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紅月のクロスリーパー   作者: ルーツ
第五章 悪戯の終末

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7. 見逃された違和感

登場人物

<ディヴァインリーパー>

ジェシカ 


教会の司祭(アンフォリーの妹)

アン・レゾン


四代厄災

悲狂のアン・フォリー

神速のレーヴ


アルカナンの親衛隊

隊長 アッシュ

副隊長 クリス

──アルカナン宿屋やどや


ジェシカはブラッディローズで二人との距離きょりを一気に取り、宿へと戻って来ていた。


「ふぅー、危なかった。でも依頼いらいは受けられたし、とりあえずここでの用は終わったかな」


ジェシカは明日に向け、まずは冷えた身体からだを温めるために風呂場へ向かおうと、部屋で服を脱いでいた時だった。


宿屋の廊下ろうかから数人の足音が聞こえ、ジェシカの部屋のドアが蹴られ、勢いよく開く。


「おい! 貴様きさま何者なにものだ!!」

「俺様のナイフ捌きから逃げるとは──」


そこには、上着を脱ごうとしているジェシカの姿があった。


『え……』

「は……!?」


ジェシカは思わずベッドにある服を掴み、身体を隠して床に座り込む。


「す、すまない……」

「……な、なんですか、いきなり」


ジェシカは顔を赤らめ、下を向いている。


先ほどの二人、アッシュとクリスがジェシカの後を追って来たのは間違いなかった。

しかし今は、一人の女性の部屋に男二人が押し入ってきているような状況だ。


「ドア、閉めてもらえませんか……」

「あ、す、すまない」


そう言うとアッシュはドアを閉め、ドア越しに話しかけた。


「さっきの行動はすまなかった……だが、君はさっき──屋根やねを伝い、この宿に入ったのを私は確認したのだが……」


アッシュが話しているうちに、ジェシカはアリスからもらった薬を飲み、先ほどとは違うローブを身にまとい、ドアを開けた。


そこにはやはり、さっきの二人が立っていた。


「あのー、何を言っているのか分からないのですが……」


ジェシカの身体つき、顔、その一つ一つが美しく、思わず見惚れてしまうアッシュ。

その後ろからクリスが口を開く。


「おい! ふざけんな!! お前だってことは分かってんだよ!」


アッシュを押しのけ、クリスが前に出てドアに手を掛けて開けた。

さらにジェシカのフードに手を掛け、顔をあらわにした。


「女!! お前クロスリーパーだろ!!」

「…………」


露わになったジェシカの素顔すがおを見たクリスは目を丸くした。

そこにいたのは、黒目の黒髪、二十歳前後の女性で、素肌がはだけ、胸の谷間がクリスの視界に入ったからだ。


「お、お前……クロスリーパーじゃない……?」

「あの……怖いので……もうよろしいでしょうか……」


おびえるジェシカを見て、アッシュが前にいるクリスの肩に手を掛けて話す。


「すまなかった。軽率けいそつな行動を取ってしまい、申し訳ない。これで失礼させてもらう」


そう言うと二人は部屋から出ていき、ジェシカはドアを閉め、すぐに目を閉じて二人の足音に集中し、宿から出ていくのを確認した。


「……危なかったぁー」


ジェシカはその場に座り込み、アリスに感謝していた。


「やっぱブラッディローズはまずかったかな……」


反省はするが、ジェシカには時間がない。

とりあえず冷えた身体を風呂で温め、明日に向け就寝しゅうしんすることにした。


─────────────


一方いっぽう、アッシュとクリス。


「おいアッシュ! なんで引き下がるんだよ!」

「……なあ、クリス。お前、クロスリーパーを見たことあるのか?」


「な、何だよいきなり」

「どうなんだ」


アッシュの言葉に、クリスは口ごもる。


「……ねーよ」

「そうか。なら、なぜさっきの女がクロスリーパーだと思った」


「そりゃ、いきなりあかい花びらが目の前に現れたら、誰だってそう思うだろ」

「確かにな、これは何か意味があるのかもしれないな」


アッシュは夜道よみちを歩きながら、思考を巡らせていた。


「どういう意味だよ」

「さあな。ただ、次の三日月みかづきまであと今日を含めると四日後だ。それに聖王国リベリオンに向けた大戦たいせんもすぐそこだ」


「ああ、そうだな! 俺はこの戦いで武功ぶこうを挙げるつもりだぜ!」

「ははっ、そうか」


「ただ……なぜこのタイミングでこのアルカナンにクロスリーパーが来たのか……それだけがに落ちない」


アッシュの言葉にクリスは気楽に答えた。


「気にし過ぎなんじゃねーの? それにこっち側にいるってことは、味方してくれるかもしれねーだろ」

「ふっ、お前と話すと気が抜けるよ」


「あはは! 別にいいだろ!」

「そうだな。よし、宿舎しゅくしゃに戻るぞ」


アッシュの小さな違和感いわかんは四日後、想像もしないほどに膨れ上がり、やがて的中することになる。

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