エレナside3 騎士養成学園での1日(午後)
キルス隊長をキルス団長にしました。
「...............始め!!」
先生の合図でダルクがエレナに向かって走り出した。
「行くぜ【身体強化】」
ダルクの身体が一瞬だけ光った。
身体強化は気力で自身の身体能力を向上させるスキルで習得は難しいが、誰でも練習次第では習得可能なスキルだ。
しかし、身体強化は自身の気力量に比例して効力を変わるので、同じ身体強化でも違いが生じる。ダルクの気力量はSクラスではエレナの次に凄くかなりの量だ。それだけに、このスキルはダルクと相性が良いのだ。
両者の木刀がぶつかり合い激しい音が響く。
(やっぱり学生にしては強いわね...でも....)
エレナからしてみればダルクは確かに強いが、それは学生にしては...なのだ。
アトランティスに所属し数え切れないほどの戦いをしてきたエレナからすれば、ダルクはやはり劣る。そして、エレナに次ぐ気力量でも1位と2位の差は2位と最下位の生徒のよりもある。
ダルクは一生懸命に攻めるがやはり攻撃はエレナに届かない。
(クソ...何で当たらないんだ)
攻め続けても攻撃が当たらない事に憤りを感じている。
「ハァ、ハァ、ハァ、流石だな」
「これで終わり?。じゃあ今度はこっちの番ね」
そう言うと、ここで始めてエレナが攻めた。
エレナはこの模擬戦は出来ればスキルや魔法を使用したく無いと思っている。
(騎士団に入団するつもりはないし、注目もされたくないからね。悪く思わないでねダルク)
本気で挑んで来ているダルクに全力で応えたいが騎士団の手前、本気が出しにくいのだ。
それでも、エレナが攻め始めると同時に攻守が交代した。
当然だがエレナは【身体強化】を使用していない。
それを見ていたカーベルト副団長は...
「おいキルス、彼女は凄いな。常に相手の動きを予測し尚且つ周囲の警戒もしている」
「あぁ、確かに彼女は逸材だ。スキルを使用せずにここまで出来るなんてな。相手の子が弱いわけではない。むしろクラスの中では上位だろう。ただ純粋に彼女が強い」
「そうだな。もしかするとスキルを使用すれば、うちの奴らにも一本取れるんじゃないか?」
「そうかもな」
エレナの予想以上の強さを見て嬉しそうに話すカーベルトに対し、どこか浮かない表情なキルス。
「ん?どうしたキルス」
キルスの表情を見てカーベルトが話しかけた。
「カーベルト、スキルをいつでも発動できるようにしておけ」
「スキルをか?」
「あぁ、お前の眼が必要だ。俺の合図で発動してくれ」
「わかった」
* * * *
「ハァハァ...ちくしょう...」
防戦一方のダルクは汗びっしょりで息が荒れている。服は土ど汗で汚れている。
「もういいでしょ。降参して」
「絶対に嫌だ...」
息を少し整えたダルクがエレナにだけ聞こえる声で言った。
「分かったわ。もう『降参して』なんて言わないわ」
「なぁ、エレナ」
「何かしら?」
「お前、今日はスキルを使ってないよな...」
「そうだけど。だから何?」
「今から使ってくれねぇか。どうせ負けるなら、スキルを使ったお前に負けたい」
「ダルク...戦闘中に負ける事なんて考えちゃダメよ」
「けっ、そうだな。じゃあ、言い直すわ」
そう言うと、またダルクは真剣な表情になって...
「本気のお前と戦いたい。俺が憧れているお前の本気と」
(憧れてるか....)
それは昔アトラが言ってくれたセリフでもある。
『エレナが物語の勇者や英雄譚に憧れるように僕もエレナに憧れている』
あの時、アトラが言ってくれた大切な言葉。忘れたことのない言葉。
(......そんなセリフ言われたら)
「いいわよ、スキルを使ってあげる。今まで見せたことのないスキルを発動するから、集中力を切らさないでね」
すると、エレナは木刀に魔力を纏わせ、その木刀で地面を叩き土煙を起こした。昔、アトラが使った戦術だ。
(これで少しだけ騎士団には私が見えないはず)
エレナはスキルを使用すると決めた。出来るだけ騎士団には実力を隠しておきたい為、土煙を起こしたのだ。
エレナは【縮地】でダルクの前に現れた。
「うわっ!!」
エレナが急に目の前に現れたため驚きの声を上げるダルク。
「言ったでしょ。集中力を切らさないでねって...」
それだけ言うとエレナは【縮地】を使いダルクの背後に回りダルクに一撃を入れ気絶させた。
ダルクを気絶させたあたりから風が吹き土煙が徐々になくなっていく。
Sクラスの生徒達はいつの間にか倒されているダルクを見て驚く...
「流石です。エレナ様」
「いつの間にダルクを倒しちゃったの?」
「知らないわよ」
「やっぱりエレナさんは凄いな」
「ケイト、エレナ様よエレナ様」
* * * *
時間は少し遡り今はエレナが土煙を起こした瞬間である。
「カーベルト..今だ」
キルスがカーベルトにスキルを使うように指示する。
カーベルトのスキルは【気力眼】。対象がスキルを使った際にそのスキルと相手の気力量が大まかに分かるという、超レアスキルだ。ただし、1日3回までしか使うことが出来ない。
「どうだ...カーベルト...」
キルスは土煙の中でエレナがスキルを使用したと予測しカーベルトにスキルを使うように指示を出したのだ。
「.......」
「おい、あの子はスキルを使ってないのか?」
「.......」
「ハァ...こりゃ使ってないんだな」
「.......」
「残念だが仕方ないな。あの子たちが最後のペアらしいから、適当に挨拶して帰ろうぜ」
「.......キルス」
「どうした?」
「・・・」
「ん?なんだって?」
よくよく見るとカーベルの手は握りしめられおり、その手から汗をかいている。
その様子を見ているとようやくカーベルトが少し落ち着いたのか、キルスに話しかけた。
「なぁキルス...あの子は何者なんだ?」
「いきなり、どうした?」
「さっきの土煙の最中であの子は確かにスキルを発動した」
「なに..そうなにか?だったら教えてくれよ。あの子のスキルと気力量を。それ次第では、今からスカウトしに行かなくちゃならないからな」
(スキルや魔法を使わずにあれだけ動けるなんてな。数年前にあのガインが弟子をとったきいたし、俺も弟子が欲しいと思っていたんだよなぁ...あの子ならガインの弟子も超えることが可能だと思うしな。まぁ、後は気力量とスキル次第だけどな)
キルスはエレナの予想以上の凄さに嬉しそうだ。
「で、どうなんだ。あの子のスキルと気力量は」
さっさと教えれと言わんばかりに答えを求めるキルス。
しかし....
「...分からなかった」
「どういう事だ...」
「彼女は確かにスキルを発動させた。それは分かった。でも、俺の【気力眼】は何も示さなかった」
「そんな事ってあるのか」
「1番可能性が高いのは彼女の何らかのスキルか魔法が失敗した可能性だ」
「なるほどな」
「2番目が、彼女は何らかの方法で俺のスキルを弾いた可能性」
「確かに、それもありえるかもしれなが...お前のスキルに合わせて弾くなんて考えにくいな」
「最後に1番低い可能性が、気力量が俺より多い場合だ」
【気力眼】は自身より多い気力の持ち主には効果が上手く発揮されないのだ。
「それは、ないだろう。流石にお前よりって事はないな。もしそうなら、俺クラスだぞ」
「あぁ、だから1番可能性が低いと思っている。だが、もしそうなら何者なんだ...あの子は」
* * * *
「終了!!」
先生がダルクの気絶を確認して模擬戦終了の合図をした。
全てのペアの模擬戦が終わり何名かは気絶し保健室に運ばれていった。
「よし、今日の模擬戦は終了だ。最後にカルスナ近衛騎士団様から一言もらう。心して聞くように」
先生が話終わるとキルスが生徒たちの前に来た。
「やぁこんにちは。俺がこのカルスナ近衛騎士団の団長のキルス=フォルトナンドです。みんなの模擬戦を見せてもらったよ。是非これからも頑張ってくれ。あぁそれと...」
そういってキルスはエレナの方を見た。
「エレナ君だったかな。君の戦いっぷりには驚かされたよ。よかったら俺の弟子にならないか?」
その発言にクラス全員が騒然となる。
だがエレナは..
「ありがとうございます。ですが私には既に師匠がおりますのでお断りさせていただきます」
「ほぉ..その師匠の名前をお聞きしても?」
「はい、カイナス師匠です」
もちろん嘘だ。エレナの師匠は剣聖ガインかギルドの仲間たちだ。カイナスなんて適当に今思いついた名前だ。
「そうか、聞いた事のない名前だな」
(そうでしょうね。だって私も聞いた事がないし)
「まぁ、師匠がいるなら仕方ない。でも、気が変わったらいつでも城に来ると言い」
そう言ってキルスは手紙をエレナに渡す。
「これを見せれば門番が俺の元に案内してくれるはずだ」
「ありがとうございます。では、気がむきましたら」
そう言ってエレナは手紙を受け取った。
「では、俺達は行くよ。今日はみんなありがとう」
そう言って騎士団は去って行った。
「やっぱりエレナ様は凄いです。キルス団長自らスカウトなんて」
「おおげさよ。エリーも模擬戦は良い戦いだったじゃない」
「ありがとうございます。ですが、私は悔しいですがダルクには10回やって4回勝てるかどうかでしょう。やはり、エレナ様には及びません」
こうしてエレナは今日の授業を終えた。
閑話はどうでしたか?
よかったのなら、いつかまた投稿したいと思います。
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