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紅月のクロスリーパー   作者: ルーツ
第五章 悪戯の終末

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18. 血華覚醒

登場人物

<ディヴァインリーパー>

ジェシカ 

グラフ

アンディ 

アリス

アルス

クロード


教会の司祭(アンフォリーの妹)

アン・レゾン


四代厄災

悲狂のアン・フォリー

神速のレーヴ

絶対死者アブソリュート


グラフの想い人

ルミナス・エフェメール


初代マリア

リーン・ホーク・マリア

クロードは目を閉じ、出雲の国での出来事を思い出していた。

フィセルに向けて放った、あの一閃。

追い詰められ、喰われると悟ったあの瞬間。

それでも振るった、最後の抵抗。


その時に掴みかけた感覚を、もう一度引き寄せようとしていた。


(あの時の俺……もうダメだと思った。このまま喰われるくらいな!せめてもの抵抗!!)


出雲刀を握る右腕に、自然と力がこもる。


「──思いだせ俺。あの時の気持ちを」


空は雲に覆われているが、空気は澄んでいる。

頬を撫でる風と街の匂いが、現実を確かに感じさせる。


その中で、意識をさらに深く沈めていく。


「ブラッディローズ」


その言葉と同時に、内側で“何か”が目を覚ました。


【くっくっ、貴様の意識にも我の欠片が入ったか】

【奴の血をもらった眷属ならそれもありえるか】


「はっ!」


反射的に目を開け、周囲を見渡す。

だが見えるのは、いつもの訓練場と遠くにいるグラフの姿だけだ。


「……今の声は……誰」


一瞬、背筋に冷たいものが走る。

振り返るが、何もいない。


息を整え、もう一度だけ試す。


「ブラッディローズ」


次の瞬間、視界が暗転した。


「え……!? な、なにこれ」


足元の感覚が消える。

空間そのものが、失われる。


その中で、ただ一人だけ──


白い髪と真紅の瞳の女が、立っていた。


【くっく……貴様、名はクロードだったかな】


声は確かにそこにある。

だが耳ではない。意識に直接響く。


クロードはゴクリと唾を飲み込み、慌てて視線を逸らした。


「う、うわー! ま、待ってくれ! 服!服きてくれ!」


両手で目を覆う。

女は肩を震わせ、笑う。


【くっくっ、我を見てそんな態度とはな、おもしろい】

【さすがジェシカに見初められるただけのある男よ】


「え? 今はジェシカって……」


思わず視線を戻す。


「まさか、マリアなのか?」


【……そう言う事だ。我が名はリーン・ホーク・マリア】


名を聞いた瞬間、空気が重くなる。

ここが現実ではないと、否応なく理解させられる。


「何で……マリアが話しかけてくるんだ……」


周囲は暗闇。

見えるのは、目の前の存在だけ。


「はあっ……はっ……! お、お前は俺に……何を」


【──別に何もしてはおらぬ。これは貴様が選んだ選択だ】


意味は分からない。

だが、その言葉だけが妙に重く残る。


──グラフ。

意識の奥で、かすかに声が響く。


「はっ……! はっ……!」


呼吸が乱れ、目が泳ぐ。

そしてマリアが一歩、近づく。


【良い。今のお前には何一つとて理解できないだろう──だが。】


顎を掴まれ視線を強制的に合わせられる。


逃げられない。


そのまま——


右手が——

クロードの腹へと沈んだ。


「──ぐはっ! な、何……やって」


内側を直接触られるような不快感が、全身を駆け抜ける。


【くっく……これで良い。貴様もジェシカ同様、争いの中へと身を投じるのだ】


────スカーレットローズは使えずとも、我の力を与えてやろうぞ─────。


視界がぼやけ意識が崩れていく。

それでも——最後に、マリアの口元だけがはっきりと見えた。


そして言葉が刻まれる。


“アブゾ・ブラッディローズ”


─────────────────


「─────おい! ──おい! しっかりしろ」


声に引き戻される。


「──っ。 あ、あれ……僕」


ゆっくりと目を開けるとグラフに支えられていた。


「いきなり全力解放などするからだ。気をつけろ」

「……え? 全力解放……?」

「──周りを見てみろ」


視線を動かす。

自分を中心に、砂や小石が遠くへ弾け飛んでいる。


「これを僕が……」

「ああそうだ。いきなりまだ教えていない身体解放をお前は全力でやったんだ」


喉が鳴る。

だが同時に、あの感覚がまだ残っていることに気づく。


支えを離れ、立つ。


「……グラフさ──いや、グラフ」


一瞬だけ目を閉じる。


「今から俺、訳分からない事をすると思う」


静かに言い切る。


「危ないと思ったら、止めてくれ」


その目に迷いはない。


「何をするのか分からんが……任せろ」


グラフは短く答える。


「止めるべき時は、俺が止める」

「ふふ、頼むよ」


呼吸を整える。

足を踏みしめる。

刀を握る手に、迷いはない。


「──行く」


構える。


そして——


一歩、踏み抜く。


“アブゾ・ブラッディローズ”


──ドクン。


──ドクン。


鼓動が響き、変化が始まる。あの"時のように"


黒い瞳が——紅へ。

髪が——白へと変わる。


「お、おい」


グラフの声が揺れる。


その瞬間、クロードの中心から風が生まれる。

それは一気に膨れ上がり、暴風となって周囲を包み込んだ。


姿が、消える。


「し、心音が……クロードお前……」

「大丈夫。俺はここにいるよ」


風の中から声が響く。


雲の隙間から光が差し、紅い閃きが走る。

クロードは一閃を放つ。


嵐が裂ける。


その中心に——姿が現れる。


紅に染まった出雲刀。

意識を保ったまま立つクロード。


「ク、クロードお前、遂に」

「はい、これですよね。俺やったよグラフ」

「ああ、よくやったクロード」


風が止み静寂が戻る。


こうしてクロードは、ブラッディローズを取り込みながらも——

全力解放状態で戦えることを証明した。

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