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龍の傳人続―奈落の龍(青木家サーガ第4作)完結  作者: 光闇居士-Twilight Master


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3. 全面戦争

義成は全身全霊で、この最後の「仕事」に取り組んだ。

それは、もはや、ビジネスではなかった。国家と国家、そして、欲望と欲望が、剥き出しで、衝突する、全面戦争だった。

2010年の秋、日本の産業界は、未曾有のパニックに、陥っていた。

中国政府が、レアアースの、対日禁輸措置を、発動したのだ。

それは、日本の、生命線を、断ち切るに、等しい、一撃だった。テレビのニュースは、連日、悲痛な、経営者たちの、声を、伝えた。「このままでは、ハイブリッドカーの、高性能モーターが、作れない」「光ファイバーの、生産が、止まる」「我々の、精密加工技術は、土台から、崩れ去る」。政府は、抗議と、遺憾の意を、繰り返すばかりで、有効な、手を、何一つ、打てずにいた。繁栄を、謳歌していた、列島が、資源という、名の、兵糧を、断たれ、静かに、しかし、確実に、干上がっていく。その、光景を、義成は、北京の、ホテルの、一室で、冷ややかに、見つめていた。

この、国家的な、ヒステリーの、裏側で、彼の、戦争は、静かに、始まっていた。

彼は、これまで、築き上げてきた、すべての、闇のルートを、一つの、巨大な、血管のように、連動させた。

第一の、龍脈。河北省に、眠る、張書記と、李霃帘が、管理する、非合法の、レアアース鉱山。禁輸措置によって、公式の、輸出ルートが、完全に、閉ざされた今、この闇の、鉱脈こそが、世界で、唯一、日本が、アクセスしうる、生命線となっていた。だが、そこから、港までの、道のりは、国家の、威信をかけた、厳戒態勢が、敷かれている。

軍と、公安の、検問が、蜘蛛の巣のように、張り巡らされていた。

義成は、李霃帘の、力を、フルに使った。彼女が、長年、その、美貌と、金で、築き上げた、地方官僚との、腐敗の、ネットワーク。偽造された、軍の、特別通行許可証。キーパーソンへの、的確な、賄賂。レアアースを、積んだ、トラックは、夜の、闇に紛れ、まるで、幽霊のように、検問を、すり抜けていった。

第二の、龍脈。浙江省、義烏。世界の、雑貨が、集まる、混沌の、るつぼ。河北から、運び込まれた、レアアースの、土塊は、この、巨大市場の、薄暗い、倉庫で、無数の、段ボール箱へと、姿を、変えた。子供向けの、プラスチックの、おもちゃ、安物の、キッチン用品、クリスマス用の、電飾。その、ありふれた、日用品の、中に、国家の、命運を、左右する、戦略物資が、巧みに、隠される。義成は、現地の、マフィアを、金で、動かし、何重もの、監視の目を、欺いた。市場の、喧騒と雑踏、そして、人々の欲望が、最高の、隠れ蓑となった。

第三の、龍脈。天津。義成の、新たの盟友、司馬蝶々が操る、国際的な、環境保護のネットワーク。彼女の、NGOは、その、クリーンな、イメージから、共産党の、対外的な、プロパガンダにも、利用されており、税関では、いわば、フリーパスの権利を、持っていた。義烏から、運ばれた「雑貨」の、コンテナは、司馬蝶々の、NGOが、チャーターした、「アフリカの、子供たちへ、救援物資を」という、聖なる、名目を持つ、貨物船に、積み込まれる。誰が、この、博愛の、船の中身を、疑うだろうか。税関職員は、蝶々の、微笑みの前で、敬礼し見送りさえした。

第四の、龍脈。香港。金融の魔都。林祖苑が、その、天才的な、頭脳で、張り巡らせた、ペーパーカンパニーの、網の目。この、密輸オペレーションで、生まれる、天文学的な、利益は、瞬時に、香港へと、送金され、数十の、ダミー会社と、複雑な、金融派生商品を、経由することで、その、汚れた、出自を、完全に洗浄された。金は、雪のように、白く、そして、冷たくなって、義成と、張書記、そして、共犯者たちの、スイスの、プライベートバンクの、口座へと、静かに、降り積もっていった。

四つの、龍脈が、完璧に、連動し、一つの、目的を、遂行する。

船は、渤海湾を、抜け、公海上で、悪天候を、装い、レーダーから、一時的に、姿を消す。その、闇の中で、船籍を、偽装した、別の、貨物船へと、コンテナは、嵐に、揺れる、海上で、クレーンによって、移し替えられるのだ。それは、一瞬の判断ミスが、死に、繋がる、危険極まりない、綱渡りだった。

そして、その船は、日本の、どの、主要港でもない、義成が、日本の、裏社会を、通じて、息のかかった人間を、配置した、東北地方の、寂れた、漁港へと、深夜、霧に、紛れて、入港する。そこでは、地元の、有力者に、大金が、渡され、警察も、海上保安庁も、その夜は、なぜか「別の、事件」で、手一杯になっていた。

日本の、産業界は、奇跡に、湧いた。

どこからともなく、現れた、謎の、供給ルート「ルートX」。その、品質は、驚くほど、高く、価格は、法外だったが、背に腹は、代えられなかった。国家の、危機は、水面下で、回避された。

メディアは、政府の、秘密交渉の、成果だと、賞賛した。

その、裏側で、義成は、日本の、危機を、救った、英雄であると、同時に、その、危機を、利用して、歴史上、類を、見ない、巨万の、富を、築き上げた、悪魔でも、あった。

だが、義成の、本当の、目的は、そこには、なかった。金は、単なる、道具に、すぎない。

彼は、この、全面戦争の、喧騒の、裏側で、静かに、そして、冷徹に、すべての、駒を、この、血塗られた、チェス盤から、一つずつ、取り除くための、最後の、布石を、打っていたのだ。

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