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未来はナプキンに書いてある 〜一攫千金を目指す姉妹の昭和・平成奮闘記〜  作者: Tokinapo


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第四十六話 Gのために

「龍ちゃんももう大学二年生かあ」


 アイスティーにミルクを入れてかき混ぜながら和子がしみじみと言った。由恵も感慨深げに頷く。


「早いよね……姉の欲目をもってしても、龍ちゃんはそう地頭がいいタイプではない。受験勉強、よく頑張ったよね」

「ほんとに……」

「そういえば、龍ちゃん、夏休み東京に遊びに来るんでしょ? 今回も姉ちゃんのとこにお願いしちゃっても大丈夫?」


 和子はばつが悪そうに、下を向いた。


「うー、えーと、今回は由恵の家に泊めてもらえるとありがたいんだけど……」

「全然いいけど、どうして?」

「その、実は同居人がいる……」

「どういうこと!? まさか、明彦さんと!?」

「うん、その、まさか……」


 龍太郎の抗体薬の投与が終わった2009年3月から、和子は明彦と付き合い始めた。葛藤がなかったわけではない。今回は別々の人生を歩もうと思って、わざわざ東京の大学に行ったのに、また同じ男と付き合うのかと随分と悩みもした。でも、龍太郎の病気の時に、躊躇いもせずに百万円を渡してきた明彦以上に信頼できる男性が自分の人生に現れるとは、和子には思えなかったのだ。しかも後で知ったのだが、あの百万円は本当にあの時点の明彦のほぼ全財産だったという。馬鹿な奴だと思う。でもそういうところが愛おしいとも思った。


 和子が明彦と付き合うことを告げた時、由恵は「職場だけならず、彼氏まで、一回目と同じなの!?」と散々和子を弄り倒したが、内心では明彦と付き合い始めたことを祝福していた。この無口で何を考えているか分からない元・義兄のことを、由恵は嫌いではなかったのだ。


「で、どういうことで、そうなったわけ?」


 由恵は興味津々である。


「一回目の人生では、今年の冬にミーコをお迎えしたのよ。ちょうどこの前更新時期だったから、事前にこのタイミングでペット可のマンションに引っ越しておこうと思ったわけ。それで、明彦に引っ越すことを話したら、一緒に暮らそうと……」

「あー、だから私とクマさんが引っ越し手伝うよって言った時、断ったのか。別に隠すことないのに」

「今更かよっていう気恥ずかしさがどうしてもあって……あんたとクマさんはそのうち招待するつもりだけど、龍ちゃんに知れたら、お父さんとお母さんにも知れちゃうからさ。特にお母さんは結婚しろってうるさいからね」

「それな……でも龍ちゃんは、明彦さんにも会いたがるんじゃない? 明彦さん、私の代わりに何回か龍ちゃんに数学教えてくれたじゃん?」

「そうだね、現役塾講師の家庭教師はなかなかに豪勢だった。しかも、龍ちゃん、なぜか妙に明彦に懐いてて、明彦も満更じゃなさそう。我が弟ながら人たらしなんだよなあ……」


 和子はノートとペンをトートバッグから取り出すと、強引に話を変えた。


「そんなことより! 今日はさ、来年起こる熊本地震の話をしようと思って集合したんじゃん。地震の正確な日付はいつだっけ?」

「前震が2016年4月14日の夜、本震が16日の未明、というか15日の深夜だね」


 和子はスマホを操作すると、ノートに曜日を加えて書き付けた。


「4月14日が木曜で、4月16日が土曜か」

「姉ちゃん、渡辺家、特にじいちゃんに地震を避けさせるために、旅行に誘うとか言ってたけど、どうなの?」

「それがうまくいってない……」


 一回目の二人の人生では、母方の祖父は熊本地震でひどい怪我をして、その怪我がもとで寝たきりとなり、数年後に亡くなったのだ。母の実家である渡辺家は震源から数キロとかなり近く、あの大きな家は半壊となった。


 和子は帰省の際、「来年あたり、親族全員で海外旅行をしない?」と祖父母を誘ったのだが、芳しい返事は得られなかった。ここ数年で随分と老け込んだ祖父母は、旅行を億劫がり、首を縦に振らなかったのだ。


「緑ちゃんは少し遠くに住んでるからともかく、渡辺家の近くに住んでる由佳理ちゃんの家も大変だったみたいだから、みんなまとめて旅行に連れて行っちゃえば楽だと思ったんだけどなあ。『海外が面倒なら、温泉でも行こうよ』って言ったけど、『お前達だけで行ってくればよか。じいさんとばあさんは留守番しとくけん』なんて言うんだよね。それじゃあ、意味がないんだわ……」

「そういえば、明彦さんのご実家は大丈夫だったの?」

「熊本市内だったから、そこまでひどいことにはならなかったけど、水道やガスの復旧にはかなり時間がかかって、大変だったみたい。来年にはもうミーコがいるから、私と明彦が一緒に家を空けるわけにはいかないけど、私たちが旅行している間、明彦のご両親を東京に呼ぶのもありかなとは思ってるんだけどね」


「いい方法が思い付かない……」とテーブルに肘を付いて頭を抱える和子を、由恵は意味ありげに見下ろした。


「姉ちゃん、海外旅行に親族まとめて連れて行こうと思ってたくらいだから、金に糸目はつけないということだよね? もちろん私もある程度は出すつもりだし」

「うん? じいちゃんの命がかかってるんだし、お金はどうにかできる範囲であれば、出すつもりだよ」

「それであればさ、私、みんなまとめて、まるっと移動させる方法、思い付いてるんだけど」

「え、なになに? そんな方法あるなら、教えてよね!」


 由恵は水滴の付いたグラスをナプキンで拭うと、アイスティーを一口飲んでから言った。


「姉ちゃんと明彦さんの結婚式」

「……は!?」

「だってそうでしょ? 姉ちゃんの結婚式だったら、親族大移動するでしょ? 私の時もそうだったじゃん? だから、姉ちゃんの結婚式を、東京ですればいいじゃない」

「私も明彦も熊本出身だぞ? それなのに、わざわざ、東京で結婚式するわけ? その前に、そもそも、私たち、同棲始めたばっかで、結婚なんてまだ考えてない!」

「姉ちゃんが、花嫁ドリームで、どうしてもここでやりたいっていう会場があるとかいう設定にすればいいじゃん。それに、七年も付き合っといて、今更結婚が早過ぎるもないだろうよ」

「私、結婚はともかく、結婚式したい願望なんてないって!」

「じゃあ、他になにかいいアイデアある?」

「う……」

「ないでしょ? じゃ、早速帰ったら、明彦さんと話してよね」


 ぴしゃりと由恵に言われた和子は、しばらく黙り込んだ後、観念したという感じで言った。


「一応、話すだけは話してみる……」


いつも読んでくださって、ありがとうございます。


早いもので、小説になろうで連載を始めて42日目(カクヨムで連載を始めて47日目)です。


基本、自分に甘いので、「毎日連続投稿をここまで続けられてすごい……」と、自分で自分を褒めています(笑)


ただ、ついにストックが完全になくなってしまったので、今週末は執筆を頑張りたいと思います。


予定より話が膨らんでしまったのですが、ようやく終わりが見えてきました。


今のところ、本編50話か51話+エピローグで完結できそうです。


もうしばらく、和子と由恵たちにお付き合いいただけると、とても嬉しいです。

(……と言いつつ、また伸びてしまったらすみません!)


最近、★、ブックマーク、リアクション、感想、そして何よりもレビューをくださった皆さま、本当にありがとうございます!


もし作品や、和子と由恵の姉妹を気に入っていただけましたら、★やブックマークなどで応援していただけると、とても励みになります。


レビューや感想、リアクションなども、いただけたら泣いて喜びます。


これからもよろしくお願いいたします。

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