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私を殺した兄嫁様、断罪される覚悟はよろしくて?~死に戻り王女ですが、助けてくれた隣国の密偵がメロくて困る~  作者: 雨沢雫


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44.因果応報


 キャロライナが捕らえられてから、三日が経った。


 キャロライナは初めこそ王族専用の特別牢に入れられたが、すぐにエドウィンとの婚姻関係が解消され、他の者たちと同様、地下牢に収監された。


 また、グレイヴ王国始まって以来の女王誕生は、すぐさま民衆に伝えられた。同時に前国王崩御も伝えられたため、民衆は悲しみつつもステラの即位を心から喜んだ。


 一方、ジェイルズ侯爵派の貴族たちは、あの断罪劇の場にいなかった者も含め、全員が芋づる式に捕らえられた。現在、罪人の処遇については協議が進められているが、ステラ女王陛下の暗殺未遂に関わった者たちは、全員死罪だろうと噂されている。


 キャロライナはそれらの話を、見張りの衛兵の会話から知った。


 暗く冷たい地下牢での日々は、温室育ちのキャロライナにとってあまりに苦痛なものだった。ついこの前まで、特注の豪華なドレスを身にまとい、一流のシェフが作った料理を食べ、最高級の寝台で眠っていた。それなのに今与えられているのは、薄汚れた服に、残飯に、硬い床。


 キャロライナは地下牢に連れてこられて一日ももたずして、気が狂いそうになった。


 どうせ死罪になるのなら、さっさと殺して欲しい。こんな惨めな思いをするなら、いっそひと思いに――。


 そんな考えばかりがキャロライナの頭に浮かんでは消えた。


 捕らえられて四日目の夜、キャロライナは無気力に壁のシミを眺めていた。見張りの交代の時間が来たようで、複数人の足音が聞こえる。それが落ち着いたかと思えば、不意に小さく声がした。


「キャロライナ様」


 聞き慣れたその声に、キャロライナはガバッと身を起こした。すぐに鉄格子に近寄り、名を呼んだ男の顔をよく見る。


「イーサン……!」


 キャロライナの思った通り、男の正体はイーサンだった。彼は騎士服に身を包み、見張り兵として忍び込んできたらしい。


 しばらく行方知れずだった彼は、ステラの即位と同時に、彼女に婚約破棄されている。


(一体どこに逃げたのかと思っていたけれど、わたくしを助け出すためだったのね! やればできるじゃない!)


 キャロライナの胸は途端に希望に満ち溢れた。イーサンの瞳を見つめながら、かわいげのある声を出す。


「イーサン、助けに来てくれたのね……! お願い、ここから出して。一緒に逃げましょう?」


 そう言い終わるか否かのところだった。彼の様子がおかしいのに気づいたのは。


 イーサンの顔は青白く、目の下には酷いクマができている。痩せ細り、冴えない容姿がさらにみすぼらしくなっている。


 それなのに、顔に薄ら笑いを浮かべているのが、なんとも気味悪かった。


「キャロライナ様」


 イーサンはもう一度名を呼ぶと、鉄格子の中にヌッと手を伸ばしてきた。そして、キャロライナの髪を思いっきり掴んだ。


「痛っ! 何するの――」


 開いた口に何かを突っ込まれ、キャロライナは話せなくなった。液体を注ぎ込まれ、反射で嚥下してしまう。その正体が例の毒だと気づいた時、キャロライナの顔から血の気が引いていった。明らかに致死量だった。


 騒ぎに気づいた衛兵たちが集まってくる足音が聞こえてきたが、その頃にはキャロライナはその場で倒れ、血を吐いていた。


 イーサンも毒をあおったようで、鉄格子の前にどさりと倒れ込む。彼は血を吐きながら、やはり薄っすらと笑みを浮かべていた。


「あの世で一緒になりましょうね、キャロライナ様」


 キャロライナは鉄格子越しにイーサンと目が合ったが、もはや何か言葉を口にできる状態ではなかった。体を動かせなくなったキャロライナは、冷たい床に頬を付けながら、意識が途切れるその瞬間まで、イーサンの嫌な笑みを見続ける他ないのだった。


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