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心模様は——  作者: JACK


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4/6

雨固まり雪となる。

俺はいつもの場所に座っていた。誰もいない。このままここにいたら俺は風邪をひいてしまうだろう。

雨はまだ降っていた。

傘を持ってくればよかった。今さらそんなことを考えても仕方がない。俺は立ち上がらなかった。

「アキ!なんでいるの……?」

俺の前に彼女が現れた。

「……そっちこそ」

「いや、なんかアキがいる気がして……」

「俺はここでずっと誰かを待ってた。」

「え?それ私以外いなくない?」

「うん。いない」

「何よ急に……どうしたの?」

「……好きな人ってカズヤ?」

彼女は驚いた表情をみせた。その後、少し顔を赤くした。前のとは違う。初恋の何かを醸し出していた。

「……うん。やっぱアキに隠し事はできないか……。」

やっぱり、そうだ。[彼]の話を聞いたときから無意識のうちにカズヤの姿が浮かんでいた。これが第六感というのだろうか……。なんて迷惑な感覚なんだろうか。

「やっぱり、カズヤなんだな」

「うん。……そんなに分かりやすかった?」

「まぁ、昔から一緒にいるからな」

違う。そんなんじゃない。俺は君が好きだから。誰よりも君を見ているから。これを言ったらどうなるだろう。困るだろうな。そのあと、優しく振られるんだろうな。

「そっか……」

彼女は少しだけ俯いたあと、また顔を上げた。

「ねぇ、アキ。私、どうしたらいいと思う?」

「……どうしたらって?」

「カズヤと、もっと仲良くなりたいんだけど……どうしたらいいのかなって」

彼女は照れくさそうに笑った。

その顔を見て、胸の奥が嫌な音を立てた気がした。

どうしたらいいか。そんなの、俺に聞かないでくれ。

お前が誰を好きなのか、俺は知っている。お前がそいつのどこを好きなのかだって、嫌になるほど聞いた。

それでも、俺はお前の隣にいる。なにか大切なものが折れた。俺の信念という名の大黒柱が、チョークが折れるときのような乾いた音で、ポキっと。

「……別に、今のままでいいんじゃないか」

「え?」

「カズヤって、誰にでも同じように接するんだろ?お前だけ特別ってわけじゃないんじゃないか」

この言葉は言ってはいけない言葉。知ってる。知った上で言った。でも、それは自発的なものだった。矛盾していることは百も承知だけど、でも、でも——。

彼女の好きなところを否定したいわけじゃない。カズヤが悪い奴だと言いたいわけでもない。

ただ、そうであってほしかった。

彼女が好きになった相手が、俺より特別な人間じゃなければいいと思ってしまった。

「……アキ?」

「……悪い」

「……ううん。たしかに私一人で盛り上がってバカみたいだよね。私もう行くね。」

彼女はそう言って立ち上がった。

「待っ……」

引き止めようとした声は、雨音に消えた。

彼女は振り返らなかった。

俺は、何もできなかった。自分の周りのもの全てが凍りついた。彼女との関係も、カズヤへの罪悪感も何もかもが俺に重くのしかかる。

俺はいつもの場所に一人。忘れていた。俺が願っていたのは俺と彼女の明るい未来なんじゃない。彼女がただただ笑っている。そんな世界だ。なんで傷つけたんだろうか。彼女の恋の話を聞いていた。少しばかりは自分のことかな、と勘違いしていた。

俺は、背中を押すべきだった。たとえ実らないとしても。そうすることが、彼女のためだったはずなのに……。彼女の幸せを邪魔してしまう俺はなんだ?もう完全に無くなった。俺が彼女の隣にいる理由。俺が彼女といる理由。

降り続く雨は雪のように冷たかった。でも、どこが優しく温かい気もした。

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