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27話【ルドフィア視点】妹たちとの久しぶりの会話

 私は第一王女、ルドフィア・ペンデンス・オトノマース。


 そう、第一王女なのよ。兄が一人上にいるけれど、その兄を除けば下にたくさんの弟や妹がいる。


 最近は予定が会わないのか、どの子とも会うことが出来なかったけど……とある女に『誘拐』されて大切な妹の一人、ドルイディと弟のディエルドと会えた。


 だから、今の私はとっても嬉しくて、楽しくて……その上、とっても幸せなのよね。



「あぁ……」



 今は妹のドルイディとディエルドとお話しているところ。ドルイディはもちろんとして、兄弟の中では比較的苦手意識のあったディエルドもちゃんと話してみたら、意外と面白くて楽しい時間を過ごせたわ。


 やはり、兄弟の時間って大事ね。


 ちなみに二人が来てくれてから、もう十五分が経ったわ。時間って早いものね。


 二人を待っている時の十五分はもっと長く感じたわ。



「……ねえ、それでさっきの質問なのだけど……」


「あっ……そうだったね……お姉様……」



 私はドルイディに質問をしたのよ。


 貴女は今、『恋』をしているのかって……


 『恋』はいいものよね……まあ、そう言っても経験などは別にないのだけれど……


 何故にいいと言えるのか? たくさん『恋』をする人間を間近で見てきたからよ。


 本も読んでいたりするけど、やっぱり『恋』って……


 ……とっても、素晴らしいわよね。『恋』をすれば、人も人形も強くなれる。みんなすべきよ。



「答えてくれる?」


「えっと……」


「ああ、でも……無理して言わなくてもいいのよ? 答えにくい質問をして悪かったわ」



 ドルイディが『恋』をしてそうだと思ったのは顔つきの変化と体から漂う兄弟や城の人間以外の香りから。


 別に確証なんてものはなかったのだけど、この様子じゃどうやら本当に『恋』をしてそうよね。


 ……誰かしら? 言う前に想像してみようかしら。


 ……なんて思ったけど、わからないと思うし、無粋でもあるわよね。やめておきましょう。



「……別にいいのよ? 相手のことは言わなくても。言いたくないことの一つや二つぐらいあるものね」


「いや、そんな……」


「私は貴女を傷つけたいわけじゃないの。いるかどうかも……それなら言わなくていいわ」



 この子が傷ついてほしくないというのは本当。


 付き合っている人間……もしくは人形がいるのなら、その相手との恋愛に及び腰になってほしくないという思いも強く持っているわよ。


 私は第一王女であり、みんなの姉だもの。弟や妹の思いは本気で尊重していきたいのよ。



「……?」



 ドルイディがディエルドの方を見た。


 あ、恥ずかしくて視線を逸らしたくなっちゃったとかかしら? それなら、申し訳ないことを……



「……なーるほどね」



 ディエルドの方を見たら、何やらすごーく興味深そうにドルイディのことをじっと見ていたわ。


 これじゃ、どんな話題をしていたとしても、恥ずかしくなってしまうわよ。


 私だってそうなると思うわ。



「こらっ、ディエルド! ドルイディは貴方に見つめられすぎて緊張しているわよ!」


「おお、姉さん……え、別に見るぐらいよくない? 気になる話してたし……ダメ……?」


「ダメ!!」


「本当にちょっと見てただけだってぇ〜……」



 私はディエルドの頬をつねる。


 昔もおいたをしたら、こうやって頬をつねってあげていたかしらね。懐かしいわ。


 ディエルドはこの調子だとまだ変わらずに困ったことをやっていそうね。


 ……少しかっこよくなったと思ったけど、まだまだ困った子だったとは……


 お姉様である私が今度、ちゃんと教えてあげるわ。



「……ごめんね、ディエルドが」


「ああ、うん」


「もちろん、私も悪かったわ。ごめんなさいね」


「いや、本当にいいって」



 ドルイディはやっぱりかわいいわね。


 私の言葉にコクリと頷いてくれる度に胸がキュンキュンしてしまうもの。


 キュンキュンしすぎて胸が破裂しそうだわ。



「それじゃ、別のお話をしましょ……」


「別のお話……?」



 そうよ。


 ……と言っても、大した話ではないけれど。



「ドルイディ、貴女……どこの香水をつけてるの?」


「どこの……ああ……えっと……香りのもととなった花の名前なら教えられるけど……」


「ああ、それでもいいわよ」



 店の名前を隠したいというより……なんか単純に知らなさそうだわ。


 もし、隠していたのなら悪いけど……知らなかったということなら、やはり誰かに贈り物として貰った可能性が非常に高くなってくるわね……


 友達を作ってその子から貰った……?


 ……というのもまあ、あるかもしれないけど、これはやはり、恋人よね。


 姉として、妹が『恋』を楽しんでいるかもしれないと思うと非常に喜ばしいわね。



「花の名前は『アガプンス』と言うんだ」



 アガプンス……どこかで聞いた……


 あ、思い出したわ。うちの城の庭にも確か咲いていたものね。何輪か……



「知ってるわ! 綺麗な花よね。花言葉も素敵だった気がするわ……確か『愛の訪れ』よね?」


「……うん。中庭にも咲いている花だよ。中庭にあるものは青い物だったけど、青のアガプンスは『知的な装い』という花言葉も持っているらしいよね」


「そうなのよねー……いい香水をつけてるわね」



 私も今度、買って付けてみようかしら……?


 妹と同じ香水を付けていると、『仲良し』って感じがするでしょう……?


 あ、でも逆に嫌がられるかしら……? それなら、嫌ね。嫌われたくはないわ……


 まあ、今は保留かしらね……




「あ、そうだ。ドルイディ」


「……今度は何? お姉様」


「タメ口のドルイディ、やっぱりいいわね……ってそれは別にいいわ。渡したい物があるのよ」



 ドルイディって真面目なところがあるから、昔は私に対して姉だということで敬語だったのよ。


 話し方も今より固い感じで……


 ……って本当にそれは別にいいのよ。渡したい物渡したい物……忘れちゃダメよ、私。


 私は少し移動して愛用の机の……その引き出しをゴソゴソと探って、その奥にある包み紙を取り出す。



「これよ」


「ありがとう……えっと、ここで開けていいかな?」


「いいわよ!」



 まさか、すぐに開けようとしてくれるとは思っていなかったわ。嬉しいわね。


 ……包み紙自体が贈り物ではなくて、その中にある物が贈り物なのよ。喜んでくれるといいけれど。


 ドキドキするわね。贈り物をする側って。



「えっと……ごめん。これはなにかな……?」


「あっ、説明が必要よね。させてもらうわね」



 私はドルイディにその紙に包まれていた小さめの四角形の物体を渡しておく。



「これこそは……私が一生懸命、愛を込めて作った『お姉ちゃん呼び出しボタン』よ!」


「えっ……」


「どう、喜んでくれたかしら? これがあれば、どこにいてもお姉ちゃんはすっ飛んでくるわよ」


「まあ、うん……」



 なんか、微妙な反応ね……


 予想と違っていたのかしら……? ちょっと豪華とは言い難いものね。


 こんなこじんまりとした感じではなく、もっと豪華に……その上、大きくすべきだったかも。


 いや、でも……持ち運びを考えたら、この大きさが適切なのよ……わかってちょうだいね……



「ありがとう。大切にさせてもらう……」


「持ち運びには最適な大きさにしてるから、ポケットにでも入れておけばいいと思うわ」


「ねえ、姉さん。オレは……」


「あ、ディエルド。ごめんなさいね。貴方の分もあるんだったわ。一瞬忘れてた……」



 私は「しまったわ」と言って手で口を抑えながらもう一つ同じボタンを取りだして渡す。



「え、ボタン以外に何もないのー……?」


「え、なに? 不満かしら?」


「いやいやいやいや!」



 ディエルドは笑顔でボタンをポケットに入れる。


 あれ、ちゃんと使ってくれるかしらね……


 まあ、別に気にしないでおくわ……


 私はドルイディが頷いて、私の言ったようにポケットにボタンを入れた後に……


 ベッドに体を落とす。



「ああ、貴女たちと久しぶりに話せて嬉しいわ。貴女たちからも私に言っておきたいことってある?」


「うん、あるよ。取り敢えず二つね」



 即答。今のはドルイディね……


 どんなことを言うかと思ってワクワクした気持ちで少しだけ体を持ち上げると……


 そこには無表情のドルイディがいた。



「お姉様……」


「……うん」


「質問だ。ここはなんでここは貴女の部屋じゃないのに、私の贈り物があるのかな?」


「それは、これが合意の上での誘拐だからね。部屋から出る時に持ち出していたのよ」



 私がそう答えると、ドルイディの顔は更に険しいものになっていく。困惑しかしないわ。


 えっ、どういう感情なのか読めないんだけど。


 これでも、ドルイディの姉なのに。



「……なるほど、じゃあもう一つ……」


「わかったわ。どうぞ……」


「お姉様、私はいいにしても……本気で心から貴女のことを心配していたお父様に、今ここで話したことをそのまま話せるのかな? 嘘一つなく……」



 妹から向けられる失望混じりの視線を……


 私は少しだけ逸らしながら、回答を絞り出す。そんなこと言われるなんて、これっぽっちも思っていなかったから少し時間がかかったわ。



「あっ……うん。もちろん……謝るわ……ごめんなさい。貴女たちにも、お父様にも」


「強要はしないけど……ちゃんと、ね?」



 先程まで楽しい気分だったのに……


 この三分ほど前から始まったやり取りによって、私の心は再び沈んでいってしまうのだった。




 ……ああ、もっと対策してから『誘拐』されるべきだったかもしれないわね……


 失敗したわ……最悪。私って馬鹿ね。

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