第八話 一人だけ召喚されし者(社員)④
「では次の企業さんどうぞ」
迫田美鈴はその男の熱い視線に身悶える。
「(な、なんなのあの男!あんな嫌らしい目でこの私を見るなんて!いえ、別に見てはイケないって事はないのよ?見せる為のこの(バトル)スーツなわけだし。他の男達も私を見る視線は熱いのだし?……あ、はっは~ん。この男が馬鹿な係長の推薦ってわけね。流石あの係長が連れて来ただけの事はあるわね、馬鹿さが視線だけで伝わる様よ)」
「では我が社のプレゼンを開始いたします。早速ですが当社が御社にご提案するデザインを見て頂きながらご説明させて頂ければと思います」
あら、あの男が喋る訳じゃないのね。まぁ喋った所であの脂ぎった汗を拭きながらオタオタするのがオチでしょうけど。
手元にデザインのコピーが脂ギッシュな中年男の手で配られると、何故かその男は美鈴の横へと着席する。
「(なにこの男!貴方の席は無いでしょ!そもそもプレゼンする側が席につくとか馬鹿なの!)」
いえ、ここには専務もいらっしゃるのだし事を荒げず無視すればいいわ。それにデザインを見るのは仕事。
ええ、仕事は熟すわ。
手元のデザインに視線を落とす。
隣の男も視線を落としているが、どうも私の胸元を見ている様な気がしてならない。
すると男が小声で「あれ、これ並木君のじゃなくて私のじゃないか……参ったなぁ。間違えちゃったのかな?」等と言っているが、仕事に集中する。
黒の墨で荒々しくロゴが描かれ、その上に金粉が所々に塗されたデザイン。
前衛的でありメッセイージ性もあるけども……それだけね。見ようによっては素人が強引にデザインしましたって言われても納得してしまいそうだわ。所詮弱小の印刷会社、うちとは釣り合わないのよ。
「――この様にデザインとしてのメッセージ性は皆様に伝わったかと思います」
青年の説明がひと段落すると我が社の専務が声を掛ける。
「ありがとう。前衛的で素晴らしい作品だと思います。それと失礼ですが見ようによっては素人のデザインに見えなくもないのですが……これは貴方が?」
「いえ、これは我が社の社長によるデザインであり、我が社の社長のデザインは働いてらっしゃる皆さんであれば毎日目にしているデザインも我が社長によるものです」
「私達が毎日めにしているデザイン……ですか」
「はい、検索エンジン、ディーディルのデザインで御座います」
「なんと!あのデザインは御社の社長さんのデザインでしたか!いやぁ、これならデザイナーの知名度を含めると我が社の製品の宣伝にもなる!早速契約させて下さい!」
「すみません、契約の話は当社の社長とお願い致します」
そう言って青年は私の席に座る中年男性へと頭を垂れた。
「おぉ~貴方が社長様でしたか。突然我々方の席へ座られるものですから驚きましたが、なかなかどうして、貴方ほどの方であれば納得です。迫田君、おい!迫田君!」
突然専務から声を掛けられる。
「君が責任者だろ!早く先生にお茶をお出しして!それと契約の話をちゃんと詰めて!」
「は、はい!只今!」
――――。
――。
「いったいどう言う事?何が起こったの?」
給湯室でお茶を入れようとしたが、ポットのお湯が切れている事に気付き首を振る。
「なによあの男、超有名デザイナーじゃないの。でもどうしてあんな有名人を係長如きが――!!」
「おやおや荒れてますなぁ~。早くお茶くらい準備出来ないんですかね、部長補佐さん。それとも、貴女が推すデザイナーじゃなく、俺が連れて来た男と契約を交わすのが嫌だと言うんですかねぇ?」
「クッ」
「おぉ良い表情だ、ゾクッと来るね」
「五月蠅い!」
「ん?俺にそんな口を聞いていいの?あれだけ専務が気に入ったデザイナーだけど、帰ってもらおうか?」
「貴方にそんな事が――「出来るんだよなぁ~あいつ俺の友達だし」
「……何が望み。今までの事を謝ればいいの?」
「はん、謝って済めば俺の頭はここまでハゲてねーんだよ!」
中年係長は壁に私を押し付けると、怒りのまま壁を叩いた――――バンッ!
――――。
――。
「並木君~困るよぉ~あれ私が描いたやつじゃない」
「でも専務さんすっごく気に入ってましたよ」
「そりゃそうだけどさぁ。ところで僕がデザインしたのってそんなに有名なの?」
「やめて下さいよそう言う冗談は。あ、僕トイレ行って来ますんで社長は部長補佐さんの所へ先に行っててもらっても宜しいですか?」
「あぁ構わないよ」
さて並木君が戻って来るまでに、あの女上司をエッロエロに視姦してさしあげよう!
――バンッ!!
ん?給湯室で誰か倒れた?
物音が気になり覗いた給湯室で――私は怒りに打ち震える。




