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【完結】ペーパームーンニューライト  作者: 一七


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13-1.巡る季節

 季節は秋に近づいていました。


 あれから、水瀬君とはすっかり話さなくなりました。


 それでも日々は淡々と過ぎていきます。元々余剰があった分が元に戻っただけなのだから、当然といえば当然でした。


 あの日を境に、嫌がらせのような、仲間外れのような行為はなくなりました。


 転校してきたばかりの頃に戻ったのかと思いましたが、少しだけ違いました。


「これ、東さんのだよね?」


 隣の席の女生徒が、シャーペンを差し出してきます。少し前に失くしたものでした。


「うん、私の」


 どうしてわかったのだろうと考えていると、彼女はにっこりと笑います。


「落とし物箱にあったんだけど、東さんそれ使ってたなって思い出して。勝手に持ってきちゃった」


「ありがとう⋯⋯佐藤さん」


 名前を呼ぶと、彼女は少しだけ驚いた顔をして、それから柔らかく笑いました。


「覚えててくれたんだ。どういたしまして」


彼女の反応を見て、私はあの日、美月先生に怒られた時の言葉を思い出していました。


『私達のこと、見下して』


 そう言われた時、少なからず動揺している自分に驚きました。


 私は、自分の中の失礼な感情を制御できているつもりでした。心の中で相手を見下していても、それを態度に出したことは一度もない、そう思っていたのです。

 でも違ったのです。彼等は私の傲慢さに気づいていたのです。当然、良い気がするはずがありません。


 私はそれに気づかず、相手の態度が悪いのは全部向こうのせいだと思い込んでいました。

 他人が冷たいからと言って、自分の醜さの大義名分になるはずがないのに。


 そんな当たり前のことを、私は、友人を失うまで、理解できなかったのです。


 でもこれは私の今後の人生を送るにあたり確かに必要な経験で、必要な学びで、必要な犠牲で。


(そう、私は実に良い経験をしたのです)


 けれど。


 私は、ひとつだけ、決定的な勘違いをしていました。


 水瀬君では、なかったのです。


 ノートの件を美月先生に話したのは。


 あの後、クラスメートの大人しそうな女子に二人、声をかけられました。


「あの、東さん⋯⋯ごめんね。私達、美月先生があんなふうに、みんなの前で怒るなんて思ってなくて⋯⋯」


 先生に伝えたのは、彼女達でした。

 前から、私への嫌がらせを気にかけてくれていたらしいのです。


「でもね、先生も気づいてたみたいなの。ただ、東さんがどうしたいのか、ちゃんと確認してからじゃないとって考えてたみたいで」


「でもあの日、実際に見ちゃって⋯⋯頭に血が上っちゃったみたい」


 二人は顔を見合わせて、少し困ったように笑いました。


「だからってわけじゃないけど⋯⋯一度、先生と話してみたらどうかな?」


「話し、ですか」


「もし話すことがなかったら、聞けばいいんだよ。先生がどう考えて怒ったのか」


「私達なりに考えて伝えたけど、先生から直接聞いたら⋯⋯また少し違うかもしれないから」



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