13-1.巡る季節
季節は秋に近づいていました。
あれから、水瀬君とはすっかり話さなくなりました。
それでも日々は淡々と過ぎていきます。元々余剰があった分が元に戻っただけなのだから、当然といえば当然でした。
あの日を境に、嫌がらせのような、仲間外れのような行為はなくなりました。
転校してきたばかりの頃に戻ったのかと思いましたが、少しだけ違いました。
「これ、東さんのだよね?」
隣の席の女生徒が、シャーペンを差し出してきます。少し前に失くしたものでした。
「うん、私の」
どうしてわかったのだろうと考えていると、彼女はにっこりと笑います。
「落とし物箱にあったんだけど、東さんそれ使ってたなって思い出して。勝手に持ってきちゃった」
「ありがとう⋯⋯佐藤さん」
名前を呼ぶと、彼女は少しだけ驚いた顔をして、それから柔らかく笑いました。
「覚えててくれたんだ。どういたしまして」
彼女の反応を見て、私はあの日、美月先生に怒られた時の言葉を思い出していました。
『私達のこと、見下して』
そう言われた時、少なからず動揺している自分に驚きました。
私は、自分の中の失礼な感情を制御できているつもりでした。心の中で相手を見下していても、それを態度に出したことは一度もない、そう思っていたのです。
でも違ったのです。彼等は私の傲慢さに気づいていたのです。当然、良い気がするはずがありません。
私はそれに気づかず、相手の態度が悪いのは全部向こうのせいだと思い込んでいました。
他人が冷たいからと言って、自分の醜さの大義名分になるはずがないのに。
そんな当たり前のことを、私は、友人を失うまで、理解できなかったのです。
でもこれは私の今後の人生を送るにあたり確かに必要な経験で、必要な学びで、必要な犠牲で。
(そう、私は実に良い経験をしたのです)
けれど。
私は、ひとつだけ、決定的な勘違いをしていました。
水瀬君では、なかったのです。
ノートの件を美月先生に話したのは。
あの後、クラスメートの大人しそうな女子に二人、声をかけられました。
「あの、東さん⋯⋯ごめんね。私達、美月先生があんなふうに、みんなの前で怒るなんて思ってなくて⋯⋯」
先生に伝えたのは、彼女達でした。
前から、私への嫌がらせを気にかけてくれていたらしいのです。
「でもね、先生も気づいてたみたいなの。ただ、東さんがどうしたいのか、ちゃんと確認してからじゃないとって考えてたみたいで」
「でもあの日、実際に見ちゃって⋯⋯頭に血が上っちゃったみたい」
二人は顔を見合わせて、少し困ったように笑いました。
「だからってわけじゃないけど⋯⋯一度、先生と話してみたらどうかな?」
「話し、ですか」
「もし話すことがなかったら、聞けばいいんだよ。先生がどう考えて怒ったのか」
「私達なりに考えて伝えたけど、先生から直接聞いたら⋯⋯また少し違うかもしれないから」




