第四十一話 覚醒せよ
薄暗い空の下で繰り広げられる、絶海の孤島での死闘は続いていた.... その様相は収まる気配を見せないどころか、むしろ劇的に激化し始めている..
しかしそれは当然のこと。この死闘は運命を決める戦い。地球、宇宙、そして二人の魔人の思いと誇り、全てはこの一戦で雌雄を決する。だからこそ簡単には決着はつかない、着くはずがない。勝利のため死力を尽くさねば、運命は摑み取れない....
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「ヴァ"ァ"ア"ア"ア"....」
魔双剣の力で暴走するライトは唸り声をあげ、真紅に染まったその目でシャドウを突き刺す。体からは黒いエネルギーが瘴気のように立ち、竜巻のような風が吹き荒れる。
「・・・・ラ....ライ..ト....??」
誰が見ても一目でヤバいと分かる、その姿を初めて見た星奈は本能的に震えていた。その場の状況に理解が追い付いていなかった。
豹変した存在がライトであることを確かめるかのように、星奈は小さく声をあげたがライトは全く反応しない。
「ライトッ!!!?」
今度は声を張り上げるも、聞こえているはずなのにライトは反応しない。憎悪に満ちたライトの心に、星奈の言葉は届かなかった..
「話しかけても無駄だ!! こうなった以上、コイツに声は届かない」
そう言ったのはライトと対峙するシャドウだった。
しかし、目線は決してライトから外さない。外せば最期。今、シャドウはライトに対して優位に立ってはいるが、あくまで薄氷の上から見下ろしているに過ぎない。油断など言語道断、常に全身全霊、神経を尖らせなければどうなるか、シャドウは知っている。
「ヴゥ"ッ......」
「......」
見つめ合う二人、一瞬が永遠に感じられるほどに緊張が高まるシャドウの頬から汗が零れ落ちた..
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-シュバンッッ-
「!! 来たか!!」
突如シャドウの眼前からライトは消えた。と同時にシャドウは身をかがめた。その頭上を、空気をも斬り裂かんばかりの速度で剣が掠めた。
-ゴッッ-
もう片方の剣が迫るより早く、シャドウはライトの腕を回し蹴って始動を封じる。そしてシャドウの目の前には攻撃を封じられ隙だらけの姿が映る。だが、シャドウは追撃はせず、冷静に自分の舞台での戦闘を選択、広がる影の中に飛び込んだ。
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「・・・・・・(よし......流石に影の中までは追ってこれないみたいだな....攻撃と速さ以外の要素は据え置きか..なら....)」
そう確認すると、自分だけの影の世界で、シャドウは口元を引きつらせた。
「ヴァ"ア"ア"ッッ!! オ"ォォオ"オ"」
一方で外ではライトが見境なく暴れまわっている。手当たり次第に地面を叩き砕いて、シャドウを狙うも剣がシャドウを捉えることはない。
「ライト....どうしちゃったの..」
友達が狂う、その光景に心を痛めていた星奈は薄っすら涙目となり、消え入りそうな声で呟いた。
「ギィヤァァア"ア"」
「ライト....」
だが、なおもライトは暴れまわる。まるで駄々をこねる子供のように.. 止まろうとはしない..
怪奇な光景に、星奈は言葉を失っていた。しかし、徐々にその口元は震えだしていた、そして・・
「....いい加減に......」
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「目ぇ覚まさんかぁぁあああ!!!!」
ライトの咆哮よりもずっと大きな声で、星奈は叫んだ。そのせいで顔も赤くなっていた。まるで感情が氾濫したかのようだ。
すると、ライトは振り上げた剣はだらりと下げ、振り返ると真紅の瞳で星奈を凝視しだし出した。
「・・・ヴッッ ぅぅっ....」
星奈を見つめていたライトは苦しみ出した。そしてまるで彼女の圧に押されたかのように、二歩、三歩とよろめきながら後退した。
そして膝をつき、肩で呼吸しながらもライトは再び星奈を見つめた。
「!!!! (もしかして元に..)」
自身を見つめるライトに、星奈がそう感じ出していた、その時だった。
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「気抜くな..」
ライトの背後からシャドウが飛び出し、そのまま矢を射った。
-ガギッッ-
しかし、その矢はライトが叩き落とす。だが突然の襲撃に、闘争本能が復活、再び荒れ狂うライトはシャドウに飛びかかった。
「愚か者め、かかったな!!」
その言葉と共に、シャドウの足下には一つのカプセルが落とされた。
-バリバリバリバリバリッッッッ-
そしてそれが輝くと、辺りには電光と雷鳴がこだました。
「グァッ....」
ライトはその衝撃で吹っ飛んだ。電撃を浴びた体からはパチパチと音を立てながら電粒が飛ぶ。
「こんな形で、あのクソ女の装備が役に立つとは分からないもんだ」
と、シャドウは呟いた。
「ヴォオオッッ!!」
しかし、すぐさまライトは跳ね起きるとまたも真正面からシャドウに襲いかかる。
-ヒラリッ-
だが、紙一重でシャドウはかわす。
-ゴシュッ-
そして素早くカウンター、ローリングソバットでライトを吹っ飛ばした。
「もうこっから、お前の番はない!!」
その言葉を言うより早く、風を切り回転する矢を、まだ身を起こし切らないライトに放った。一気に押し切り、短期決着をつけにかかったのだ。
が、その一の矢は弾かれる。しかしそれを読んで走り寄っていたシャドウはライトの顎を蹴り上げた。そして地面を転がるライト..
「喰らうがいい、レインアロー!!」
空中に射ったエネルギーは炸裂して、雨のように降り注ぐ。
-バチュチュチュチュッッッ!!-
仰向けのライトはかわせない。剣を振るも矢はライトの体に無数の傷を作り、血飛沫が散る。
そうしている間にシャドウは影の中にまた潜っていた。ライトは大げさに首を振るも、その姿はやはり見えない。
-ドシュッ-
「!!!!」
不意に矢がライトの背中に刺さる。しかし、振り向けど背後には何もいない。
-ドッ ドッ-
今度は背中に二本、これで合わせて三本の矢が突き刺さるが、振り向いても誰もいない。それどころか..
-ドッ バチュ ズズッッ-
振り返る度にその背後から矢が刺さる。気づけば十数本にも及ぶ矢が後部に刺さっている。
「ガァァア"ア"ア"ッッ」
剣を振り上げた。辺り一帯ごと吹っ飛ばそうとしたのだ。
-ズトッッ-
が、その腕にも矢が突き刺さったために、剣を振り下ろす手が止まった。
だがその刹那、ライトはチラリと横目をやると、そこにはシャドウの姿があった。
当然これを逃せるはずがない。ライトはワープでその背後に回った。
-ドッッッ-
「..単調過ぎる......こんなの、ボクじゃなくても読める.. そうさせたのはボクだがな..」
「グゥ"ゥ"....」
手痛い一撃をもらったライトは、本能的に立ちすくんだ。だが決して引かない。引けるわけがない、ライトの意思がそれを望んでいないから..
だが、妄執に取り憑かれたライトはシャドウの格好の的でしかなかった。もはや戦闘というよりは、シャドウによる狩りだ。
「ギィヤ"ァ"ァ"ァ"」
-ドドドトッッッッ-
「アゥァァア"ア"ア"」
-ズドズドズドッッッ-
「もうやめて.. お願いだから..お願いだからもうやめて..」
剣山のようになっていくライトに見るに耐えかねた星奈が懇願した。
「イ・ヤ・だ.... ハッ」
-ドッッッ-
「グ.....ア"..ア"ァ"......ァ"」
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ライトはその場に倒れ込んだ。背中には数え切れないほどの矢が突き刺さり、何本かは突き抜けている。
「そんな....ライトッ!! 起きて!! し....死んじゃヤダよ!!」
震えた声で星奈が叫ぶ。だが、ライトは動かない。
「残念だったな、コイツはもう死んだッ!! フッ..フハハハハハハ....ハァァアッハッハッハァァ..」
見せつけるようにシャドウはライトを足蹴りするも、ライトはうつ伏せのままピクリとも動かない。
「嘘だ....こんなの信じない.. ライトが....ライトが負けるわけないッ!!」
「哀れだなぁお前も、現実を見ろよ..」
シャドウは動かないライトの頭を思い切りよく踏みつけるも、やはり反応はなかった。塵一つ動くことはない..
それでもなお、目の前の出来事を現実のものとは星奈は思わなかった。
「ライト起きて、起きてよ!! 死んでる暇なんてないでしょ、宇宙を平和にしたいんじゃなかったの!? また約束を破るの!!!?」
「・・・・・・」
「信じてるから、絶対に.. だからお願い、もう一度..もう一度だけ立ち上がって、ライト....今までみたいにさ.. お願いだから..」
それが星奈の思いだった。
「フン、思いでなんでも解決できると思うな。この世界を支配しているのは.......力だ。だからコイツは死んだ、弱いから。そしてお前も、今死ぬ。」
苛つきながら、シャドウが冷たく言い放つ。そして、ライトを倒した今、星奈の人質として役割は終わった。つまり、ただの邪魔者に成り下がったのだ..
そしてシャドウは目一杯、弓を引いた。
「・・あなたのこと、死んでも許さない」
目を尖らせ、星奈は言った。
「....よく..そう言われるよ....」
シャドウは弦から手を離した。矢が勢いよく、真っ直ぐに飛んで行った....
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「な......バカな!!!? これは....どう言うことだ!!!?」
シャドウは驚愕の声をあげ、そして目を見開いた。
「ありえない....それに....」
矢は星奈に刺さらなかったのだ。なぜなら....
「ありがとう....お前の思いが、オレの心に命の炎を灯してくれた..」
間一髪のところで、ライトが守ったのだ。そこには銀色の刀身が、確かに光り輝いていた。
「なぜだ!!!? お前に戦う力は....いや、立ち上がる力すらなかったはずだ!!!! なのにどうして..」
早口でシャドウはまくし立てた。
「思いは....力だ.. 彼女の思いが、オレの立ち上がる力になってくれたんだ.. それに、やっと気づけた..自分の本当の思いに」
そう答え、ライトは星奈を見やった。送ったその目は優しい、さっきまでの狂気と憎悪に満ちた目は、そこには影も形も、微塵も存在しなかった。
「オレ、きっと宇宙とか、平和なんかはどうだっていいんだ.. オレはただ.....大切な人が無事ならそれでいい。いつも隣にいてくれる人が、笑っていられればそれだけでいいんだ..
だから......オレは星奈を守ってみせる、絶対に。大切な人を、もうこれ以上お前たちに傷つけさせはしない!!」




