後に雨。
「ねぇアキ、今日はどこに行く?」
駅前で俺は誰かと話しているらしい。
「うーん……特にはないかな」
「えぇー!私とのデート楽しみじゃないってこと?」
「違うよ。顔見てるだけで楽しめるから」
俺はガラじゃないことを言っている。
「……、そんな堂々と言わないでよ……。恥ずいじゃん」
そう言って顔を赤らめる。それはどこか見覚えのある顔だった。
「まぁ、とりあえずそこらへんブラブラしよっか」
「そうだね」
そう言って俺と誰かは手を繋ぐ。恋人繋ぎだ。カップルなのだろうか。
手を繋いだ二人は俺から離れていく。俺は手を伸ばす。でも、届かない。少しづつ遠ざかっていく。
待って。頼むから待ってくれ。一度だけ振り向いてくれ
待って待って待って、お願いだから待ってくれ……
そこで目が覚めた。
「……何やってんだよ俺は。夢の中くらいしっかりしてくれよ……」
あの赤くなった顔、昨日見たばっかりの彼女の顔。なんで分からなかったのかも分からない。でも——
夢の中の[アキ]って誰なんだよ……。教えてほしい。でも、知りたくない。一生知らないでいたい。何も起きなくていい、叶わなくていいから今の距離を壊したくない。……俺はまた、自分に嘘をついた。
でも、寝不足のせいか昨日と違いその後も眠ることができた。
ベッドから出るといつもの日常が始まる。でも、今日は雨。いつもの太陽が急かしてこないぶんいい日になると思う。
雨の日の通学路は一人だ。ユキヤは電車を使うし出会うこと自体ない。
学校に着くといつも通り彼女が迎えてくれる。
「おはよ!」
「……おはよう」
「……今日も放課後時間ある?」
「今日は部活だからごめん。」
そういって俺は彼女の誘いを断った。今日はダメだと思った。このままだと雨と一緒に色々なことが流れ出ていくと思った。
俺は、自分だけでなく大切な人にも嘘をついた。
「なぁアキ、今日部活ないだろ?」
「……うん」
ユキヤとは同じ部活だから少しめんどくさい。
「なんで嘘ついたんだ?」
「黙秘権行使だ。」
「……別にいいけど男なら女の子泣かすなよ」
……そんなの分かってるよ。俺は心の中でそう呟いた。
そんなことを考えているうちに、放課後になっていた。
俺は彼女に部活と言ったから帰るに帰れなかった。だから、図書室で小説とにらめっこしていた。文字は読めるのに入らない。脳のストレージはすでにキャパオーバーらしい。
俺は休憩がてら廊下に出た。
俺はハッとした。彼女が楽しそうに話している。相手は……ユキヤ。彼女の好きな[彼]の特徴とユキヤが少しづつ結びついていく。俺は図書室に荷物を置いたまま学校を出た。そしていつもの場所に向かった。誰もいない場所、俺と彼女しかいないあの場所に。もしかしたらさっきのは幻で俺を待ってくれているかもしれない。そう思って走った。けど、その場所には誰もいなかった。




