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紅月のクロスリーパー   作者: ルーツ
第五章 悪戯の終末

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12. 覚醒者ルミナス

登場人物

<ディヴァインリーパー>

ジェシカ 


教会の司祭(アンフォリーの妹)

アン・レゾン


四代厄災

悲狂のアン・フォリー

神速のレーヴ


グラフの想い人

ルミナス・エフェメール

──次の日の早朝。

雨は上がり、朝日が窓から差し込む。


ジェシカは目を覚まし、大きなあくびをしながらベッドから立ち上がると、洗面所で身支度を整えた。


────────────


着替えを済ませて部屋を出ると、店主が声をかけてきた。


「おや、おはよう。朝食できてるが、もう食べるかい?」

「おはようございます。うん、食べる!」

「はは! 用意するから、そこに座って待ってな」


そう言って、昨日話していたテーブルを指さす。

ジェシカは椅子に腰をかけ、朝食を待った。


「お待たせ。これが朝食だよ」


テーブルに並べられた料理を見て、ジェシカの目が輝く。

そこには、さまざまな具材を使った豪華なサンドイッチが並んでいた。


「これいいの!?」

「ああ、当然だ」


「うわー、ありがとう!」

「おう! 喜んでくれてこっちも嬉しいよ」


無邪気に喜ぶジェシカを見て、店主も目を細める。

その場には、穏やかな空気が流れていた。


───────────────


食事を終え、店主が淹れてくれたコーヒーを前に、ジェシカの向かいへ腰を下ろす。


「今日はこれからどこか行くのかい?」

「うん、ちょっと酒場に用事があって」


「ほー、酒場ね。何か情報でも集めるのかい?」

「まあ……そんな感じかな」


ジェシカは曖昧に笑い、話を濁す。


「ふぅ……ごちそうさま。このまま出てくるね」

「そうかい。なら、人目の少ないところには行かないようにな」

「うん、ありがとう」


そう言って宿を出ると、手紙に書かれていた酒場へと向かった。


────────────


宿から少し歩く。


重装備の兵士や、フードを被った人物たちが、すれ違いざまにジェシカへ視線を向けてくる。


(……なんだろう。やけに見られてる気がする)


だが、誰も声はかけてこない。


やがて、視界に酒場の看板が入る。

ジェシカは扉を開け、中へと入った。


一歩踏み入れた瞬間、空気が重くなる。

鋭い視線が、いくつも突き刺さる。


それでもジェシカは臆することなく、奥のカウンターへ向かい、椅子に腰を下ろした。


その時。


「“マリア様”」

「──!!」


小さな声。

だが確かに、自分に向けられていた。


思わず立ち上がり、声の主へ身構える。

そこには、一人の女性がただ静かに微笑んでいた。


「驚かせてしまい、申し訳ありません。ですが、足を運んでいただきありがとうございます」

「……あなた、一体」

「はい。すでにお気づきかと思いますが、私は“覚醒者”です」


その言葉に、ジェシカの警戒は解けない。

それでも女性は、穏やかなまま続ける。


「私はルミナス。ルミナス・エフェメールと申します」

「ルミナス……!? え……うそ……」


その名に、ジェシカは驚きを隠せなかった。


「大変申し訳ありませんが……お話ししたいことがあります。場所を移してもよろしいでしょうか」


ジェシカは一瞬だけ考え──無言で頷く。


「ありがとうございます。それでは、こちらへ」


ルミナスは酒場の奥へと進む。

ジェシカも後を追い、部屋へと入った。


ギィ、と扉が軋む音を立てて閉まる。

その瞬間──空気が変わった。


ルミナスが指を鳴らす。

それだけで、この部屋だけが“切り離された”ような感覚に包まれる。


「これって……!」

「ご安心ください。ここは私の魔術で作った空間です」


ジェシカの身体に、緊張が走る。


「さあ、こちらへ」

「…………」


促されるまま椅子に座り、ルミナスも向かいに腰を下ろした。


わずかな間。

沈黙が流れる。


やがて──

「改めまして、ありがとうございます。

早速ですが、お話ししてもよろしいでしょうか」


「……うん、聞くよ」


ルミナスは柔らかく微笑む。

だがその目は、どこか冷静だった。


「まず、マリア様は──」

「ねえ。その呼び方やめて。私の名前はジェシカ」


「……失礼しました。ジェシカさん」

「うん、それでいい」

「では改めて──」


ルミナスは姿勢を正す。


「ジェシカさんは、ミネルバ王国を出てから現在に至るまで、様々な出来事を見聞きしてきたと思います。それをどう感じましたか?」

「そんな急に言われても……」


ジェシカは少し考える。


「ただ……あと二日後に、アルカナンとリベリオンは大きな戦争になる。

そこに四代厄災の二人も関わる……そう思ってる」

「……そうですか」


ルミナスの表情が、わずかに引き締まる。


「では──これからお話しするのは、この国を治める“神速”のレーヴについてです」


一度、息を整える。


「現在のレーヴは、もはや人では何もできません。

司祭たちの操る“道具”──ただの傀儡です」

「……え」


「力は失われ、ただの死者と成り果てている。

ジェシカさんや私たちと戦えるような存在ではありません」

「嘘だ! そんなはずない! だって四代厄災なんだよ!?」

「ええ、表向きはそうです」


ルミナスは静かに続ける。


「ですが、それは司祭たちが作り上げた“虚像”です」


言葉が、静かに刺さる。


「もし信じられないのであれば……同行し、ご自身の目で確かめることもできます」


ジェシカは何も言えず、視線を落とした。


「──ここからが本題です」


ルミナスの声が、わずかに低くなる。


「アルカナンの王妃クレアと、四代厄災アン・フォリーの戦い。

そしてレゾンの作戦──」


一度、言葉を切り。


「現段階では、成功する可能性は極めて低いと考えています」

「……」


ジェシカは顔を上げる。


「……もし、それが本当なら……無理だね」

「はい。正直に言えば、ほぼ不可能です」


だが──


「フォリーを瀕死に追い込むことは、可能です」

「……どういうこと?」


ジェシカは思わず身を乗り出す。


その瞬間。

ルミナスの口元が、ほんの一瞬だけ歪んだ。

だがすぐに元に戻る。


「そのための方法を、これからお話しします」


咳払いを一つ。


静かに語り始める。


その声は、どこまでも穏やかで──どこか、逃げ場を奪うようだった。

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