表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍の傳人続―奈落の龍(青木家サーガ第4作)完結  作者: 光闇居士-Twilight Master


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/35

7. 公海上の別れ

霧雨が、降る、夜だった。

渤海湾の、冷たい、海の上で、二つの、船が、静かに、寄り添う。

義成と、李霃帘は、高速艇へと、乗り移った。

「…どこへ、行くの…?」

李霃帘が、尋ねた。

「君は、南へ。祖苑が、手配した、南米の、小さな国へ。そこには、君の新しい人生が用意されている。名前も、顔も、変えて生きるんだ」

「…あなたは?」

「俺は、東へ。帰るべき場所へ」

二人の間に、沈黙が流れた。

「…なぜ…?」

李霃帘の、目から、涙が溢れた。「なぜ、私を、助けてくれたの…?私は、あなたを、終始利用しようとした、ただの、悪女なの…」

「…さあな」

義成は、夜の海を、見つめながら言った。「先も言ったはずだ。君の、その、美しい、魂が、あの醜悪な男たちの欲望の中で、完全に腐り果てていくのを見ていたくなかった。それだけだ」

ちがう、彼女はもう一度同じ答えを聞くために、もう一度同じ質問をしたのではなかった。資格もその権限も自分にないとは分かっていたとしても、李霃帘は、本当は義成に違った、自分で考えても、ありえない答えを求めて見たかったのだ。

しかし、それは叶わないこと、とも知っていた。それでも・・・


彼は、そっと、彼女の、頬に、手を伸ばし、その涙を拭った。

「元気でな、ディアオリェ-ン」

それは、彼が、彼女に見せた、最初で、最後の本心から発する優しさだった。

彼は、彼女の額にそっと、別れのキスを、落とした。

そして、彼女に、背を向けた。

高速艇が、エンジン音を、響かせ、闇の中へと走り去っていく。

李霃帘は、遠ざかっていく、義成の、姿が見えなくなるまで、甲板の上で、ただ、立ち尽くしていた。

彼女はすべてを失った。

だが、その、心の中には、生まれて初めて知った恋という名の温かい光が、灯っていた。

龍は、女帝を救った。

そして、彼は自らも、この長く暗い、チェス盤から、その姿を消した。

すべての駒は、取り除かれた。

彼の、中国での聖戦は終わりを告げたのだ。

彼は日本へ帰る。

彼を、待ち受ける新たな運命へと。

そして、彼が、本当に守りたかった、たった一つの、光の元へ。

その船が向かう先は、もう闇ではなかった。

夜明けの光が、東の水平線を染め始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ