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第13話:あなたを知りたい

 夕食後は全員、娯楽室に移った。

 自分達が通う高校の教室の2倍以上の広さがあり、肌触りが良い上質の絨毯(カーペット)が敷かれ、色々なクッションが置かれている。そして、様々な娯楽に対応出来る準備がされていた。また、欲しい物があれば待機している、螺子頭付きメイド達が対応してくれた。

 別腹とばかりに持ち寄ったお菓子を食べながら、他愛の無い談笑(おしゃべり)を楽しむ子達。

 持参した映画のブルーレイを、壁に設置している100インチのテレビで観賞する子達。

 自前のスマートフォンで、流行っているオンラインゲームに興じる子達。

 『ごきぶりポーカー』や『ディクシット』等のボードゲームに興じる子達。

 占いが得意な子に、自身の運勢——主に恋愛運——を見て貰っている子達。

 ライブ配信中の5人組アイドルを、スマートフォンの画面越しに応援している子達。

 壁一面の本棚に置かれている漫画や雑誌等を読んでいる子達。

 ――等々、思い思いに面白楽しく過ごしている。

 そして、鉄子は色々なポテトチップスを、棒付きチョコを咥えた章子は色々なチョコレートを持ち込んでいた。

 メイドにジャスミンティーとアールグレイを頼んで腰を下ろした時、浮足立った美王と、その様子を眺めてニヤニヤしているクロエがやってきた。勿論、美王の取り巻き達も一緒だ。

 先程のすき焼きパーティーの最中、食後にアンリの動画とポォを見せると約束したのだ。

 先ず、美王のスマートフォンに動画や画像を送る。彼女はすぐに再生すると、初めて見る地球外知的生命体に眼を見開いて感嘆が何度も洩れ出た。

 観終わった美王は興奮した口調で、アンリ達の美麗さを褒め称えた。鉄子にとって自身が褒められた様に嬉しかった。

 続いてテーブルの上にポォを置くと、美王は更に興奮した。

 「これが異星文明の産物! 綺麗な色合いだね。しかも、本物みたいに精巧に造られているし」

 ポォへの褒め言葉も嬉しかった。

 「触って良いかな?」

 「どうぞ。ポォ、お願いだから鳴かないでね」

 鉄子がポォに手を合わせて頼む。それを聞き入れたのか、美王が掌に乗せても先日みたいに警告音を発しなかった。

 「遂に……遂に、私は……」

 感激の余り言葉に詰まり、眼が潤んでいる。いつものクールさとは掛け離れた言動に取り巻き達は驚きを隠せず、クロエはニヤニヤしっぱなしだった。

 「美王子とは思えない反応だけど、逆に言えばUFO王子らしい反応だな。ま、念願叶って良かったなぁ」

 クロエの声が全然聞こえていない様子の美王は、あらゆる方向からポゥの全身を念入りに眺め尽くした。そして、そっとテーブルの上に置き、

 「大変貴重な物を触らせてくれてありがとう。本当にありがとう」

 鉄子とポォに深々と頭を下げると、応える様にポォが「リィィィン」と鳴いた。

 その時、頼んでいた飲み物をメイドが持ってきた。受け取ったティーカップと、章子が用意したチョコレートをポォに差し出す。その際、受け皿に紅茶を注いだ。

 「さぁ、遠慮無く食べて飲んで」

 ポォはすぐさまアールグレイを飲み干すと、目の前に置かれたチョコレートの山に歩み寄る。箱から出したり、包装紙を取り除いたチョコレートが広げた紙ナプキンの上に並べられていた。

 「ミルク、ビター、ホワイト、イチゴ味、抹茶味、高濃度カカオ――色んなチョコを持ってきたから好きなのを好きなだけ食べてよ」

 章子が勧めると、美王の取り巻き達も、

 「クッキー持ってきたんだけど食べるかな?」

 「《藍庵(あおいあん)》の羽二重もあるよ」

 「シベリアはどう?」

 色々なお菓子がポォの前に置かれた。けれども、チョコレート以外には匂いを嗅ぐ仕草を見せるが、すぐに離れる。

 「やっぱり、チョコ以外はダメかぁ」

 ポテトチップス派の鉄子は残念そうに呟いた。当然、持参したどれもが選ばれていない。

「意外だ。チョコミントを食べてる!」

 驚く鉄子の横で、章子はポォが食べているのと同じチョコレートを口に放り込み、

 「やっぱり、チョコ最高! いっぱい食べてね心の友よ~」

 その時、鉄子は思い出した。

 「そう言えば、アンリを背負った時、ほんの少しだけチョコミントの香りがした」

 「えぇッ!? それって体臭がチョコミントなの?」

 「多分。チョコミントの香水を振り掛けてなければ」

 「だから、チョコミントが好きなのかな?」

 「その情報も、この実験も、非常に興味深いな」

 急に詳子が割って入ってきた。驚く鉄子と章子に対して、美王は表情を変えずに「何処にいた?」と訊いた。

 詳子が答える前に、クロエが意味ありげにニヤリと笑み、

 「そりゃあ、大好きなショタ神様の所っしょ」(敵が来たんだろ?)

 「まぁね」

 2人の視線が合う。

 「詳しく教えろよ」(それでどうなった?)

 「さて、そんな事よりも、だ」(その話は後で)

 詳子は鉄子達に向かって言った。

 「女子高生らしく恋バナをしないか?」

 「はいぃッ!?」

 「んンッ!?」

 「おぉっ!?」

 「ぶふゥッッッ!?」

 四者四様に驚愕の声が洩れ出た。

 「うわッ、汚ッ!」

 「酷いですよ、クロっち先輩」

 「上も下も緩い口だな」

 「わりぃ、わりぃ。……ヤブリーゼントは後でシメる!」

 クロエは鉄子と章子に謝り、美王を睨み付けてから、吹き出してしまったジンジャーエールを傍にあったティッシュペーパーで拭き取った。そして、

 「ショタ子が恋バナぁ? 人体実験のし過ぎで頭がショートしたか?」

 「場所を弁えず、誰彼見境無く口説くぐらい色ボケしている君程じゃない」

 「ンだとォ!」

 「はいはい、落ち着け落ち着け」

 今度は詳子を睨み付けるクロエを美王が(なだ)める。

 それを意に介さず、詳子は話を続けた。

 「唐突で申し訳ないが、テッコ君に好きな人はいるのかな?」

 質問と言うより尋問みたいな訊き方だった。しかし、鉄子だけは気付かず素直に答える。

 「本当に急ですね。まぁ、全然いませんけど」

 「では、誰か気になる人は?」

 「特にいませんよ」

 「よく行動を共にしている疋島先輩はどうかな?」

 (((どストイレートだな!)))

 章子とクロエと美王が心の中でツッコミを入れる。

 けれども、鉄子は全く気付いていない様子で答えた。

 「部長ですか? ほぼ毎日部室で会って、週一で図書室に行くぐらいですよ。それ以外で一緒って事は無いです」

 「その時はどんな話を?」

 「最近はあのロボットやポォについてが多いですけど」

 「それ以外は?」

 「図書室で借りた本の感想とか、昆虫の事とか、部長がやってるネットゲームの話ですね。今日プレイした『スティールメイデン』や『タロスマキア』とか。どっちも週間ランキングで上位に入った、って喜んでましたよ」

 「他には?」

 「他ですか? 他は……部長は辛いのが苦手でカレーも甘口しか食べられない、って話もしました。『私は麻婆豆腐が好きで、ほぼ毎日食べてます』って言うと、何だか残念そうでした」

 「食の嗜好は不一致か。――そう言えば、部長からルーペとブローチを贈られたね」

 「はい。あれはどっちも助かりました。特にブローチは便利ですね。ポォをポケットに入れると角や足が引っ掛かるし、かと言って、ずっと肩に止まらせておくと落ちそうだし」

 「どうしてプレゼントされたと思う?」

 「ルーペは無かったら小さな虫の細かい所が見えにくいし、ブローチもあれば掴まりやすいから、って考えてでしょうか? 他に理由なんてあります?」

 (((結構鈍感だな!)))

 章子とクロエと美王は再びツッコミを入れる。

 「つまり、部長として後輩の部員が困っている事を解決した、と?」

 「そうだと思います。良い先輩ですね」

 (ここまでしてもイイ人止まりかぁ)

 (これは脈無し。残念ながら御臨終です)

 (こりゃ攻略ムリゲーっしょ)

 章子と美王とクロエは電馬と接点は無いものの、可哀想に思えてきた。

 「ところで、私を含めた部員達は君を綽名で呼ぶのに、部長だけ名字で呼ぶ理由を知っているかな?」

 「……あぁっ! そう言われてみれば……」

 (((気付いてなかったのか!? 鈍感(にぶ)過ぎるだろ!)))

 「……う~ん、分からないですね」

 「部長は綽名がある他の部員には綽名で読んでいるのだが」

 「そう言えばそうですよね。でも、どうしてかなぁ?」

 (部員じゃあないあたしでも分かる。綽名がほぼ下の名前だから、呼ぶのが照れ臭いんだよォッ!)

 (それだけアンタにベタ惚れってコトっしょ!)

 (どうして今迄疑問に思わなかったんだ?)

 章子とクロエと美王は真相を言いたくて言いたくて内心で身悶えしている。

 「ここで考えても分からないから、今度部長に訊いてみます」

 「「「それはやめとけッ!!」」」

 「えっ!? は!? ど、どうして?」

 章子とクロエと美王から一斉に止められて驚く鉄子。

 「「「とにかく、それはやめとけッ!!」」」

 3人に気圧された鉄子は「分かりましたから」と何度も頷く。

 その直後、何か思い付いた表情を浮かべる。

 「……もしかして、最初に恋バナって言ったのは……」

 (((やっと気付いたかッ!)))

 鉄子は詳子に向かって、

 「ショタ子先輩って、実は部長の事が好きだったんですね!」

 「「「ちっがァァァうッッッ!!」」」

 遂に3人が叫んだ。大声に驚いた周囲の女子達が一斉にこちらに注目する。

 「そうじゃあないでしょうがぁ! このバカチンがッ!」

 「ショタ子がショタ子って呼ばれてる理由を知らねーの?」

 「君はどれだけ鈍いんだ?」

 詰め寄る3人に鉄子は物怖じせず反論した。

 「だって、やたら部長の事を訊いてくるから」

 「そうだけど、そうじゃあなくって……」

 何と説明すれば良いのか分からない章子は頭を抱える。そんな彼女にクロエが、

 「アンタ等って普段は恋バナしねーの?」

 「漫画やアニメやゲームのキャラの話なら――」

 「そうじゃなくて、リアルのは?」

 美王が訊くと章子は首を横に振った。

 「テッコがリアルで夢中になってるのは虫だけだし、あたしはオタクだから現実(リアル)の恋バナは全然無いですね。それに、どっちも喪女だし……とほほ」

 落ち込む章子に対し、返答に困った美王に代わってクロエが訊く。

 「好きな漫画がドラマや映画になった時、キャラを演じてる俳優の話とかしねーの?」

 「あたしは三次元(リアル)イケメンでもイケるんですが、テッコはドラマ観ないから(ほとん)どしませんね。時々、あたしからニチアサの話をするぐらいです」

 今度はクロエが返答に困った。その横で美王は悲しそうに、

 「それはともかく、報われてないな、疋島先輩」

 成り行きを見守っていた周囲にいる女子達も電馬と接点は全く無いが、誰もが可哀想に思う様になっていた。鉄子と詳子を除く数少ない異端科学部の女子部員達も「やっぱりなぁ~」と諦めモードだ。

 その時、唐突に何処からかロマンティックな雰囲気の曲調だが少し物悲しい音色が流れてきた。

 耳にした章子が驚きの声を上げる。

 「これはバイオリン!? そして、この曲はあの――」

 「まさか、放課後のパンパカパーン!?」

 「いや、パガニーニです」

 間違ったクロエを章子が訂正する。

 「いや、パガニーニですって」

 メイド達を除き、この場にいる誰もが騒然となった。噂の存在がこの船で演奏するとは予想だにしていなかった。

 曲は船内放送用のスピーカーから流れ出ている。

 「天道、これは!?」

 美王が尋ねると、笑みを浮かべた詳子は、

 「サプライズゲストだよ」

 美王が続けて質問する前にクロエが割って入った。

 「もしかして、アイツと知り合いか?」

 「友人だよ」

 「じゃあ、正体を知ってる?」

 「あぁ、友人だからね。先に断っておくが、正体を教える気は無い」

 「何でだよ?」

 「パガニーニたっての希望だから。自身の演奏は聴いて欲しいが、自身には興味を持って欲しくない。当然、詮索もされたくないそうだ」

 「手前勝手な言い分だな」

 「どの口が言う。一番自分勝手我儘放題なのに」

 「うっせー! ヤブリーゼントは黙ってろ」

 「黙れっ、カミキリムシ頭」

 睨み合うクロエと美王。それを気にせず詳子は話を続ける。

 「あの子はコミュ障だけどプロ級の腕前を持て余している天才なのでね」

 「だから、屋上で演奏するも人を寄せ付けないのだな」

 美王が納得した様に呟いた。その直後、

 「……もしかして、あそこに登ろうとすると頭痛に襲われる仕組みを造ったのは君か?」

 その質問に詳子は頷いた。するとクロエが、

 「やっぱり! とうとう白状しやがった」

 そこで美王が推理を披露する。

 「その仕組みは超音波放射装置で、何処か見えない所に設置されている?」

 「正解。君なら見破っていると思っていたよ」

 「それじゃあ『マルサの女2』じゃん!」

 章子が言った直後、その映画のテーマ曲が聞こえてきた。

 驚いて横を見ると、鉄子が愛用のオカリナで奏でている。

 「持ってきていて良かった。前からやってみたかった事があるの」

 鉄子はそう言うと、パガニーニが演奏している曲に合わせて奏で始めた。

 「テッコ、あの曲吹けるのッ!?」

 驚く章子に詳子が、

 「『遊星より愛をこめて』――名曲ではあるが、かなりマイナーだ。しかも、作曲者不明。だが、色々調べて暗譜出来る程練習したのだろう」

 ヴァイオリンとオカリナの合奏に周囲からどよめきが上がった。けれども、やがて静まり返った。

 更に、ポォが曲に合わせて「リィィィン、リィィィン」と鳴き始めた。

 弦楽器と管楽器の音色に鳴き声が加わって混然一体となり、この場にいる人々の鼓膜と心を震わせた。中には感動の余り涙を流している子も少なくない。

 夜空から無数の星々が降り注いでくる様な名曲は、静かな余韻を残して止まった。

 演奏が終わった後も誰一人として声を発せなかったし動けなかった。

 けれども、詳子が拍手をしたのを切っ掛けにその数が徐々に増え、遂に全員が称賛と歓喜を込めて手を叩いていた。

 すぐ横で聴いていた章子が興奮した面持ちで、

 「すごいよ! テッコさん。ここまで上手いって思わなかった」

 「ここでマサルさん入れるか!? 流石、漫研」

 「それはともかく、オカリナのプロになれるんじゃない?」

 「大袈裟だよ。でも、ありがとう」

 「ポォも上手だったし」

 「まさか、こんな事が出来るなんてね」

 それから章子だけでなく他の子達からも褒められ、美王もクロエも感心していた。

 「異星人を聞き惚れさせただけはあるね。素晴らしかった」

 「冗談抜きで、あのポルチーニに負けてなかった」

 「だから、パガニーニですよ、クロっち先輩」

 「分かってるって。――で、ヤツは何処にいる? 放送室か?」

 章子にツッコミを入れられたクロエが尋ねると詳子は、

 「おっと、行くのは許さないよ。それに警護を付けているので近付くのは容易ではない。君の事だから恐らく勝てるだろうが、無駄な体力を消耗したくないだろう?」

 「そこまでして正体を隠すってどーゆーコト!? Adoレベルじゃん」

 「先程も説明したが、パガニーニは他者との接触を望まない。静かで穏やかな生活を維持するには、こうするしかないんだ」

 「演奏は聴かせたいのに?」

 「だが、それで君達は迷惑を被っているかな?」

 「……いや、ない」

 「だろう。こちらから手を出さない限り被害は発生しない。向こうは好きなだけ演奏出来て、こちらは素晴らしい演奏を堪能出来る。誰も損をしていないのに、その均衡を壊すつもりかね?」

 「わーった、わーった。もうしない」

 クロエは詮索を諦めた。

 詳子は鉄子に話し掛けた。

 「実は、船内のスピーカーは全て双方向になっていて、こちらの音声も向こうに聞こえるのだよ。それに、こちらの様子も向こうに見えている」

 「つまり、私とポォの演奏がパガニーニに聞こえていたし、見えていたのですね!」

 「だから、息が合ったセッションが出来たのかぁ」

 章子が納得した時、詳子のスマートフォンが鳴ってドラララインの着信を伝えた。

 「早速、パガニーニからだ。――『楽しかった。ありがとう。また今度』だって」

 「スゴイ、スゴイ! プロレベルの人に褒められるなんて!」

 「……うん。とっても嬉しい!!」

 章子と鉄子は手を取り合って喜んだ。

 周囲からも「良かったね」「また聴かせて」等と言われ、鉄子は感激の余り涙が溢れ出そうになった。

     ~ ☆ ~

 演奏会の後は、玉虫色のロボットの話で盛り上がった。

 その際、章子が呟いた。

 「虫の事を話す時みたく夢中になって喋ってる」

 「いっつもこんな感じ?」

 クロエが訊くと、

 「う~ん。虫以外の話でここまで興奮してるのは珍しいですね。それに、虫の時よりテンションが高い気がします」

 「そーなんだ。普段のテッコは知らないけど、あーしには好きぴのコト話してるみたく聞こえる。この顔はカレシのコト話してる女子の顔だな」

 それを聞いた鉄子は、

 「彼氏って、そんな……」

 と、言葉に詰まった。頬が赤くなっている。

 「もしかして、照れてるの?」

 「ま、まさかッ!」

 章子の言葉を否定したが、耳まで赤くなっていた。

     ~ ☆ ~

 22時になる前に、鉄子と章子はベッドに入っていた。

 参加者の半数近くは遅くまで楽しむつもりらしい。けれども、2人は翌日、姫花園最強万能科学研究所へ行くので夜更かしは避けた。

 尚、章子は初対面の別グループとBL談義で盛り上がり、当初は「今が楽しかったら、明日は寝不足でもいいや」と夜更かしを楽しむ気満々だった。しかし、

 「朝寝坊の常習犯が何言ってんの!」

 と、鉄子に引きずられる様に自室に戻らされた。

 ところが、眠気を催してきた頃に部屋の外から微かにヴァイオリンの音色が流れてきた。それは魅惑的だが、少し怖い印象を与える曲だった。

 「ねぇ、これってもしかして?」

 章子が訊くと、鉄子はやはり知っていた。

 「これは『禁じられた言葉』だね。作曲したのは『遊星より愛をこめて』と同じ人らしいよ」

 「またパガニーニが弾いてるのかな?」

 「多分ね。これも放課後に聞いた事あるし」

 「ねぇ、気にならない?」

 「確かに、こんな夜中に聞こえてくると気になる」

 「そうじゃあなくて、正体が」

 「パガニーニの? そりゃあ、気にならないって言ったら嘘になるけど、でも……」

 「じゃあ、行こう!」

 「行こう、って何処に? まさか――」

 「うん、そのまさか。パガニーニの正体を突き止めに行こう」

 「そんな『イタリア料理を食べに行こう』みたいなノリで言っても駄目だって。ショタ子先輩が禁止してたし」

 「そうだけど、どうしても気になるじゃん!」

 ベッドから飛び起きた章子は、スリッパを履いてドアに向かった。

 「テッコも行こうよ~」

 「行かないよ。護衛もいるって言うし、何よりパガニーニが嫌がってるから、そんな事したくない」

 「……分かった。しょうがないなぁ」

 納得してくれた、と鉄子は胸を撫で下ろしたが、章子は予想を裏切ってきた。

 「じゃあ、1人で探してくる。ネタの匂いがプンプンしてるのに無視なんて出来る訳ないじゃん!」

 そう言い残して部屋を出てから30分以上経過したが帰ってこない。

 (……遅い。見付けて色々質問しまくってるのかな? それとも、護衛に捕まってショタ子先輩に説教されてる?)

 しかし、パガニーニの演奏はまだ続いている。

 謎の演奏者の正体よりも章子の安否が気になる鉄子は、旋律の源流を求めて部屋を出た。その後をポォが追う。

 ところが、廊下を進んでいる途中で曲がパッタリと途絶えた。

 (止まった。もう寝たのかな?)

 そう思いつつ歩を進める。しばらく歩き回ったが、章子どころか誰にも会わなかった。

 一応、娯楽室にも行ってみたが、まだ遊んでいるメンバーの中に章子はいなかった。

 (訊いてみたけど、誰も見ていない。そして、誰もパガニーニを探しに行っていない。好奇心旺盛なのはショコラだけかぁ)

 くたびれた鉄子は探し出すのを諦めつつあった。

 (演奏は終わったし、もしかすると入れ違いに帰ってるかも)

 そう考えて自室に戻ろうとした。ところが、

 (あれ? ここ何処?)

 気付くと見覚えの無い廊下に立っていた。

 (まさか、間違えた?)

 正しい帰り道が分からず立ち往生していると、違う楽器の音色が耳に入ってきた。

 (今度は何!? これって、琴だよね?)

 鉄子は知らないが、この曲は『六段の調べ』だった。

 (これはパガニーニとは関係無いよね?)

 曲が流れてくる方向へ恐る恐る歩を進める。すると、

 (……ここは!?)

 背後は歩いてきた船内。

 けれども、目の前には鳥居が立っていて、石畳の参道が小さな本殿に向かって真っすぐ伸びている。

 そして、見上げると満天の星。しかし、冷たい夜風は吹き込んでいない。つまり、大浴場と同じく透明度の高い強化ガラスのドームに覆われているのだろう。

 (神社、だよねぇ?)

 鉄子は鳥居を(くぐ)ると、以前森華から教わったやり方を思い出しながら手水舎(ちょうずや)にて口と両手を清めてから本殿に向かった。

 拝殿の前に賽銭箱は無い。扉は開かれており、中には3段の祭壇が設けられていた。

 最上段には大きな宝鏡、中段にはソフトボール大で藍色の宝玉が安置されていた。更に、最下段には鞘に納められた宝剣が7本も並べられている。

 (どれも御神体なのかな? でも、誰を(まつ)ってるんだろう?)

 ヒントになる様な物は見られなかった。

 (誰だか分からないけど、挨拶はしておこうかな)

 鉄子は鈴を鳴らして柏手を打つと頭を垂れて拝礼した。

 (初めまして。手塚鉄子と申します。天道先輩にはいつも御世話になっています。どなたか存じませんが、宜しくお願いします)

 祈願せず、挨拶だけに留めた。

(……ん? この裏から聞こえてくる)

 琴の音色がまだ流れてくるので、本殿に沿って裏に回った。

 すると、広大な庭があった。日本史の教科書に載っている寝殿造りの庭園そのものだ。土塀ではなく森林が包囲している。その池の真ん中には平舞台が建っており、外観が和風な木造の橋と繋がっていた。

 鉄子は予想外の光景に混乱したが、やがて大浴場で温泉が再現されていたのと同様、船内に日本庭園を再現しているのだと理解した。

 よく見ると、平舞台の真ん中で、琴――正しくは(そう)だが、鉄子は知らない――を奏でるメイドの姿があった。しかも、彼女の顔は薄紅色(うすくれないいろ)のフェイスベールの覆い隠されていて風貌が分からない。

 (何でメイドなの? せめて巫女の姿で弾けばいいのに)

 そう思いつつ、目の前にある橋を渡り始めた。

 歩を進めると、2枚の緋毛氈(ひもうせん)が敷かれているのが見え、片方には演奏するメイド。もう片方には茶釜や茶碗等が置かれ、正座した数人が並んでいた。

 やがて、そのうちの1人――詳子が鉄子に気付いて手招きした。

 「ようこそ、星見の茶会へ。よくここが分かったね」

 「琴のメロディーが聞こえてきたので。ところで、これは何をされてるんですか?」

 歩み寄って尋ねてきた鉄子に、

 「名前通り、街中では見えない星空を眺めながら抹茶を飲む会だよ。良ければ君もどうぞ」

 そう誘ってきた詳子の隣にはクロエと美王と章子が並んで座っている。全員、風呂上がりの衣装のままだ。日本庭園に囲まれた平舞台でメイドが筝を爪弾き、先輩達がランジェリー姿で正座しているのはシュールな光景だった。

 「さっさとやろうぜ。正座がキツいんだよ。あぁ~ッ、もうガマンできねー」

 クロエはとうとう足を崩して胡坐をかいた。

 「しょうがないヤツだな」

 美王が呆れるが、

 「楽にしてくれて構わない。堅苦しい茶会ではないから」

 詳子が許すと、クロエは「ほらな」と言って笑い、美王は苦笑した。

 「先輩達はどうしてここに?」

 鉄子が尋ねると答えたのは、しかめ面になったクロエだった。

 「ショタ子に頼みに来たんだ。部屋を変えて欲しい、って」

 そして美王に人差し指を突き付けて、

 「何でコイツと同じ部屋なんだよぉ?」

 「それはこっちの科白だ!」

 美王も眉をひそめ、クロエを睨み返している。

 「駄目だ。変えない」

 詳子は取り付く島も無い。

 「君は同室者が好みのタイプだったら手を出す。絶対に出す。出さない訳が無い」

 「何度も言い切るなよぉ~」

 「被害を未然に防ぐ為にも、好みのタイプから最も掛け離れた蜂須賀と同室にした」

 「個室があるだろ。そこで大人しく1人で寝るから――」

 「それだと、気に入った女子を口説いて部屋に連れ込んで肉欲の限りを尽くす。快楽を(むさぼ)り尽くす。体力が尽きる迄喰らい尽くす」

 「だから、何度も言い切るなよぉ~」

 「つまり、私は監視役だな。種牛が盛り始めたら容赦無く抑える為の」

 美王がうんざりした表情で言うと、

 「御明察。暴れ牛の鼻輪を掴んで止められるのは、私を除けば君しかいない。隣で眼を光らせていれば、私や他の子達に夜這いする余裕もあるまい」

 「ひでー言われようだ」

 そう言って肩を落としたクロエを見た鉄子は、

 (どうしてだろう? 全然可哀想に見えない。むしろ、自業自得って感じがする)

 出会って数時間しか経っていないのに、その間に見せ付けられた言動により、鉄子の中でクロエの評価は下がりまくっていた。ただし、嫌悪感や軽蔑の念は全く無い。

 まだ食い下がるも軽くあしらわれるクロエを横目に鉄子は章子の隣に座る。視線を彼女の胸元に落とすと「めっちゃ反省中!! 好奇心は漫画家をもコロリンしちゃう」と可愛い筆跡で書かれたプレートを首から下げていた。

 「どうしたの、それ!?」

 すると、章子は堰を切った様に、

 「聞いてよぉ~。パガニーニを探してると、メイドさんと擦れ違ったんだ。そしたら、こっちに戻ってきていきなりお姫様抱っこされてダッシュでここに連れてこられた~」

 「ショコラをお姫様抱っこした、って!?」

 メガネジャイ子と綽名されるだけあって、何重にもオブラートに包んで言えばぽっちゃり女子である。そんな彼女を軽々抱きかかえ、しかも走って運ぶなんて信じられなかった。

 「で、ショタ子先輩達がいて取り調べされたんだけど、面白がったクロっち先輩があたしを運んできたメイドさんに材料と道具を持ってきて貰って、作ったプレートを首に……」

 「だから、やめよう、って言ったのに」

 「だよね。テッコが来る前に罰ゲームさせられてた。マジで後悔してる」

 「罰ゲーム! それってどんな?」

 「……それは言えない」

 「意外だろうが、こう見えて私は言葉攻めが得意でね」

 詳子は心なしか得意げに見えた。

 すると、クロエがテンション低めに、

 「まさか、ショタ子にあんな特技があったなんて。正直、ドン引きした」

 「そんなにえげつない事を!?」

 「コロリンした、としか言えねー」

 美王は章子を気の毒そうに見ながら、

 「そうだな。まるで隣室の患者を言葉だけで自逝(じせい)に追い込んだレクター博士みたいだったよ、自業自得とはいえ御愁傷様」

 と、医師が入院患者の家族に「御臨終です」と伝える様に言った。

 その時、茶釜の前に座っている人物が視界に入り、ようやくその存在に気付いた。

 10歳ぐらいと思しき少年で、痩せ気味にして小柄、陽の光を浴びた事が一度も無いと思われる程に色白だ。

 だが、その歳にして藍染めの小袖と袴、そして袖無し羽織を悠然と着こなしていた。髪を後頭部で纏めているが、ポニーテールと言うより茶筅髷に見える。そして、詳子と同じデザインだが藍色のドライビンググラブを填めていた。しかも、真っ黒なバイザー付きヘッドフォンを装着して両眼と両耳、そして幼さが残る顔の上半分を覆い隠していた。

 これだけ個性的な外見にも関わらず存在感が薄く、今にも大気に溶け込んで消えてしまいそうな印象を受けた。そして、人によっては侮り、舐めた態度を取ってしまう風貌と雰囲気だった。

 「えぇと、この子は?」

 詳子が口を開く前にクロエが答えた。

 「聞いて驚け、見てメロれ。この子があのショタ神様だ!」

 「あのリアル座敷童子のッ!? 本当にいたんですかッ!? それにしては和風サイバーパンクですね」

 詳子が説明をする。

 「座敷童子は比喩に過ぎない。だが、そう呼ばれるぐらい幸運を引き寄せる能力を持っている」

 「つまり、ガチで滅茶苦茶ツイてる人ですか?」

 「まぁね。名前は天道祥太郎(しょうたろう)

 詳子が紹介すると彼が頭を下げたので鉄子も、

 「どうも、初めまして。ショタ子先輩と同じ異端科学部の手塚鉄子です。いつも先輩には御世話になっています。――弟さんですか?」

 「まぁ、近いかな」

 珍しく歯切れが悪い詳子にクロエが、

 「はっきり言ってやれよ。姉弟(きょうだい)プレイを楽しんでるおねショタカップルだ、って」

 「不粋だぞ」

 「おいおい、そーゆー蜂須賀もそー思ってんだろ?」

 「うぅ……済まない、天道」

 「って事は、歳下の――小学生の彼氏さんですか!?」

 「その様な関係だと思ってくれて構わない」

 また珍しく詳子の頬が少し赤く染まった。

 「これで分かっただろ。ショタ子って呼ばれてる訳が」

 「てっきり本名を少し変えただけだと思ってました」 

 「違う違う。性癖のショタコンから――」

 「天牛山ッ!」

 これまた珍しく語気が強い。

 「おっかね~。これ以上言うと科学的に消されるから黙るわ」

 クロエはおどけた仕草で自らの口を両手で塞いだ。

 鉄子は一切触れられなかったバイザー付きヘッドフォンが気になった。

 (あんな物を着けてるなんて……理由を訊きたい。でも、何か事情があるかもしれないし)

 クロエを黙らせた詳子は、

 「とにかく、星空が綺麗に見える夜はこうして野点(のだて)(もど)きを楽しんでいる。こんな時刻なので茶菓子は控えているが」

 説明する詳子に祥太郎が無言でコバルトブルーの茶碗を差し出した。

 目の前にセクシーな衣装の女子高生が並んでいるのに、照れたり恥じらったりする様子は全く見られず、淡々と茶道の所作をこなしている。茶筅で掻き混ぜて泡立てる音が耳に心地良い。

 それに対して、鉄子と章子は初めて茶会に緊張していた。作法を全く知らないので、詳子達の動作を観察して憶えようとするもよく分からなかった。

 「おいおい、何でこんなのを渡すんだよ?」

 クロエが指し示した真っ黒な茶碗は大きく歪み、底は正円なのに上から見ると(いびつ)な台形で側面が凹んでいた。持つのも口を付けるのも難しい形状だ。

 「それは沓茶碗(くつぢゃわん)と云う。趣があるだろう」

 「オモムキなんかどーでもいいって。どっから飲むんだ?」

 「それを探すのも一興だろう?」

 「いじわるクイズみたいな茶碗だな」

 「それを楽しむ名器なのだよ」

 説明する詳子に美王が訊いた。

 「織部焼(おりべやき)かな?」

 「そう、黒織部だよ」

 「何であーしにこんなのを? 蜂須賀にはフツーのを渡してるのに」

 「これの何処が普通だ?」

 そう答えた美王が受け取った茶碗は、形状こそ普通だが、鮮血を固めて造られた様な真紅のガラス製だった。

 「赤が生々し過ぎるッ!」

 クロエは驚きの声を上げ、納得した。

 「祥太郎はそれぞれをイメージした茶碗を差し出したに過ぎない」

 そう話す詳子に美王は納得し、

 「そうか。天道の茶碗は瞳や髪、そしてコバルトゥムと同じ色。私は髪の色と二つ名から。天牛山は肌の色と日頃の奇言奇行からだろうね」

 「キゲンキコウって何だよ。さりげなくディスるな!」

 クロエが言い返すと、章子が差し出された茶碗を指して、

 「あたしもなんですけどぉ~」

 受け取った茶色の沓茶碗を持て余している。それは、まるでチョコレートで造った後で熱を加えて溶かしたみたいに歪んでいた。

 「パガニーニの正体を探ろうとしたからでは?」

 「まだ罰ゲームが続いてるんですかぁーッ!?」

 美王の推測に章子は嘆いた。そして、

 「とにかく飲みますよ。えぇと、飲む前に御茶碗を回すんですよね……って、どっちに?」

 章子が迷っていると、詳子が助け舟を出した。

 「時計回りにだよ。右手で90度に2回、180度になる様に。飲み終えて返す時は反時計回りに2回」

 鉄子は教えれられた通りに回す章子を見ながら、

 「そう言えば、どうして回す決まりなんですか?」

 「茶を点てた人は茶碗の正面を客に向けて差し出す」

 「えッ!? 茶碗に正面があるんですか?」

 「一番華やかに絵付けされている部分がそうだ。客は最も綺麗な部分に口を付けるのを避ける為に回すのだよ」

 「絵や模様が無い場合は回さなくても良い?」

 「いや、その場合も回す。そして、一気に飲み干さず、2口半で飲む。尚、最後はズズッっと音を立てて飲み干す。欧米と違って下品と思われないから安心して」

 「流石、先輩。詳しいですね」

 「祥太郎の受け売りだよ」

 「へぇ~、その歳でよく知ってるんですね。凄いなぁ」

 「まぁ、そうだよなぁ。その歳で……」

 そう呟いたクロエは意味深にニヤニヤしている。隣で美王が「余計な事を言うなよ」と言わんばかりに無言の圧力を掛けていた。

 やがて鉄子の番になった。教わった作法をたどたどしくこなして茶碗を口に近付ける。すると、抹茶の芳香が鼻孔にそっと入ってきた。

 (あぁ、本物の抹茶ってこんな香りがするんだ) 

 心地良く感じながら一口飲んだ。

 「……美味しい」

 思わず感嘆が洩れ出た。

 抹茶味の御菓子や抹茶オレ等を口にした事はあるが、本物の抹茶を飲むのは初めてだった。苦いと聞いていたので、受け付けなかったらどうしよう、と心配していたが、それは杞憂に終わった。

 教わった通りに音を立てて飲み干した後、祥太郎に茶碗を返そうとした。けれども、気持ちに余裕が出てきたのか、ふとその色彩が気になった。

 「陶器ってこんな色もあるんですね。まるで、熔けたエメラルドを塗ったみたい」

 鮮やかな緑色の釉薬(ゆうやく)が塗られた茶碗をしげしげと見つめる。

 「これも織部焼だよ」

 「クロっち先輩と同じ? でも、全然違うんですね」

 「色々あって奥が深いのだよ」

 「やっと飲めたよ。ごちそーさん。今回もガチで鬼苦かった」

 クロエが茶碗を返しながら言った。

 「差し出された状態から素直に2度回せば口を付けやすかったんだな」

 「ようやく気付いたか」

 「確かに苦かったですが――」

 鉄子が感想を口にした。

 「とても美味しかったです。ただ苦いだけじゃなくて、御茶の旨味が口の中に広がって。また飲みたいです」

 「それは良かった。祥太郎も喜んでいるよ」

 彼を見ると、真っ白だった頬が少し赤く染まっていた。

 「これであーし等5人は運気爆上げだな」

 「ん? それってどういう意味です?」

 尋ねた鉄子にクロエは答えた。

 「ショタ神様が点てた御茶を飲むと幸運レベルが急上昇するんだ」

 「えっ、どうしてです?」

 「さぁ? 座敷童子だからじゃねーの」

 「説明になってないぞ、天牛山」

 「じゃあ、蜂須賀は説明出来るのかよ?」

 「確か、不思議な能力がどうとか言っていたな……」

 そこまで言って美王は詳子の顔を見た。すると、

 「2人は詳しくないからな。私が説明しよう。

  姫科研では彼が持つ特殊な力を“奇能力(きのうりょく)”と呼んでいる」

 「超能力や霊能力や異能力じゃあなくてですか?」

 章子が確認すると、詳子は頷いて、

 「そうだ。それらとは明らかに異なる特徴が幾つも見られたからね」

 「つまり、人の運を上げる力を科学的に証明しようと姫科研で研究されている最中だ、と言う訳ですね」

 鉄子が確認すると詳子は、

 「その通り。尚、方法は何でも良い。祥太郎がもてなしたり、プレゼントを贈ったり、親切にしたら、その対象者の運が上昇して良い事が起こる」

 「ガチで福の神じゃあないですかッ!?」

 興奮した章子が驚愕の声を上げた。

 「って言うより、ショタだからマジでガチの座敷童子かぁ! 比喩でも何でもない!」

 「ただし、それは相手が彼に対してあらゆるマイナスの感情を湧き上がらせていない事が絶対条件だ。

  もし、蔑んだり、侮ったり、軽んじたり等、敬意と誠意が無い言動や態度を見せると、逆に運が降下する。

  しかも、奇能力者が自らの意思で使えない」

 「それは意外と不便ですね」

 「つまり、本人の意思に反して能力が放たれる場合がある、って事ですか?」

 章子と鉄子の言葉に詳子は頷く。

 「この力は、奇能力者と対峙した者の感情や思考に必ず反応し、自動的に発動すると云う特徴があるのだよ」

 「自分をバカにする者には不幸を喰らわす、って、ますます福の神じゃん!」

 「そんな力の仕組みを科学で解き明かそうする、なんて、姫科研ってどんな研究所なんですか!?」

 鉄子の疑問にクロエが答えた。

 「イカれたヤツ等ばっかり集まった最高に、そして最悪にイカれた最強で最狂の研究所。ショタ子もその一味だ」

 「一味とは人聞きが悪いな。まるで悪党の群れだ」

 納得いかない様子の詳子にクロエが愉快そうに言った。

 「だって、そうだろ。あそこの博士達はアニメや特撮に出てくるヒーローをサポートする科学者ってタイプじゃねーし。逆に、敵の科学者みたいにいつも誰かが何か企んでるだろ。――ショタ子もな」

 「まぁ、否定はしない。……ところで、話は変わるが、テッコ君」 

 急に呼ばれて驚いた鉄子は「はいィ」と少し上擦ってしまった。

 「あのロボットと出会って以来、御家族との関係はどうかな?」

 尋ねられた鉄子は少し考えてから、

 「険悪なのは出会う前と変わりませんね」

 「ポォやあのロボットについては何と?」

 「あの屋坂博士が来た時以外、話したことありません。相変わらず私を嫌って避けているし……そう言えば、私に怯えているのは初めてかな」

 「それは父君がポォに麻痺光線を照射されたから?」

 「多分、そうでしょうね。でも、それ以外に何かあった様な雰囲気で……」

 「とにかく、君は御両親や妹君達と不仲なのは変わりないのだね?」

 「はい。私は乗り物が苦手で、向こうは鉄道好き。私は虫好きで、向こうは虫嫌い。

  幼い頃から駄目な奴、おかしい奴、気持ち悪い奴、不細工な奴、と言われ続けてきたので、例えこれまでの事を謝罪されても心は動きませんね」

 「それは、つらいな……。

  世の中には『自身と趣味や嗜好が全く合わず、自身が望んだ能力や外見を持っていない事に我が子が罪悪感を抱かないのが許せない』と思う親は少なくない。君の御両親もそうだ、と」

 「はい。理不尽ですね」

 「そうだ。理不尽以外の何者でもない。だが、それが分からないのに親になってしまった者が多い。

  子供は誰一人として受精卵や胎児の時に『産んでくれ』と両親に頼んでいない。同時に、全ての親は自分達の都合や欲望のみ優先して我が子を産んだ。しかも、天国でも楽園でもない、あらゆる苦痛が存在するこの世界にだ。

  ならば、自身が望んでいた能力・外見・性別・嗜好等を持っていない子供だったとしても、理想通りの子供だった場合と同等同質の接し方をしなければならない。決して一瞬でも、僅かでもマイナスの感情を湧き上がらせるべきではない。ましてや、口が裂けても『こんな筈じゃなかった』『産むんじゃなかった』『子ガチャがハズれた』等と言ってはいけない。

  そもそも、能力や外見は両親から遺伝するのだから、それらが気に入らないと言うのは間違っている。望まない結果になる様な“素材”を提供したのはそちらである、と。

  だから、君が両親に対して負い目を感じ、罪悪感を抱き、自身を否定したり責めたりする必要も義務も無い。彼等がどんなに責め立ててこようとも、君は君自身を肯定し、自らが望む様に生きれば良いんだ」

 鉄子はしばらく黙り込んでいたが、やがてゆっくりと口を開いた。

 「……大伯母も同じ事を言っていました」

 彼女の両眼は潤んでいる。

 「初めて森華の森へキャンプに連れて行ってくれた日の夜、焚き火の前でそう話して励ましてくれたんです。もしかして、大伯母と会った事があるんですか?」

 「私が大学で災害救助用のロボットを研究開発していた時、手塚教授に協力を依頼した事がある」

 「ロボットを造るのに昆虫学者の協力?」

 章子が思わず呟くと鉄子が、

 「虫の生態や体の構造が科学技術に応用される場合が多いんだよ」

 「テッコ君の言う通り。被災地にて瓦礫の山の中にはムカデ型ロボット、水上にはアメンボ型ロボットを送り込むのが最適なのでね。他にも様々な助言や助力を戴いたよ」

 「災害救助用ロボットの開発に関わった話は聞いた事がありますが、まさかそれがショタ子先輩の研究だったとは知りませんでした」

 「私も、君が入部した時は名字が同じなので、もしや、と思ったが、虫好きとキャンプをする場所を聞いて確信したよ。

  ――さて、私がさっき言った内容は、両親の期待通りの成果を出せなくて責められ、悩み苦しんでいたと時に手塚教授が話してくれた事なんだ。

  どうやら、私達は同じ人から同じ言葉で励まして貰っていたのだね」

 鉄子は頷くと涙が(こぼ)れた。

 自らの手で拭う鉄子に、詳子は単刀直入に尋ねた。

 「話は変わるが、君はあのロボットの事が好きなのだろう?」

 思わぬ言葉に鉄子はかなり驚いた。まだ自覚してなかったらしい。

 「あのロボットを好き!? 私が!?」

 キョトンとしている鉄子に章子が、

 「あたしも分かってたよ。だって、虫の話をしてる時以上の熱量であのロボットの話をする様になったよね。まるでラブコメアニメのヒロインみたいだった。今はBL熱もあのロボットと出会う前程じゃあないし。それに、スマホの待ち受けだって前はタマムシだったのに、今はあのロボットじゃん。

  今迄で一番、言ってる事もやってる事も女の子らしいよ。

  あと、脚に抱き付いていたのは言い訳出来ないからね」

 「うぅっ……でも、ロボットに――それも巨大ロボットに恋するなんておかしくない?」

 「オブジェクト・セクシュアリティー」

 詳子が静かな口調で言った。

 「『対物性愛』と訳されていて、器物・機械・建造物等の無機物に対して恋愛感情を抱いたり、性的興奮を覚える事を指す。

  ある女性はベルリンの壁に恋愛感情を抱き、崩壊後は未亡人を自認している。

  またある女性はエッフェル塔と結婚し、苗字をエッフェルに変えた。

  他にも同様の事例は少なくない」

 「それって何かの病気ですか?」

 不安そうに質問してきた鉄子に、詳子は首を横に振った。

 「少数派だが病気でも異常でもないし狂ってもいない。ただ、恋愛対象が多数派と異なるだけだよ」

 「今、絶賛流行中の多様性ってヤツだよね」

 クロエが陽気に割って入ってきた。

 「それを言うなら、あーしと蜂須賀はビアンだし」

 「いや、それは違う。私は同性にモテるだけで、今迄ずっと異性愛者だぞ」

 「ノリわりぃな。んで、ショタ子はショタコン。ショコラは二次元だろ?」

 「そぉで~す。二次元最高ォッ!」

 章子は元気よく答えた後、こっそり「三次元(なまもの)も好きだけど」と呟いたが。

 「でも、クロっち先輩もショタ子先輩も好きになる相手は人じゃないですか。私が好きになったのはロボットなんですよ。しかも、巨大ロボット」

 「人がロボットに恋する漫画やラノベやアニメや特撮やゲームなんか掃いて捨てる程あるよ。あたしが知らないだけで、巨大ロボットに恋したキャラもきっといるって」

 と、章子が熱弁を振るうと詳子も、

 「それこそギリシャ神話では、自らが造った彫像に一目惚れし、最後までその想いを貫いたピュグマリオンの例もある。遥か昔から、今の君の様なラブストーリーは枚挙(まいきょ)(いとま)が無いのだよ」

 続いてクロエが、

 「自分の気持ちに素直になりなよ。気が楽になるって」

 「そう言うお前は自分の欲望に素直過ぎるが」

 「うっせー、ヤブリーゼント!」

 「黙れ、カミキリムシ頭!」

 睨み合うクロエと美王のやりとりに、鉄子は思わず吹き出した。

 そして、意を決した面持ちで立ち上がると掌に乗せたポォに、

 「お願い。彼を呼んでくれるかな」

 それに対してポォが承諾したとばかりに「リィィィン、リィィィン」と鳴いた直後、ドーム越しの夜空にアメシストパープルの斜方立方八面体が出現した。

 「ドーム開放」

 詳子がUGに向かって命令すると、強化ガラスのそれが開き始めた。冷たい潮風が吹き込むが、誰もが興奮と緊張でそれを感じる余裕は無かった。

 光る立体結界が消えると、玉虫色のロボットが星空を背にして宙に浮いていた。先日、トパーズイエローに変わっていた胸の三重八芒星はサファイアブルーに戻っていた。

 一方、いつの間にか筝の演奏は止まり、代わりにヴァイオリンのムーディーな曲が流れていたが、余りに自然な流れだったので誰も違和感を抱かない。

 更に、吹き込んでいた潮風がピタリと止んだ。

 (これもまた、あのロボットのサイコキネシスなのか!?)

 風さえも押さえ込める力を発揮したロボットに、詳子はますます興味を覚えた。

 鉄子は真剣な表情で彼を見上げて、

 「こんな遅い時間に来てくれてありがとう」

 すると、彼は心地良い鳴き声を返してきた。好意的な返事を思われた。

 ほんの数秒、言い淀んでロボットの顔から視線を逸らした。けれども、すぐにサファイアブルーの複眼を真っ直ぐ見つめ、勇気を振り絞って想いを口にした。

 「私、あなたが好き!!」

 告白を聞いた詳子と祥太郎は静かに微笑み、章子は両眼が潤んで歓声が出そうになった口を押えている。そしてクロエは、ヒューヒュー、と囃し立てる寸前、美王に頭を押さえ付けらた上に口を塞がれた。

 「私は地球人で、あなたは何処か遠い星から来た巨大ロボット。

  普通は有り得ない、おかしいと思う。でも、初めて出会った時から――あなたに助けられた時から好きになっていたの。

  それから好きって気持ちがどんどん大きく、強くなって、今は何時もあなたの事ばかり考えてる。

  正直な気持ち、私の彼氏になって欲しい! 私はあなたの彼女になりたいの!

  だから教えて。あなたは私の事をどう思っているのかな?」

 すると、鉄子の両足が緋毛氈から離れ、微風(そよかぜ)に乗った羽毛の如く体が浮いた。

 そのまま緩やかに上昇し、玉虫色のロボットの胸の前で止まると、例の鳴き声で応えた。

 しかも、それは長いメロディーになっていた。

 しばらく続き、その清らかで穏やかな旋律はヴァイオリンが奏でる曲と合わさると、まるで天使達の歌声に聞こえて誰もが和んだ。特に鉄子は、うっとりとして彼の顔を見つめている。

 そして、例の仕草で左手の剣印の腹を見せると鳴き声は止まった。

 やや涙ぐんでいる鉄子は、

 「その歌は私の告白を受け入れてくれるって事だよね?」

 その問い掛けに、玉虫色のロボットは頷いた。

 最高の返事を得た鉄子が歓喜の声を上げた瞬間、背中からエメラルドグリーンの光の翅が飛び出した。当然、光の触角も突き出し、虹彩もサファイアブルーに変わっている。

 それどころか、剝き出しになっている頬と首筋、そして四肢には両眼と同じ色に光るラインが走った。更に、Tシャツとトランクスショーツ越しにも神秘的な紋様が光っていた。つまり、全身に青く光るタトゥーが浮かび上がっている状態だ。

 「タトゥーなんて何時入れたの!? でも、大浴場では無かったよね!?」

 章子が混乱している。対照的に詳子は冷静に分析した。

 「放課後のオンラインゲームの時には翅と触角、そして眼の色の変化だったが……体内で何かが進行しているのか?」

 美王も落ち着いた口調で、

 「つまり、彼女の肉体はファーブル星人に近付いている、と?」

 「現時点では断言出来ないが、その可能性は高い」

 2人の懸念を他所に、鉄子はロボットの大きな鋼の掌に包まれ、硬い胸に抱き締められた。

 次の瞬間、鉄子はその胸に抱き付き、歓喜と感激の余り声を上げた。

 「ありがとう、ダーリン!!」

 やがて、鋼の両手が離れると、鉄子も鋼の胸から離れた。そして、章子達がいる場所に舞い降りる。すると、触角と翅とタトゥーが同時に消え、虹彩も元の色に戻った。

 「おめでとう、テッコぉッ!!」

 歓声を上げた章子が抱き付いた。鉄子も抱き締め返した途端、2人は感極まって号泣し始めた。

 その横ではクロエが、頭と口を押えていた美王の手を払い除け、

 「いい加減離せよ!」

 「済まない。感動の余り忘れていた」

 そして、2人で「おめでとう」と祝辞と拍手を惜しみなく送った。詳子もそれに加わり、静かに呟く。

 「ようやく決まったな」

 「告白が?」

 クロエが訊くと詳子は、

 「それもだが、名前だ」

 「名前?……って、まさか――」

 落ち着き始めた鉄子と章子も同じ思いで詳子の言葉を待った。

 「あのロボット――テッコ君の彼氏の名前だよ。今、テッコ君が口にしたではないか。

  文字通り“ダーリン”はどうかな?」

 「はぁぁぁッ!? 鬼つえー巨大ロボットの名前がダーリンって!? それマジで言ってるのかよッ!」

 クロエは半ば驚き、半ば笑っていた。

 「私も正直なところ、それはどうかと思う」

 美王も賛同しかねている。

 章子は思い出した様に、

 「もしかして、ダーリンって呼んだのは、この前貸したアレ?」

 すると、鉄子はにっこり笑い、

 「かもね」

 「アレって何だよ?」

 訊いてきたクロエに鉄子が教える。

 「連休前にショコラから漫画とアニメのブルーレイを借りたんです。どれも、主人公の事が好きなヒロインが彼をダーリンって呼ぶんです」

 「『もんむす』は“だぁりん”だけど」

 章子が細かく補足した。

 「それが印象に残っていたから、つい出ちゃったんだと思います」

 「だとしたら、あたしのお蔭かな?」

 「そうだね、ありがとう」

 「まぁねぇ~。一生感謝しろよ、親友」

 「とぉ~ぜん。一生感謝するぜ、親友」

 友情を確認し合っている2人の傍で、美王が誰ともなく訊いた。

 「もしかしてだけど、私達もあのロボットをダーリンと呼ぶ事になるのか?」

 誰もが、う~ん、と首を捻る中で詳子が、

 「それならば、テッコ君以外は“ダーさん”と呼べばいいのでは?」

 その提案に対して、全員の口から一斉に感嘆が洩れ出た。その時、

 「おめでとう、テッコさん」

 初めて耳にした声は小さいが品があり、包み込む様な温かみがあった。

 「ショタ神様が喋ったァァァッッ!?」

 クロエが驚愕の声を張り上げた。普段冷静な美王も愕然として眼を見開き、言葉が出ない。

 「まさか、祥太郎が他者にコンタクトを取るなんて……」

 そして、詳子も珍しく眼を見開いて驚きを露わにしている。けれども、嬉しそうだ。

 祥太郎は周囲の反応を気にせず、黙々と茶を点てると、2つの織部焼の茶碗を鉄子に差し出した。

 察した詳子が祥太郎の気持ちを代弁する。

 「彼なりの祝福だ。ポォとダーさんにも幸せになって欲しいのだよ」

 「そうなんですね。ありがとう、祥太郎君」

 鉄子が頭を下げると、ポォとダーリンが同時に鳴いた。

 すると、頷いた祥太郎の頬が赤く染まった。

 鉄子が茶碗の前にポォを置くと、中の抹茶が浮き上がって球状になり、彼女の前に止まった。

 「まさか、ポォもサイコキネシスが使えるのかッ!?」

 詳子が驚きを禁じ得ないでいる間、ポォが口を付けると深緑色の球体は徐々に小さくなっていく。

 もう1つの茶碗はアメシストパープルに輝く小さな斜方立方八面体に一瞬包まれ、中身の抹茶だけ消えた。

 ポォが飲み干すと、彼女もダーリンも同時に鳴いた。

 「恐らく、『美味しかった、ありがとう』と言っているのだろうね」

 「きっとそうですよ」

 呟いた証子に鉄子が頷き、和やかな雰囲気に包まれた。

 そこで、鉄子はダーリンに、

 「お願いがあるの。もう一度、あなたを調べさせて」

 そう言うと頭を下げた。そして、サファイアブルーの複眼を見つめながら、

 「あなたを知りたい。好きだから色々知りたい。あなたの全てを知りたい。

  だから、最も信頼出来る姫科研であなたを調べたいの。どうかな?」

 その申し出に対し、ダーリンは「リィィィン、リィィィン」と鳴きながら頷く。

 「ありがとう。――勿論、ポォもね」

 すると、ポォは飛んで鉄子の左肩に乗り、同じく「リィィィン、リィィィン」と鳴いた。

 「ポォもありがとう」

 2体から承諾を得ると、詳子が言った。

 「こんな事もあろうかと、既に準備は整っている」

 「そのセリフ言う人、リアルにいたんだッ!」

 マッドサイエンティストの決め科白を生で聞いた章子は感激した。

 「予定通り、明日(あす)は姫科研に御案内しよう。

  ダーさんとポォには秘密のベールを脱いで貰うよ」

 そう宣言した詳子は普段と同じクールな表情だったが、科学的好奇心によって両眼は超新星の様に激しく輝いていた。


 第一部:傾心編――赤い糸は異星より《完》

☆次回予告


読者諸氏に語られるべきは、

巨人同士の熾烈な水中戦。

それを見た鉄子は改めて魅了される。

激戦の最中(さなか)、鋼の手は何を生み出すのか?

第14話「あなたの元へ」


彼女の想いに応える為に。

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