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紅月のクロスリーパー   作者: ルーツ
第五章 悪戯の終末

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8. 静かな国、来たる戦火

登場人物

<ディヴァインリーパー>

ジェシカ 


教会の司祭(アンフォリーの妹)

アン・レゾン


四代厄災

悲狂のアン・フォリー

神速のレーヴ


アルカナンの親衛隊

隊長 アッシュ

副隊長 クリス

──翌朝。アルカナン宿屋。

アブソリュートの宣告まであと五日。


ジェシカはアルカナンから聖王国リベリオンへ向かうため、朝早くから準備をしていた。


「これでよし! と。いきますかー」


ドアに手を掛けて廊下を歩き、下の階にある受付へ向かうと、宿の店主がグリモアを片手に声をかけてきた。


「昨日は何かとすまなかったな」

「え? うんうん、大丈夫だったよ」


ジェシカは特に気にしていなかったが、店主は申し訳なさそうにしていた。


「あのさ、その本ずっと持ってるけど……理由聞いてもいい?」

「ああ、これか? これはグリモアと言ってな。これを読み解くと、誰でも魔法の力が芽吹くと言われているんだ」


「魔法?」

「ああ。誰しも一度くらいは憧れるだろう? 使ってみたいってさ」


店主の言葉を聞いたジェシカは、なぜそこまで集中するのか、そしてそんな理由で人々を縛りつけているクレアに怒りを覚えた。


「……ねぇ、おじさん。すごくいい人じゃない。なのに、なんで魔法なんて必要なの?」

「え……?」


「だってそうでしょ? さっき、私に対して申し訳ないと思ってたよね。それで分かったんだよ」


ジェシカの言葉に嘘はなく、真剣な目で店主を見つめる。


「あ、ああ……確かにそうだな……」

「うん! 私、この宿気に入ったよ!」


ジェシカの言葉が店主に刺さる。

そして、曇っていた瞳に光が戻るのが見えた。


「あ、あれ……何だ? あはは……やけに晴れやかな気持ちになったよ!」

「あはは、それはよかった。それじゃ私は行くね! ありがとう!」

「ああ! こちらこそありがとう。また来てくれ!」


ジェシカは店主に手を振られながら宿を出た。

店主の手に、グリモアは握られていなかった。


──────────


宿を出たジェシカはアルカナンを出るため、桟橋の方へと歩き、門番のところを通過しようとした。


「おい、昨日の姉ちゃん」

「……?」


声のする方を向くと、そこには昨日の二人のうちの一人、クリスが鋭い目つきでジェシカを見ていた。

そして、そのままこちらへ歩いてくる。


「昨日は悪かったな」

「……別に」


「あはは! そんな怒るなよ! 今日は別に、あんたをどうこうするつもりはねーしな」

「あっそ。それで、私に何か用でもあるの?」


ジェシカはクリスに対して冷たい態度を取っていた。


「おう! そうなんだよ。ぶっちゃけるとよ、あんたがクロスリーパーだろうが違おうが、俺にはどうでもいいんだ」

「……そう」


早々に話を切り上げ、歩き出そうとするジェシカ。

だがクリスは、その前に立って話を続けた。


「おい、少しだけ俺の話を聞けって!」

「……何」


クリスの口元が笑っている。


「お前、この国で武功上げたくないか?」

「武功? なんで私が」


「あはは! 俺には分かるんだよ。お前……普通じゃないよな。

だからよ、滅多にないチャンスをあんたにも分けてやろうと思ってな」

「何を言ってるのか分からないよ」


するとクリスは顎と目線で場所を示し、人目につかない場所へ移動した。


「それで?」

「おう! 驚くなよ! 今日から三日後、リベリオンとの争いが激化してな。今この時も国境付近で戦ってるんだが、とんでもねぇ大戦になるらしい。

そこで活躍すれば、一気に名を馳せることができるって話だ!」


「……え、三日後……」

「おう、どうだよ! お前、俺たちと一緒にやらねーか?」


クリスの話を聞いたジェシカは、ふと昨日のレゾンの話と照らし合わせた。


「三日後……」

「おう、どうよ」


「……私はいい。武功とか活躍とか興味ない。私は行かなきゃいけない場所があるから」


そう言うとジェシカは踵を返し、桟橋の方へと向かっていく。


「んだよ、せっかくいい話教えてやったのによ!」


歩いていた足を止め、ジェシカはクリスの方を振り向く。

その表情はどこか儚げだった。


「死んじゃダメだよ。それじゃ……」


その一言を残し、ジェシカは歩き、アルカナンを後にした。


───────────


魔法国家アルカナンを出たジェシカは、しばらく人気のない場所まで歩き、地図を広げた。


「リベリオンはここだから……アルカナンと争っている場所は……国境付近だよね」


ジェシカはブラッディローズを使い、国境付近へと向かうのだった。

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