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Dark in love  作者: あおあん


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第34話 1月24日 土曜日(美波)

 土曜日は忙しい。理由は最近始めたSNSでフォロワーさんが写真をよくUPしてくれるからというのが半分、もう半分は、土曜だけ手伝いに来てくれるケン君のおかげ。


「あの、一緒に写真映ってもらえませんか?」


 ケン君ってば大人気。


「いいですよ」


 クールに言い放ち、お客さんに頬がくっ付く寸前まで顔を近付ける。天然たらしか。


「あ、ありがとうございます。SNSに写真公開してもいいですか?」

「いいですよ」


 ニコリともせず、ぶっきら棒なのに……塩対応が似合うキャラなんだろうな。


 私たちは同じ調理の専門学校に通っていた。お互い『店を持ちたい』という夢があって、勉強しながらバイトをしてお金を貯めていた。ある時、ケン君は友達から共同出資の話を持ちかけられた。


「すげえ、いい話なんだ」

「やめときなよ。そう言うのはトラブル多いって聞くし」


 ケン君は私のアドバイスを無視して、その友達に騙されてお金を取られた。悲しかったのは、ケン君が私の話をちっとも聞いてくれなかったこと。


「なあ、卒業したら結婚して一緒に店やらない?」

「……」


 私には私のやりたい店のイメージがある。ケン君とは何度も話し合ったけれど、私の理想の店作りと、彼の目指す方向性がどうしても噛み合わなかった。


 性格が悪いと思われるから口には出さなかったけど、ケン君は私の開業資金が目的で結婚なんて言い出したんだと思った。


 昨年、ようやく自分のお店を持って、下準備やお店の経営とか、全部自分でやってみたら大変過ぎた。まじで、死ぬかと思ったレベル。


 求人を出したら、近くに住むフィリピン人のリリーさんが応募してくれた。3人の男の子がいるのに離婚しちゃって『夫の顔見るのイヤ』って養育費を貰わないで頑張ってるシングルマザー。料理が上手で、明るくて、働き者なんだけど、突然の休みが多くて少し困っていた。


「ミナミサン、上の子がバッド・フルー、しばらく休みたい」


 どうやらインフルエンザにかかったみたいで、兄弟たちと自分と、家庭内感染をしてしまい、2週間以上来られなかった。そんな時、たまに店に来てたケン君が助けてくれた。


「リリーさんが来られない日は俺が手伝おうか?」


 願ってもない申し出だった。もともとリリーさんから週末は子どもたちと過ごしたいと言われていて、稼ぎ時の土曜日に休まれるのはちょっとな……と思っていたから、ケン君を頼ってしまった。


「いらっしゃいませ。今日はご予約でいっぱいで……良平君……」


 写真撮影で呼び止められるケン君にはキッチンを任せて、私がオーダーを取って料理を運んでいた。若い女性客でテーブル席は埋まっていたから、手招きして、奥のカウンター席を指さす。


「ここなら一人座れるんだけど、いい?」

「急にごめん。邪魔しないようにするから」


 良平君は会社が店から近いから、平日しか来てくれないと思ってた。わざわざ電車乗って会いに来てくれたのが嬉しい。


「土曜はケン君目当ての女の子がいっぱい来てくれるの」

「ケン君いるんだ」

「うん。キッチン任せてるの。悪いんだけど、今日はお料理、お任せにしてもらえないかな。コース料理だと助かるんだ」

「あ、うん。それでお願い」


 とりあえずビールをお出しして、テーブル席の女子会を切り盛りした。




「ふぅ。お疲れ」

「お疲れ様。週末っていつもこんな混むの?」

「最近はこんな感じかな。土曜日はリリーさんがお休みだから、ケン君に手伝いに来てもらってるの」


 まさかとは思うけど、疑われたりしないよね。ケン君とは終わったことだって、ちゃんと話してあるんだし。


 お皿洗いもケン君に任せちゃって、私はCloseしたお店で良平君と乾杯した。


「今日の料理はケン君が作ったの?」

「そうだよ。美味しかった?」

「う……ん。個人的にはリリーさんの方が好みだけど」

「あはは。だから女の子たちはリピートしてくれないのかぁ」


 笑ってしまった。土曜に予約して来てくれるお客さんは、ケン君との写真を撮りたいだけで、味が気に入ったわけじゃないんだ。だから平日に再び来店してくれることは無い。料理の腕で勝負したい私的にはプライドが傷つくけど、お店の経営的には有難い売上だから、ケン君には感謝だな。


「今日はどうしたの?」


 良平君の言いたい事なんとなく分かってるよ。言い出しにくいよね。


「美波ちゃんに話があって」

「ん?」


 意地悪かもしれないけど、とぼけちゃおう。本当は聞きたくないんだから。


「付き合って欲しいって話さ……取り消してもらえない?」

「どうして?」


 私が納得できるまで説明するのは良平君の務めだよ。


「仕事辞めて福岡の実家に帰ることにしたんだ」

「え!」


 想定外だな。百花と付き合いたいからじゃないんだ。


「ごめん。俺、遠距離とか出来るタイプじゃないし、今なら傷も浅いかなとか、俺が言うなって感じだけど」

「どうして実家に帰るの?」


 その話、本当なの?まさか私と別れるために、適当な嘘ついてるとかじゃないよね。


「この前、母親が倒れただろ?ただの過労だから本人が気を付ければ済む話なんだけど、俺もこっちの会社で働くの合わないなって思い始めてたから、情けないけど、逃げ帰るって感じ」

「百花と?」

「いや」


 良平君とは付き合うって言っても、まだ何も起きていない。

 なんなら、奥にいるケン君、元カレの方がよっぽど深い仲だったりする。


「分かった。いいよ」

「本当?」

「うん。無かったことにしてあげる」

「ありがと」

「でも、ひとつ条件がある」

「なに?」

「百花と付き合うのは無しね」




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