26.支配か、喰われるか
登場人物
<ディヴァインリーパー>
ジェシカ
グラフ
アンディ
アリス
アルス
クロード
「──聖王国リベリオン。
前に少し話をしたけど、この国はクロスリーパーに対して敵対しているのよ」
アリスは知っていることを話し始める。そんな話にジェシカも反応を返す。
「何か、理由でもあるの?」
「そうね……それを知るにはクロスリーパー。いえ、ジェシカの中に眠るマリアの話をしないといけないわ」
「え、マリアの話? それって……」
ジェシカは、マリアと重なった時に記憶が流れてきたことを思い出した。
「どうしたのジェシカ?」
「あ、うん。実はさ……」
ジェシカはマリアとの出来事を、ゆっくりと語った。
「……そんなことがあったなんて」
「私も別に知りたいわけではなかったんだけど……アルスを助けたい一心で……」
「ええ、分かっているわ。それにもう包み隠さずに話せるから、こちらとしては楽になったわ。うふふ」
「あはは……それなら良かった」
二人の話を、グラフは腕を組んで目を閉じたまま聞いていた。
アリスは咳払いをし、改めて話し出す。
「そうね。いい機会だし、全員に話した方がいいでしょう。だから明日、準備も含めてすべてを話すわ」
「あー、確かに。それがいいかもね」
「そうね。それじゃ、リベリオンに関しての話は明日ということにしましょうか」
「分かった!」
明日、リベリオンとクロスリーパーの過去を話すことが決まり、ジェシカは肩の力を抜き、紅茶を口に含んだ時だった。
「おい、アリス。少しいいか? 時間は取らせない」
グラフがアリスに話しかける。
「え、ええ。別にいいけど、何かしら?」
グラフはグレン達に作ってもらった武器を手に取り、話し出した。
「俺は別にクロスリーパーの過去なんて興味がない。なら、今からでも進化への道を探る方を優先したい。だから時間があるなら教えてくれ」
「……なるほど、そうね」
アリスは少し考えてから口を開いた。
「……分かったわ」
するとアリスはソファーから立ち上がり、グラフから受け取ったフィセルの結晶を手に取り、目の前に置いた。
「明日、これをアルスに錬成してもらいなさい」
「……これはあの時のやつか」
「そうよ。これをその剣の柄に埋め込み、グラフのブラッディローズを結晶に与え、媒介として剣へと流し込む」
「それで?」
「多分だけど、貴方の血を与えることでフィセルの結晶は自我を持つ。その時、飲み込まれることなくグラフが主導権を取れるようになりなさい。
そうすれば、求めるクロスリーパーの進化は終わるわ」
「……なるほどな。要は俺の力で奴をねじ伏せ、従わせるってことだな」
「うふふ、簡単に言うわね。その結晶はホーリーエンブレムの一人よ」
「ああ、分かっている。だが、俺は負けるわけにはいかない!」
「ね、ねえ、大丈夫なのグラフ?」
心配そうにグラフを見るジェシカ。
「大丈夫だ。これくらいの試練、乗り越えなくてはお前の隣に立つ資格なんかないさ」
「……そんなことないけどさ……分かったよ。待ってる!」
「ああ、期待しておけ。早く従わせて、お前の元に行く」
「うん!」
こうして、この先に待つ様々な出来事に向け、着々と話が進んでいくのだった。
──次の日。
朝から外が騒がしいことに気づき、ベッドから飛び起きるジェシカ。
「なにー……朝から……」
目を擦りながら窓越しに外に目を向けると、庭でグラフが両膝を地につけ、苦しんでいた。
「……え」
しかし、少し離れたところにアルスとアンディ、クロードの姿もあった。
思わずジェシカは窓を開け、声を上げる。
「朝から何してるの、四人で!」
ジェシカの声にアルスが応える。
「おう、おはようジェシカ!」
「うん、おはよう」
窓を開けたジェシカの姿は朝日に照らされ、薄いレースの服装に身体のラインがうっすらと見えていた。
そんな姿を見たクロードは、思わず顔を横にそらし、照れていた。
「おい、ジェシカ」
「おはようアンディ」
そう言いながらアンディが、クロードに見えないようにジェシカへと近づき、声をかける。
「お前……そんな格好で……とりあえず着替えろ。そしてそのボサボサの髪を解いてこい。分かったか」
「え……」
アンディの言葉を聞いた後、ジェシカはふと我に返り、自分の格好を見た。
「わわ! も、もう! アンディの馬鹿!!」
慌てた様子のジェシカは窓を閉め、大きな音を立てながら着替えを済ませ、扉が閉まる音が外に響いていた。
「はは、もうジェシカも大人だな。あの時からもう五年か……」
クロスリーパーとして芽吹き、様々な出来事を経て今に至ることを思い出すアンディ。
そんなアンディに、膝を抱えているグラフが声をかける。
「悪いな、アンディ」
「問題ない。それよりお前、まだやるのか?」
「ああ、早くこいつを物にしたいからな……」
グラフが握る手には、黒い色をした片手剣。そしてフィセルの結晶が埋め込まれていた。
「……そうか。だが無理はするなよ。そんなすぐにできるわけではないし、お前自身が成長しなくてはいけないことも分かるだろ」
アンディは事前にアリスから聞いた話で、ある程度理解していた。
「ちっ……分かっているさ……」
片足を立て、立ち上がろうとするが身体が重く、剣を離し、そのまま倒れた。
「ったく、無理しやがって……」
木陰まで運び、休ませる。
グラフの試練は、まだ始まったばかりで何も掴めていなかった。




