閑話 沙優の節約
これは沙優が働きはじめたころからの話。
沙優は新生活に希望を持っていた。おしゃれな部屋にしたいし、新しい服も買いたいし、節約もしたい。最後のだけ変な気もするが、これも本心である。実家では食事も作っていたが、大枠は母のやり方に従わなければならないので、家事に関する独自の節約方法を試す機会がなかったのである。実家では大根の葉っぱは使っていたが、自分は皮もきんぴらにして食べるぞ、などと意気込んでいる。そういう意気込みはありなのだろうか。
話題になっている週末のおかず作り置きも新生活でやりたかった事の一つである。始めてみると、沙優の性格にもあっている気がしている。平日は帰ってきたら疲れていてそこから夕食を作る気にはなれないし、お弁当を作るのも面倒なのだ。だから、作り置きのおかずから選んで夕食を食べ、ついでに次の日のお弁当も詰めてしまうと楽なのである。お弁当はそのまま冷蔵庫に保管し、翌日の朝にご飯だけ詰め、保冷剤と一緒に持っていき職場の冷蔵庫に入れておくのである。週も半ばを過ぎるとさすがにおかずが悪くならないか心配なので、卵焼きなどを新しく作るようにしているが。
とは言え、一年もすると作り置きをしなくなっていくのが沙優の現実だった。土日のうち半日分が作り置きでつぶれ、しかも台所にたった後は疲れてぐったりしてしまうのでもっと楽な方に流されたのだ。スーパーでお惣菜をかうとかお昼はコンビニで買うとか。なかなか理想の生活にはならないものである。
おかずをまとめて作って時間と材料を節約する以外にも、沙優は節約していた。例えば、歯磨き粉のチューブや調味料のチューブは使い切った後、必ず半分に切って中身をかき出して最後まで使うのである。これは実家で母親がやっていたので疑問にも思わずに受け継いでいるのだ。ちなみに、あるインターネットサイトを宣伝するテレビコマーシャルで、こんな風に頑張って節約しなくてもここを使えば安いホテルが探せてお得ですよ、のイメージとして歯磨き粉チューブを切って歯ブラシを突っ込む映像を見たことがある。沙優がこれを見たのは短期留学した時で、外国でもやる人いるんだーとびっくりした。
実家にいる時からやっている節約には、他にも靴下やタイツの穴を繕うというのがあり、これは沙優自身も自分の年代でやっている人がいるのか疑問に思っている。靴下はそこまで高いものでもないので買えばいいのだが、フィット感や分厚さや毛玉の出なさ具合などがちょうどいいものになかなか出会えないので、お気に入りの靴下は繕ってしまうのである。タイツは選択肢がもっとないので必ず繕っている。さすがに飲み会の時にはいて行かないように気をつけているが、たまにうっかりしてしまう時もある。
米袋やトイレットペーパーの袋をゴミ袋として再利用するというのもある。昔、きれいな女性アナウンサーが同じことをしているとチラッと言っていたのをテレビで見て以来、この行動には自信を持っている沙優である。なんだかんだ言って沙優は母親の節約志向を受け継いでいるのだ。少しはいい食材を使いたいので、母のようになんでも底値で買おうとはしていないし、他にも意識的に節約しないようにしている事柄はある。交際費はケチらないように気をつけているのだが、根本の思考からして違うので危ない時もある。実家は滅多に外食しない家だったので、外食の時に何か変な面を晒してしまわないように特に気をつけないといけない。
沙優は賞味期限切れのものも腐ってなければ平気で食べるし、出涸らしのお茶を飲んでいても全然平気だったりするが、その辺の感覚はまりこさんと似ている。他の友達と違って、そう言うところを隠さなくてもいいので、楽なのである。
このように節約志向が抜けない沙優だが、無駄遣いもしている。そもそも食材に限らず何かを買う時はある程度適正価格で買いたいと思っているし、就職してからは好きな洋服を揃えようととデパートで服や靴を定期的に買ってもいる。まあ、それだけ言えば締めるところは締めて使うところは使っているとも言えるし、沙優自身もそれを目指しているのだが、明らかに無駄なお金を使うこともあるのだ。服や靴は必ず試着してフィット感や似合うかどうかを確かめて買っているのに、家に帰って実際に使ってみるとなんか使いにくいかったりすることが何度もある。それこそメルカリで売るべきなもの達だった。食材を冷蔵庫で腐らせてしまうこともある。沙優の節約はなんだかんだ中途半端なのであった。




