28話【ドルイディ視点】びっくりばっかり
正直、先程から吐かれる言葉が全て彼女の本心からの言葉であるのだとしたら……
大変申し訳ないが、私はルドフィアお姉様に対しての印象が悪い方向にガラッと変わる。
……失望も……私はしてるんだ。
「……はぁ」
贈り物だって……喜ぶフリはしたけど、ここでも正直に言わせてもらうとあんまり嬉しくない。
単純に貰った物がいらない物だからというのもあるけど、彼女に対して悪印象を抱き始めてからの贈り物だったというのも大いにあるだろう。
この人形は……本当にルドフィアお姉様なのか?
何があってしまったんだ……? やはり、本心の言葉ではなく、リュゼに言わされていたのか?
それとも、この部屋で見てることは全て幻覚で……お姉様は今も拷問を受けているのか……?
……もう、わからない。
私はお姉様のことが、何もわからないよ……
「……」
「……ドルイディ」
「……ごめん、お姉様……私、実はまだ助けたい人がいるんだ。もうそろそろ行くね……」
ルドフィアお姉様が何などを考えているかは知らない。何をされたかは知らない。
でも、正直……今は貴女と一緒にいたくないからさ。
引き留めようとするその手は……振り払わせてもらう。
「……っ」
俯くお姉様の姿を見るのは心苦しいが……
……うん。いや、決めたしさ。
リモデルのもとに私は早く行きたい。
彼も似たようなことになっていないように……
……そんなことを祈りながら、ね。
「あ、行く感じ? ドルちゃん」
「……うん」
「そっか……まっ、そだよね」
ディエルド……ノリは変わらないが、その表情と声色に明るさは少しも感じられない。
薄い失望……それは感じた。
話をちゃんと横で聞いて、私と同じような考えに至ったからこそ抱いたんだろうけど……
普段の自分の行いに関しても良いものとは言えないから、その失望をあまり表に出さないように口角を少しは上げようとしてるのかも。
……そんな気がしてるだけだから、実はただ笑いを堪えているだけなのかもしれないけど!
「……姉さん」
「……」
「オレからもちょっと言わせてもらうと、今の姉さんは確実に変。ちょっち休んだ方がいいと思うよ?」
「……ありがとう。変だという自覚はなかったけど、二人がそう思ってるなら、そうなのかもしれないわね」
自覚はない……か。
お姉様の心中を覗くことが出来たのなら、私のこの失望は……少しでもなくなるのかな?
……なくならない気がするな。
「ごめんね。暗い雰囲気にするようなことを言っちゃって。贈り物は嬉しかったよ」
「あ、それなら、よかったわ……後で使ってね?」
そ、それは迷うな……
使いどころはないけれど、今後……お姉様が私が憧れていた……私の知るお姉様に戻ってくれるのだとしたら、何かしらする時に使ってみるのも……
……いいかもしれない……ね。
ちなみにディエルドも私の後ろから顔を出して何気に『贈り物嬉しかったよアピール』をしている。
贈り物を持ち上げてフリフリと振っているだけだよ。髪の毛にたまに当たるからウザったい。
「……ねえ」
「……ふんふん」
「ねえ!」
「わーった! わーった! ごめんね!」
私は途中で彼の手をはたいてそれを止めさせると……ルドフィアお姉様に一旦頭を下げ……
……待ちくたびれたのか眠っていたプララとラッシュ……そしてリュゼのところに行く。
とてつもなく、気持ちよさそうに眠ってるよ。
リュゼはともかく、プララとラッシュはあまりに気持ちよさそうだから起こしてしまうのは少し可哀想な気もするけど……リモデルのことを探すためにはここに置いていくわけにはいかないからね。
ちゃんと起こしていくとするよ。
……まあ、私がどう考えようとリュゼはプララとラッシュを置いていくという選択をしないだろうけど。
『遊び』とやらを行うと言っていたからね。
「プララ! ラッシュ! あと、リュゼ!」
「んーん……」
「まだ寝たいのだよ……んにゃ……」
かわ、かわいい……
「かわっ……かわい……」
私の内心に反応するかのように後方で声が……
振り返ると、ルドフィアお姉様が手を抑えてプララとラッシュのことを見つめていた。
かわいいものを見た時の……いつものお姉様だ。
私たちを見た時にもかわいいと思っているんだろうけど、あれは弟や妹を見る目で……
こちらは愛玩動物とかを見る目だと思う。
こういうお姉様らしい一面をたまに見せてくると、さっきまでの言動が尚更不思議に感じられる。
私は顔を再びプララとラッシュとリュゼに向けると、今度こそ起こすという気持ちで……
「ねえ!! 起きてって!!」
と大声で言うのだが、三人ともムニャムニャ言うばかりで全く起きる気配がない。
これはちょっと頬や耳をつねるなどといった多少の痛みを伴う手段を取るしかないか……?
この子らにそんなことをするのはどうかと思ったが、大分深い眠りのようだからね……
このまま、放っておいたなら、きっと六時間は余裕で寝ると思われるよ。きっとね。
可哀想だけど、耳をつねるぐらいは……
そう思った時……リュゼだけが目を覚ました。
パッチリと……目を開けて。
予兆のない突然の目覚めだったために、それを目にした私とディエルドは絶句してしまった。
貴女は起きるにしても、一番最後でよかったよ……
「……」
もしかして、目覚ましの機能でも搭載していたのかな? それなら、ありえるかも。
仮にも王女だしね。それぐらいの機能は搭載していてもおかしくはないだろう。
……いや、ここは不思議な屋敷であるわけだし、屋敷に起こされたのかもしれない。
……そんなこと気にしても仕方ないか。
「ねえ、なんで起……」
「ルドフィア様、なんで起こしましたの?」
私が目覚まし機能の有無を尋ねようとしたのだが、その前にリュゼが口を開いた。
なに? え、どういうこと? お姉様がなに?
私は不思議に思った。
ディエルドと同時に振り返った瞬間に、リュゼの問いに答えるようにお姉様も口を開く。
「いやぁ、そこの隣の子の寝顔が堪らなくかわいいから、ちょっと見せてあげようかと思ったのよ」
見せてあげようかと……?
もしかして、お姉様が何かをしてリュゼの目を覚まさせたのか? 一体何を……?
「そこの子って……」
「そこ! そこよ!」
「ああ、一緒に着いてきていた子供のことで……んんんっ!? えっ……えっ」
あっ……ルドフィアお姉様と同じ顔してる。
さすがに口は抑え……あっ、抑えた。
同一人物かと思ってしまった。
まさか、思考を同期してるとか……?
「……わぁ……新しい世界が開けましたわ」
「でしょ? そうよね、私もびっくりしちゃって」
びっくりしたのは私の方もだよ。貴女やそこのリュゼによってね。
というか、先程からびっくりさせられてばかり……
新しい世界と言っていたが、そういう表現……だよね? なんか初めて聞く表現だ……
突然、キャッキャする二人から私は目を逸らすと、「面倒くさい」と言いながら、ディエルドに対して視線で『任せる』ということを伝えた。
もう、外でプララたちが起きるのを待ってるよ……
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