第三話 機械化女子高生
何故か鼻血を噴出し後方へ倒れ込む彼女を支えたのは、驚くべきスピードでともよ君の後ろへ回り込んだ――誰?
私の目の前には女兵士を支える眼鏡を掛けたナイスバディで際どい服の女性が居た。
女性と言うか、身体の所々が機械化されたサイボーグ?が此方を見上げている。
「社長。ともよさんは私が処理しておきます」
その喋り方は――「須藤さん?」
「はい」
「し、身長高くなったね」
「//////」
「……あ、処理はしちゃダメだよ?」
――――。
――
#須藤叉木__すどうまたぎ__#は19歳である。
去年の暮、私が高校を卒業するのを機に両親は離婚をした。
成績も学校で常にトップだった私には推薦や奨学金の話は山ほどあったけど進学する気になれなかった。
正直自分がどうなろうとどうでも良かったのだ。
母は知らない男の元へ行き、父は仕事にも行かずずっとお酒を飲んでいる。
本当にどうでもいい。
卒業まじかのまだ寒い夜。家に帰りたくない私はお金も無く、私はただ街を彷徨う。
「おにいさん、今夜はうちの店で抜いてってよ♪」
気が付けば少しエッチな通りまで来てしまったようだ。
――お金もなく、自分が何がしたいかも分からないまま気が付けば一人のおじさんに声を掛けていた。
誰かに抱かれた事なんてなかったけど、身体を差し出すだけでお金が貰えるなら大した事が無い様に思える程心が疲弊していたのだろう……今思えば私は心を持たないサイボーグだったのだ。
今時珍しい黒髪で三つ編み、チビで黒縁眼鏡のダサイ女子高生なサイボーグだ。
「おじさん、私を買ってくれませんか?」
立ち止まったおじさんは私に近づくと。
「君はいくらなんだい?」
そう聞かれて少し戸惑う。自分の値段なんて知らないし、これから自分がしようとしている行為への料金設定もわからない。
「ふふっ、君は君の値段がわからないんだね?」
そうだ、私は私の価値がわからない。いえ違うわ……私に価値なんてない――
自分を無価値だと断罪しようとしたその時、めの前のおじさんはこう言った。
「料金も曖昧、自分の価値もわかっていない、君は勉強が足らなすぎるよ」
――私はその言葉に両腕で自分の身体を押さえつける。
そんな事はない!私の成績は常にトップで色々な大学からもオファーが来るほど優秀で……違う。やっぱり私なんかに価値がないんだ。だからおじさんも私の誘いに乗らないんだ。
「君は凄いと思うよ?でも心配しなくていい、君の価値は私が知っている」
え?今このおじさんはなんて言ったの?でも何も知らないくせに!
「わ、私になんてなんの価値もない!」
私は首を振り声を荒げてしまう。だけどおじさんはそんな私の肩を掴み。
「馬鹿を言うな!君は誰にも負けない価値がある!それは私が証明してみせる!
真剣な眼差しに私の心臓が跳ね上がる。
「君の名前すら知らないけど、もし良ければこれから私に付いて来ないか」
私はその言葉に自然と涙が溢れた。
この人は私の心の深淵を覗いてくれた。深淵がこの人を覗き返すのも承知の上で一緒に居ようと言ってくれているのだ。
その瞬間、私の心の氷は一気に熱せられ蒸発する。
「つ、付いて行って良いか一度父と相談させて下さい」
目の前のおじさんはピクリと反応し。
「きゅ、急に済まなかったね。大丈夫お金ならあるから何かあればここに連絡をして欲しい」
そう言って一枚の名刺を私に差し出したのだった。
――あれから一年。私は尊敬する山元博樹社長の元、新しいシステムの構築に成功し新たな案件が次々と舞い込む様になった。
たいした量ではないのだけど、社長が喜ぶなら私には苦にならない。――私の価値を見出してくれた社長。私の価値はあの人が決めて行くのだ。今までも、そしてこれからも――。
――――。
――。
事務所は予想通り事務所ぽくなくなっていた。
艦橋。
そう言われればしっくり来る宇宙戦艦ぽい艦橋だ。
なんで宇宙かって?
窓の外に惑星が見えてるんだから仕方ない。
私は艦長席ぽい位置に腰を掛け、眉を寄せる。
「(しかし驚く事ばかりだなぁ。ともよ君はどこの紛争地帯に行くのですか?って恰好だし、並木君はケモミミだし、須藤さんはサイボーグ?だし……あ、でも須藤さんのサイボーグってわからないなぁ。あの子美人局のビッチなのに)」
そんな事を思い、彼女との出会いを思い返した。
人生で初めて女子高生が援助交際を申し込んで来たあの忌々しい日の事を。
――。
高そうな風俗店のお姉ちゃんが呼び込んでくれてたけど、あの日本当に財布にお金無かったんだ。
そんな時に「おじさん、私を買ってくれませんか?」なんて言う女子高生が居たもんだから正直翌日死ぬんじゃないかと思ったね。ラッキー過ぎて。
「君はいくらなんだい?」て、一応値段の交渉しようと思ったら、援助交際が初めてらしく値段が付けれないみたいだった。
こんなラッキーある?まぁ今時黒髪三つ編み眼鏡チビってなかなか見ないけどね!
なので色々言ってタダでやってやろうと思ってしまったのが不味かったんだろう。
君の価格は私が決めるみたいな事を色々言っちゃった気がする。あれ?価値だったけ?価格だった?どっちでもいいか。
そしたら彼女、自分の身体を抱きかかえるもんだからさ、たわわなその胸がムギュっとなって眩暈したよね。
案外着やせしてた黒髪三つ編み眼鏡チビ。正直なにかの扉開いたよね。
でも途中から泣き出しそうになったから、もう強引に行っちゃえ!って両肩掴んで彼女揺すったら胸が揺れる揺れる。
我慢しきれずにホテル連れて行こうとしたら――そうだ、自分の父親に相談するとか言い出したんだった。
考えたらそれってもう美人局だよね。あれは超ガッカリだったなぁ~、人生初の美人局とかに遭遇して落ち込んだ。
サイフにお金は無かったけど、お金で解決出来るんなら安いもんだと名刺渡したんだっけ。
そしたらなんか会社に居着いちゃったんだよね……なんでだろ。
でもデータ処理とか超速いし頭も超いいし、なにより胸がデカイって事は採用理由として誰に文句も言わせる気は無い。
――でもさ、美人局やってるくらいだからやっぱりビッチなんだろうなぁ……一回くらいやらしてもらえないだろうか。
そしたらやっぱりお父さんって言う名の怖い人達来ちゃうんだろーなぁ。
ともよ君を抱きかかえる須藤さんをもう一度視線に捕らえると、彼女も此方を振り返っていたのでそっと視線を外した。
身長高くなってお尻もイイ感じになったんだな。あれでビッチでなければなぁと溜息を一つ零したのだった。




