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Dark in love  作者: あおあん


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第39話 2月6日 金曜日

「短い間でしたが、皆さん、お世話になりました」


 良平がオフィスの真ん中で挨拶をし、青いお花のブーケが渡された。


「轟君はご実家の福岡で新しい生活を送られるそうだ。新天地での活躍も期待しているよ」


 部長が挨拶し、拍手が送られた。

 良平はこのまま約1ヵ月の有給休暇に入り、最終日をもって退職手続きがなされるようだ。

 パソコンや携帯、オフィスのカードキーなど、会社の備品は全て返却したとのこと。


「もう帰るの?」

「まあな。今日は挨拶だけだから。じゃ」


 良平との距離を詰められないまま、こうして自然消滅してしまうのかな。


「あのさ……夜、行ってもいい?」

「引っ越しの準備で段ボールだらけだけど、よければ」

「うん」


 ネネロンを貰い受けることになっているけど、ペット不可の私のマンションには連れていけない。私は3月の次回更新はしない旨、不動産屋に連絡をした。良平は5月の更新まで家賃を払うと言ってくれて、次のマンションが見つかるまでは良平のマンションで過ごすかもしれない。


 空いてしまった隣のデスク。


「俺、そっちに移動していい?」


 祥太が良平のデスクに顎をくいっと向けた。


「なんで?」

「向かいより、隣の方が何かとやりやすいからさ。教えてもらうのに便利だろ?」


 言いたいことは分かるけど、嫌だった。


「私が祥太の隣に移動するよ」

「は?わざわざいいよ」

「ううん。こっちの席……夕方になるとモニタに日が射して見えにくいの」


 適当なことを言って、移動の準備を始める。

 デスクの移動なんて簡単だ。袖机をガラガラと押して交換して、後はモニタのコンセントを外して持って行くだけ。


「ありがとな」

「どういたしまして」


 私と良平の思い出が浸食されなくてよかった。祥太とは一緒に仕事をしていかなくちゃならないんだから、一定の節度を持って接していかなくちゃ。元カレとか意識しない方がいい。


 早く仕事終わらないかな。良平んちに何持って行こうかな。そんなことばっか考えて一日の業務を終えた。




「ニャア」

「こんばんは、ネネロン」

「お疲れ、百花」

「お疲れ、良平」


 よれよれのTシャツにハーフパンツの良平にほっとする。どうしてだろう。ちっともカッコ良くないのに、良平を見ると心がふわっと浮足立つ。


「なんもないけど……ピザでも取る?」

「あ、大丈夫。もう頼んであるから、もうすぐ届くと思う」


 帰りの電車でデリバリーを注文した。


「ビールだけ買ってきたんだ。飲も」

「お!気が利く!サンキュー」


 先にネネロンだけ高級な缶詰を食べさせて、お菓子を摘まみながらビールを飲んだ。


「百花のせいで、ネネロンがグルメになったらどうしてくれんだよ。金かかるんだけど」

「どうせ私が面倒見るんでしょ?」

「あ、そうか」

「ネネロンだって美味しいもん食べたいよねー?」

「ニャア」


 駄目だ。良平と過ごすのが心地よくて、この時間がなくなっちゃうなんて信じたくない。


「良平、あのさ……」

「ん?」


 ピンポーン


 最悪のタイミングでデリバリーが届いた。

 最近流行ってるらしい、韓国のチキン料理。


「おっ!いい匂い。旨そう!」

「そうだね」


 段ボールに挟まれながら、床に座って包みを開ける。


「いつ引っ越すの?」

「まだ決めてない。とりあえず、身の回りの物だけ送って、来週にでも行くかなぁ。こっち居てもやることないしな」

「ねえ。週末……ここで一緒に過ごしていい?」

「いいけど、なんで?」


 好きだから、一緒に居たいって思うんだけど、私だけ?


「手伝ってあげるよ」

「ありがと、助かるよ」


 良平は私を求めてくれなくなった。美波と付き合ってるんだから、当然と言えば当然だけど、でも私と会ってはくれる。一緒にご飯を食べるのは、すみれさん的にはアウトな行為だ。


「こんな風に過ごすのって美波に悪いかな?」

「美波ちゃんとは、別れたよ」

「へ?そうなの?」

「ああ。言ったろ。美波ちゃんの事は別にそんな好きとかじゃなかったんだよ」


 じゃあ、なんで、私と付き合おうって言ってくれないの?

 聞きたいけど、聞けない。終わってしまうかもしれないのが、怖くて聞けない。


「じゃあ、私が来ても問題ないね?」

「ああ。問題ないよ」


 良平がキスをしてくれるんじゃないかと期待した。

 この前みたいに、少し強引に押し倒されて、朝まで一緒にって……


「ご馳走様」


 そう言って良平はゴミを捨てて、ビールを片手にDVDの整理を始めた。


「こっちにあるのが持ってくやつで、この箱に入ってるのが捨てるか売るやつ。欲しいのあったら持ってっていいよ」

「あ、うん」


 私が期待している事は起きなかった。

 良平は私と同じ気持ちかと思ってたけど、どうやら違ってたみたい。

 悲しくなってきて、でも怖くて聞けないし、考えないようにしながら箱詰めを手伝った。


「今日はこの辺でいいかな」


 しばらく手伝ったところで、良平が作業を切り上げた。


「私、帰るね」

「ああ。ありがとな」

「明日も来るね」

「無理しなくていいから」


 やんわり断られてるのかな。美波と別れたけど、私と付き合う気はないんだもんね。福岡に行くんだし、こっちに重たい女を残していくのはしんどいか……


「うん。おやすみ」

「じゃな、おやすみ」


 なんか……思ってたのと違った。『それぞれ間違った相手と付き合ってると思わない?』そう良平に言われて、私はてっきり、今のパートナーと関係を解消したら、私たちは付き合うもんだと思ってた。祥太と別れたの、早まったかな……




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