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【完結】ペーパームーンニューライト  作者: 一七


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12-2.ノート


「東さ、なんか元気なくね?」


 昼休みのことでした。

 水瀬君が、付け合わせのサラダをつつきながら言います。


 正直なところ、少し意外でした。

 まさか、違和感に気づくなんて。いえ、誤解のないように言っておきますが、別に、件の彼女らの嫌がらせが堪えたわけではありません。


 ただ、これから夜の散歩のルートから学校を外そうと考えていて、その切り出し方に迷っていただけです。


 嫌がらせに屈して行動を変えたと、彼女らに思われるのは癪です。なので意地でも続けてやろうかとも思いましたが、そもそも彼のコソ練も、ノエルを校庭に連れてくることも、どちらも学校のルール的にはグレーゾーンです。


 顧問は黙認しているようですが、彼女達に知られてしまった以上、他の先生の耳に入るのも時間の問題でしょう。


 そうなれば、注意をなされる可能性が高く、部に所属している立場を考えれば、彼になんらかのペナルティが課されても不思議ではありません。

 私が先生から怒られる分にはどうでもいいことです。ですが、彼の練習はそういうわけにもいかないでしょう。


 とはいえ、すべてを説明するとなると彼女達のことにも触れなければなりません。が、まだ上手く言語化できるほど、考えがまとまっていないのです。

 ⋯⋯かといって、悠長にしている時間もありません。


(⋯⋯仕方ない)


「なんでもないです。ただ、これからはノエルの散歩のルートを変えるので、校庭には行けなくなると思います」


 我ながら下手な言い訳でした。でも彼はあっさり、「そっか」とだけ言いました。


「いつも同じルートじゃ飽きちゃうもんな。どの道にすんの?」


 呑気な調子で、そんなふうに聞いてきます。


「え⋯⋯と。まだ決めてませんけど、通ったことのある道とか」


「あー、UFOじいさんの家の方とか? あの辺、森の手前までは明るくて歩きやすいよな」


 実にあっけなく、拍子抜けするほど何も追及されないまま、昼休みは過ぎていきました。


 私は、無意識に彼が私を心配して、あれこれと踏み込んで聞いてくるだろうと身構えた自分が、ひどく恥ずかしくなりました。数分前の自分の頭を、思い切り叩きたくなります。


(⋯⋯馬鹿馬鹿しい。思い上がりもいいところだ)


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