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宇宙をかけた戦士の戦い  作者: イシハラブルー
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第四十二話 君を守るために




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「・・ふざけるな.. この土壇場でッ、パンドラの力を制御したと言うのかッ!!!?」


 死の淵から....絶望の淵から再び立ち上がったライトにシャドウは顔を歪ませた。歯を噛み締め、握った弓は震えきっていた。

 それほどまでにこの事態は彼にとって、非常に不愉快だった。彼はライトに立ち上がって欲しくなかったのだ..

 一方で、ライトに曇りはなかった。今まで無いぐらいに、その心は静まっていた。そして、口を開く。


「制御したんじゃない....応えてくれたんだ、パンドラが.. オレの、大切な人を守りたいって、願いに!!」


 そう叫んだライトは最強剣、〈魔双剣パンドラ〉を手に、星奈を守るためシャドウの前に立ち塞がる。大切な人を守るために!!

 そこにあるのは、先ほどまでとは違う穏やかで、汚れのない、決意の表れた顔、それはまさに最強剣を扱うにふさわしいものだった。

 ライトはついに超えたのだ。力を渇望し、憎悪と殺意の渦に飲み込まれていた自分自身を。全ては側で支えてくれた星奈を守るため、ただそれだけを果たすために!!



「..戻ってきたね」


 星奈は言った。まるで母親のような、優しい笑みを浮かべて。


「あぁ、見ててくれ星奈!! 絶対ッ..絶対勝つから!!」


 屈託ない笑顔でライトは答えると、その表情を戦うにふさわしいものに変え、そして双剣の剣先をシャドウに向けた。


「..さぁ、もう暗いのはいいだろ。辛気臭いのは、好きじゃない!!」


 ライトは剣を振った。するとどうだろうか、今まで島を覆っていた分厚い暗雲は真っ二つに斬り裂かれ、切れ間からは陽の光が溢れ出し、それがライトと、そしてシャドウを明るく照らしあげた。

 パンドラの真の力を前に、シャドウは眩しい光の中にも関わらず目を見開き、そしてか細い声で一言呟いた。


「なぜだ....なんでお前ばかり....」


「?? なんか言ったか??」


「・・・・フン、今度こそ..息の根を止めてやるッ!!」


「そうは..いくか!!」


 再び始まった決戦..二人の最終決戦の幕が切り落とされたのだ。その戦局は意外にも未だ拮抗していた。


「ハァッ!! デェリャッ、ハッッ!!」


「..ッッ、クッ......!!!!」


 ただ明らかにライトが優位だ!! 魔双剣による苛烈な攻撃で、シャドウをほぼ一方的に攻め立てる。


「・・・・(なんだ..)」


 だが、ライトは心の中で首を傾げていた。元々のスペック差に加え、魔双剣パンドラ、その真の力も相まって二人の間には本来埋めがたい差が生じている....はずだった..


「・・・・(次は上段突き..)」


-ビュオッッ-


「ビンゴッッ!!」


 が、シャドウは持ち前の洞察力、研究、そして経験が合わさった擬似的な未来視をフルに用いて、劣勢ながらもギリギリのところで均衡を保っていた。


「・・・・(ダメだ、当たらない!!!? 完全にオレの動きが読まれてる!?)」


「・・・・(速過ぎる.. ダメだ、見てからじゃとても間に合わない.. クソ..生きた心地がしないッ!!)」


 とはいえ、優位なのはあくまでもライト、それは覆しようのないまぎれもない事実。互角ではあったが、決して五分五分ではない。

 しかし、普通ならば魔双剣を持つだけで、それだけで無条件で勝負は決まってしまうのだ..



-ビュンビュンッ ガッッ-


-パシュパシュパシュ-


-ギギィン ズパスッッッ-



 つまり・・・・



-ヒュオヒュオッ-


-ガギギギィッンッッ-


「・・・・くっ!!」


「・・・・チッ!!」


 この状況は異常と言える!!


-ガッ  ザザザッッ-


「ウッ..」


「痛ッ..」


 ライトとシャドウは共に互いの蹴りをわき腹に喰らい、後退した。


「・・・・(昔から思ってたけど..やっぱ何だかんだ言ってシャドウは強い..)」


 痛む脇腹を抑えながらライトは心の中で呟いた。


「....スパイラル..アローッッ!!」


 シャドウが矢を放つ!!


-ガキィィン......ドォム-


 それを弾くライト!!


「・・・・(それに..)」


「まだだ!! レイン..アローッ」


 すかさずシャドウの連撃!!


「・・・・(すごい気迫だ..)」


-チチチチチチチチチチッッッッ-


 一面に降り注ぐ矢の雨を、ライトは剣でガードした。その矢は全て弾かれた。が、これはシャドウの布石だった..


「・・・・かかったな、ライト!!」


 シャドウの目的はライトの動きをほんの一瞬止めること、大技を放つまでの時間を稼ぐことだった。

 範囲攻撃に対しては、瞬間移動でも、高速移動でもかわしきれない。だからその場でガードする選択をライトが取るのは間違ってはいない。ただ、むしろこっちを喰らっておいたほうがマシであった..


「グリム..ジャッジッ!!!!」


-ゴォォッッッッ-


 巨大な矢が、膨大なエネルギーを内包する矢がライトに迫り来る!!


「!! 雷光剣壁(らいこうけんぺき)!!」


 それをライトは雷(いかずち)を帯びた双剣でガードを試みた。


-ガ..ガガガガ......バヂヂヂヂヂッッッッ-


 鳥のさえずりに似たような音が一帯に轟く。


-ザ....ザザ..ザザザッッ-


「グゥッ....なんて力だ」


 矢は地面を踏みしめるライトを、ゆっくりとだが、確実に、押し切ろうとしていた。


「いけぇぇぇぇぇッッ!!!!」


-バヂィィィィィィィンンッッッッ-


 シャドウの叫び声に呼応するかのように、矢は大爆発。そしてライトは爆風によって吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。


「ヴァッ......!! クッ..パンドラを押し切るなんて、なんて力なんだ..」


「・・お前、さっき言ったよな..思いは力だって..」


 言いながら、シャドウはまた同じ矢を放とうと構えた。巨大なエネルギーが矢の形を形成する。


「だとしたら..これはボクの思いの力だ..」


-ゴォォォッッッッッッ-


 そして躊躇なく射った。


「!! 威力が増してる!!!?」


「さぁ..終止符だぁぁぁああッ!!」


 矢は、さながら鮫が海面を泳ぐように、地面を抉りながら突き進む。

 喰らえばひとたまりもないことは、その場にいた誰もが分かっていた。


「・・・・(う、避け..!! ダメだ..後ろに星奈が!!)」


-ガガガガガガッッッッ-


 ライトは、再び双剣で矢を受け止めにかかった。


「ぐぅぅっっ....」


 だが、先ほどの再現のようにライトは押されている。


「・・・・(ダメだ..押し切られッ..)」


 焦燥の顔を浮かべるライト。シャドウの方はもう勝ち誇った顔だ。

 だが、その時だった!!!!



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・





「・・・・・・・・けるな.. ん..れ!!」


「..!! (この声は..)」


 轟音の中に混じる声。


「負けるなぁあ!! 頑張れ、ライト!!」


 星奈がライトに送った声援はその耳に、その心に、確かに届いた!!


「・・・・・・・・フフッ..(困ったなぁ。......そんなこと言われたら..)」



・


・


・


・


・




「負ける気がしねぇッ!!!!!!」



-ガガガガガッッ....-



「う..うぉおおおおおおッッ!!!!」


「!! またパワーが!! ..なぜだ、なぜなんだ!!」


 雄叫びをあげるライトの体は、少し、少しずつと、前に進んでいた。シャドウの言う通り、ライトはパワーアップしていた。

 そして....


「はぁあッッッ!!」


-ズギュゥゥゥゥンッッッ・・・・-


・

・

・

・


-ドォオオオオオッッ-


 矢は軌道を変えられ、上空に打ち上がった。そしてそれは凄まじい衝撃波と共に、花火のように散った。決して美しくはないが..その場にいた三人は目を奪われていた..


「・・・・くっ..」


 我に帰ったシャドウは三度、弓を構えた。だが、それと同時にライトも双剣を躍らせていた。


「ソード・ア・ロット」


 右手で持つ剣を、円月を描くようにゆっくりと振ると、残像のように無数の剣が円上に生み出された。


「結合(ユニオン)!!」


 左手の剣を円の中心に突き出すと、生み出された無数の剣が集約。そして、無数の剣は結合して巨大な一つ剣となった..


「....」


「....」


「「・・・・」」


 ライトとシャドウ、浮かべる顔は強張っている。お互いに..大技の準備は整った。そして、二人は共に一つ、息をついた..



「グリムジャッジ!!」


「ソード・オーバーロード!!」


-ガッッッ..バチィィィィンッッ-


 ぶつかり合う大技!! だが、鍔迫り合いにはならなかった。ぶつかり合った瞬間........矢が砕かれた!!


-ズッッガァァアアアンッッッ!!-


 それに留まらず、振り下ろされた剣は大地までも斬り裂き、舞い散る岩盤は砂塵となって辺りを包み込んだ。


「・・・・(どこに行った!!)」


 一寸先も見えない砂塵の中で、シャドウは沈黙のままにライトの姿を見出そうとしていた。


「....!!」


 だが、突如得体の知れない悪寒がシャドウの背中に走った。だからシャドウは確信の下に振り向いた。必ずライトが背後から来ると..


-パンッッ-


 だが、振り返るもそこにライトはいなかった。しかしその瞬間から、シャドウは自身の脇腹に焼けるような痛みを覚えていた。

 そして、そこに手を触れた時ようやく気づいた。既に決着が着いてしまったことに..


「・・スラッシュ・ラッシュ..」



・


・


・



 ..シャドウが地面に崩れ落ちた、その背後で、ライトは片膝を立てていた。


「・・・・・・・・やった..」


 その光景を見ていた星奈は呟いた。


「・・・・」


 ライトは顔を上げ、立ち上がると、星奈に繋がれている鎖を斬り落とした。

 そうして一日ぶりに解放された星奈は、そのままライトに寄りかかった。


「お疲れ..星奈」


「うん..疲れた。ライトもお疲れ様。 ........勝ったんだね..」


「....」


「?? ライト??」


 ライトが表情を曇らせたのを星奈が見逃すはずがなかった。そしてその原因は、すぐに知られることとなった。


・


・


・



「ハ....ハァ..ハァ....ふ..踏み込みが..甘いぞライト.. これじゃあ..ち..致命傷にはならないぜ....」


 ライトと星奈が向き合う、その向こうでシャドウが立ち上がった。大傷を負い、息も絶え絶えになりながらも、致命には至っていなかったのだ。


「どうした、早くトドメを..刺せよ....」


「・・・・」


 だが、すでにライトは武器を納めていた。もうこれ以上戦う意思はなかった。


「なんだ、刺さないのか?? まさか今更..ボクに情でも移ったのか?? お前の大切な奴らと星を、粉々に砕いたボクに情が移ったのか??」


「・・・・」


「なんなんだよその目は.. ボクも随分舐められたもんだなぁ!! ....なんか言えよ、オイ!! ほんと....なんなんだよ今更!!」


 シャドウの口調は強くなる。しかしそれに反比例するように傷を負った体は衰弱していき、とうとう立つことすらままならなくなった..

 地面に手をつけたシャドウは唇を噛み締めて、ライトと星奈を見上げていた。


「クソが!! ......勝てるわけないだろ....二対一じゃ..」


 それだけ言い残すと、シャドウは地面に落ちた氷のように溶け、消えてしまった。

 すると辺りはさっきまでの激闘から一変して、静寂に包まれ出した。二人も何も言わなかったが、しばらく経つと星奈は尋ねた。


「....行っちゃった??」


「あぁ..」


 口数少なくライトは答えた。その態度に今の心境がよく表れていた。


「戦友(ともだち)....だったんだよね..」


「....なんでだろうな.. なんで最後の最後で、昔を思い出しちまったんだろう....」


「....きっと、全部が全部..嫌いじゃなかったんだよ、お互いに..」


 シャドウが消えた所を見つめながら、星奈は言った。


「......かもな、俺にとって一番大切な人が星奈、お前だとしたら.. アイツは一番の理解者だから.. 多分、逆もそうだろう..」


「......しょうがないね..」


「いや....俺の甘さだ..」


 ため息混じりに、諦念の表情を浮かべてライトは言った。シャドウとの関係は切っても切れない、きっとこれからも連綿と続いていくのだろう.. そんな風に物思いにふけっていた。そんな時、ライトは背中をバシッと叩かれた。ハッとしたライトの前には、にこやかに笑う星奈が立っていた。


「いやぁ、それにしてもカッコよかったよ、ライトの啖呵」


「え....そうか??」


 何て言ったか、ライトは思い出そうとした。が、思い出したその言葉を頭の中で反芻させる度に、顔が赤く、熱くなっていくのを抑えられなかった。


「アレ、もう一回言ってよ」


「・・・・ン〜、ナンノコトカナ〜」


「ほらほら、『オレは星奈を守ってみせる』の件(くだり)」


「ソンナコト、イッタッケ??」


「カタコトじゃん!! 絶対覚えてるでしょ!! もう一回聞きたいなぁ..改めて」


「やだ。あんなの恥ずかしくて素面で言えるか」


「えぇ〜..ケチ!!」


「..?? ケチって何??」


「・・・・はぁ......まぁいいや、また今度言ってもらうとしよう..」


「多分もう言わない」


「・・・・」


 呆れ果てた星奈はそれ以上はソレに関する追及はやめた。


「じゃ、帰ろっか」


「..そうだな、それがいい」


 これ幸いとばかりにライトは乗っかった。少しだけ星奈は眉をひそめたが、あとは機嫌よく、足取りも軽く、先陣を切って歩いていた。


「なぁ、星奈..」


「ん?? なぁに」


 ライトの呼び声に、星奈は足を止めた。呼びかけた当人は目線をしかりに動かした後、一つ咳払いした。


「・・・・・・・・・・ただいま..」


 それだけ言った。すると星奈はライトに歩み寄り、その手を取った。


「・・・・おかえり..」


 そう言った後、再び歩き出した。隣同士で、新たな一歩を踏み出したのだ。





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