最終絶対防衛線
VIPルームでモニタリングしていた前原が笑む。
そして背後で拘束されている弥生へ振り向いた。
「これは急展開だね」
「まさかAO最強の10人の内、5人もが揃うとは」
ニヤニヤしながら前原は弥生に顔を近づける。
「この状況でクリアー出来ないコンテンツなんて、もはやゲームじゃ無いよね!」
嫌悪感を隠さずに弥生は、
「ヒカリさん達が勝つと?」
とぼけた様子で弥生に背をむける前原。
「さて、どうだろうね」
「でも、、」
前原は笑みを消すと、VIPルームの窓からホールを見下ろす。
「この程度想定出来なくて、ウロボロスのリーダーは名乗れないよね」
ロアの氷結回廊が発動した。
遠隔発動させたそれは、エネミー群の中央部で効果を発揮し、範囲内のエネミーを一斉に凍結させた。
シウスとヒゲモジャは、ロアの正面の空間を大きく空けてエネミー群に突撃する。
ロアが杖を掲げた。
「解放 Lv99 ライトニングブラスト 」
破壊の奔流が轟音を纏ってロアから放たれた。
それは一瞬でエネミー群の前衛に到達し、氷結回廊で凍結したエネミー群をも貫通する。
雷の極大魔法をまともに食らったエネミー群は、蒸発するように霧散し消失した。
シウスとヒゲモジャは、自身等を追い抜いたライトニングブラストが開けた穴へ疾走する。
その2人を更に追い抜くように、突如高速で矢弾が通過した。
そして矢弾は、氷結回廊の効果範囲の先に着弾する。
着弾した矢弾は消失すると、その場に残像を伴ったハユハが弓を構えたままの姿で現れる。
ハユハは、先にある巨大な神龍の目前を見据え呟いた。
「エンピリアルアロー・ピィアス」
ハユハから放たれた超高速の矢弾が、衝撃波を放ち神龍の前に居たエネミー群に迫る。
そしてエンピリアルアローは、エネミー群を次々に貫通し屠ってゆく。
まるで音速を超えて飛来する隕石のように、なぎ倒し粉砕しながら。
直撃を免れたエネミーは、エンピリアルアローの放つ衝撃波に巻き込まれ、回廊の壁に向かって吹っ飛んで行った。
シウスとヒゲモジャが、エンピリアルアローで穿たれたエネミーの居ない空間を駆け抜ける。
それと同時にロアがキヨミンに魔法を施した。
「Lv99 瞬間移動 」
するとキヨミンの姿が消え失せる。
ハユハが神龍に向かって無造作に弓を放つ。
とくにスキルなど使用しない只の遠隔攻撃だ。
その矢は、シウスとヒゲモジャを認識し動き出した神龍の首に直撃した。
しかし不可視の壁に阻まれ、その矢は神龍に届く寸前で停止する。
ハユハは笑む。
「ミサイルプロテクションか、、」
「だが、その矢の付加効果までは防げまい」
その矢は消失すると同時に黒く歪な物体を生み出した。
それは一瞬で弾けると、中から漆黒の茨が溢れ出す。
そして漆黒の茨は増殖するように溢れ出し、見る見るうちに神龍を覆い尽くした。
悲鳴のような咆哮をあげ暴れる神龍。
だが漆黒の茨は神龍を解放する事無く拘束し続ける。
ロアの瞬間移動によって姿を消したキヨミンが、突如神龍の足元に姿を現した。
キヨミンはモーニングスターを振り上げて笑む。
「ナイス! 流石ロア!」
「狙い通りの位置や!」
【キヨミンのメテオストライクが発動】
モーニングスターとトールハンマーの二連撃から繰り出される、鈍器系最強のウェポンスキルが神龍の左前脚に直撃する。
凄まじい爆発と爆煙が神龍とキヨミンを覆い隠す。
すると間を置かずに神龍が左に横転した。
その巨大を支える左前脚が、メテオストライクによって部位破壊を起こしたのだ。
全身を覆う漆黒の茨で自由を奪われ、左前脚を無くした神龍が立っていられる訳が無かった。
神龍が地響きを立てて横転する傍で、キヨミンは周囲を確認する。
目の前に居たエネミー群は、ハユハのエンピリアルアローで一掃されている。
しかしその周囲やここまでの途上に居たエネミー群が、一斉に押し寄せ始めていた。
ようやく神龍とキヨミンの傍に到着したヒゲモジャ。
到着して早々、ヒゲモジャは神龍とキヨミンに背を向ける。
そしてヒゲモジャは、キヨミンをエネミー群から庇うような仕草をする。
「ここは私が!」
間髪入れずにモーニングスターでヒゲモジャの尻を殴るキヨミン。
「アホか、な〜にがここは私がや!」
「早う行って蹴散らしてこい!」
ヒゲモジャは尻を押さえながらヨタヨタと歩み出す。
「ひどい、、」
傍まで来ていたハユハが苦笑しながら、ヒゲモジャに呼び掛けた。
「左は自分が処理します」
「右は任せましたよ」
その刹那、シウスが横転した神龍の背後に突然現れた。
疾風改で瞬時に回り込んだのだ。
その手は漆黒の刃を振り上げる。
「Lv99 伍の太刀 次元断 」
漆黒の刃が地を裂くように一閃された。
その一筋の斬撃は、神龍の巨大を縦に走り抜ける。
そして断続的に発生する不可視の刃が、神龍の息の根が止まるまで刻み続けた。
低く響く地鳴りのような音がした。
シウスが音のする背後を見やると、巨大な鋼鉄の扉がほんの少しだけ口を開けていた。
神龍を倒した事により最終ゲートの鍵が解除されたのだ。
ロアが叫んだ。
「シウスさん、早くゲートを抜けて!」
シウスは巨大な鋼鉄の扉へ走り出した。




