第二話 元キャバ嬢の秘書☆
――桜庭ともよ23歳、元キャバ嬢の現社長秘書である。源氏名は「ともよ☆彡」
突然だがそれは彼女がキャバクラへ勤めていた2年前の秋の事だった。
「最近ずっとともよちゃん目当てに通ってるあのおじさん、嫌だったら別の子付ける様にするけど、大丈夫?」
店長がそう言ってきたが、私的にはそれは困る。
脚を触って来たり、ずっと胸元を見る視線はエロおじさんを絵にかいたような人ではあるが――彼は扱いやすく金を持ってるのだ。
キャバ嬢にとってこれほどのカモは居ない。
なんせアフター行ってもホテルに誘われる事もなく、ただただ一緒にご飯を食べてお小遣いをくれるだけなのだ。
それなのにプレゼントと言って茶封筒を渡してくれる。
普通プレゼントと言えばブランド物のバックや時計なのだけど、あのおじさんに至っては茶封筒(現金)なのだ。
最初戸惑っていた私におじさんは。
――「後で買取屋に持って行くのも手間でしょ?」と言いのけたのだ。
確かにこれまでの客がプレゼントしてくれた物は、お気に入り以外全て買取屋へ持って行っていて手間だと感じていたのは事実、ここまで面と向かって現金を渡し、しかも実行してしまうおじさんが少し気にはなっていた。
店から家に帰ればネットのゲームでFPSをするだけの日々。
そんな私に可能性を信じてくれたのもおじさんだった。
と言うのも、同伴出勤での出来事。
「悪いねこんな所で待ち合わせなんて」
「ううん、山元さんてば同伴渋る事ないし優しい人だもん、どこでも待ち合わせするよ?」
秋葉原と言う街での待ち合わせで少し驚いたけど、女性が握る寿司屋があると言う事でここで待ち合わせをしたらしい。そもそも、こんなわちゃわちゃした所での同伴も珍しい。ねちっこいおっさんより幾分マシだ。
食事が始まって少し疲れているのかあまり喋らないおじさん。
私と言えば女性が握る寿司が珍しく、彼女達と結構話が進む。
いつの間にかおじさんも会話に加わり、楽しい食事も終わり店に戻りセットが始まった頃おじさんはこう言ってくれたのだ。
「ともちゃんて身体だけじゃないんだね」
ん?なにこのおっさん。と思ったのも束の間。
「店での接客をするともちゃんもそうだけど、外で気さくに誰とでも話が出来て、色々な話題を持っているともちゃんは正直凄いと思う」
「あははは、山元さんてどこかの社長なの?見えないけど。あ、ごめんそゆ意味じゃないんだよ?あはは」
ちょっと失礼だったかも知れないけど、山元さんが言った言葉を今でも忘れない。
「その無邪気な笑顔は武器になる。そのトーク力は戦力になる。そして君の身体はこの小さな世界で終わる様な物じゃない。私は確かに社長には見えないけど、君を使いこなせる自信はあるよ」
そう言って私に山元博樹さんは名刺を渡した。
――そして半信半疑で山元さんの会社の門を叩いた――驚いた事に提示された給料が200万を超えていた。
そんなに貰ってもそれに見合う仕事を熟せるか不安しか無かった。だけど山元さんが言う様に、動くと商談を次々まとめる事が出来たのだ。
小さなあの世界で終わる事なく、ここまで来れたのは山元さんが私を見つけてくれたお陰。
私はそんな山元さんを尊敬……いえ違うわ。私はヒロ君をどうしようもなく愛してしまっているのだ。
秘書となり、彼の隣に居る事は今の私の一番の幸せ。
「(もし、もし彼が若ければ私は我慢なんかしないだろう……彼を離しはしない。それだけは自信がある)」
――――
――
エレベーターは中々最上階へ到着しない。
私は気になる一人の社員の顔を思い浮かべ、そして2年前の会話を思い返していた。
初めての同伴で緊張しすぎて喋れなかったらあの元キャバ嬢、独りでパクパク寿司喰いだして私を置いてきぼりに店の女の子と喋り出したんだよなぁ。そもそもそれまでにどれだけ現金渡してると思ってるんだって話だ。
普通あれだけ貢いだら向こうから誘ってくれないもんかね?
でもまぁいいか。あの後店で何か言われてカチーンと来て、うちの会社さそってエロイ事してやろうと「君の身体を使ってやる」とかなんとか言ったのに何故かうちで働く事になって、じゃ会社でエロイ事し放題じゃね?って疲れた所を襲うつもりで色々言ってたら予想以上の収益上げて、そんな彼女に私の下半身もピクリとも反応しなくなったんだっけ……考えたらいい事ではないなぁ。
――まもなく山元博樹艦長、並木大佐、艦橋に到着いたします。
女性のアナウンス入る。
「(あ、これいいな。誰がエレベーターに乗って来るのかわかるシステムなんだ。……艦長ってなんだ?)」
そしてゆっくりと扉が開かれる。
「ヒロ……社長!今まで何処にいらしたんですか。私、心配で心配で……」
そう言いながら金髪の顔に一文字の傷がある、赤いベレー帽をかぶる女性兵士らしき人物が俺の元に駆け寄ってきた。
「その声……もしかしてともよ君?」
「そう言う貴方はもしかして……」
「あぁ山元博樹だよ」
――ぷっしゅーーーーー!
何故か彼女は私を見るなり鼻血を噴出しながら倒れたのだった。




