんなことなら上がったところで売ってしまえば良かったと思うが後の祭りだ。沙優は次こそテンバガーを目指そうと、A社とHighネットは株価が10倍になるまで持つつもりでいた。ある程度上がったところで売る選択をしなかったのだから、そこから下がるのは自然な成り行きとも言える。
株は売り時が難しいらしい。株価が上がって含み益が出ても、もっと上がるかも知れないと持ち続けると今度は下がってしまい、いいところで売れなかったりするからだ。沙優はこれまで10万円くらいの利益で目が眩んで売るというのを繰り返していたので、その時は問題はなかった。しかし、さらに儲けようと売るのを我慢してみたら、今度は10万も儲けられず損まで出している。いいところで売るのは難しいと実地で経験してしまった。そんな経験、できればせずに済ませたい。
唯一の明るいニュースはIホールディングスの調子がいいことである。500円以下で買った株が600円を悠に超えている。100株しか買わなかったのが惜しまれる。PERが5以下の会社を眺めていたら、知っている名前なんてほとんどない中にIホールディングスがあったので、大丈夫か心配で少ししか買わなかったのだ。いや、買えるだけの余力がなかったのもあるのだが、沙優はそのあたりの事情はうっすらとしか覚えていなかった。都合のいいように記憶が曲がっているともいう。
不祥事のせいで株価が下がったのかも知れないと思い、買う前に調べたがIホールディングスにそういう情報はなかったので買ったのだ。今、株価が上がってきているのが問題なかったことの証拠とも言える。ちなみに某電力会社もPERが低かったが、彼女でも簡単に想像できるような理由があるので手を出していない。
Iホールディングスの株価がかなり上がったとはいえ、100株しか買わなかったので今売っても利益は2万円にもならない。他の株で何度も10万円以上儲けた沙優は、Iホールディングスの株を買った時は資金余力がなかったことも都合よく忘れ、もっと買えば良かったと後悔しきりである。とは言え、今度は売り時を逃すわけにはいかないので、今より少し高い669円で売り注文を出した。3月の中旬に入ったころにIホールディングスはその価格で売れた。また夏にNISAで買ったIT企業の株価が少しだけ戻ったので、また株価が落ちては大変と10万円の利益を確保して売った。ちなみにこの企業の株をあと半年持っていたら更に50万円儲けられたので、沙優はまたしても売り時を見極められていない。売り時は難しいのである。
この作品中の会社、人は全てフィクションです。株式投資は元本割れするリスクがある投資です。始める場合はリスク管理などの情報収集をしてからにしてください。




