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幸せと余韻と

学校の授業が終わりコウと弥生は、帰宅の途に着く。

勿論仲良く2人で帰るのだ。


しかし2人が付き合っている事を他人に知られたくないコウ。

故に別々に校門を出て後で合流する。



今日は本屋に寄ったりして軽めの放課後デートをした2人。

同じ学校の生徒と出くわさないか、ビクビクしつつもコウと弥生は楽しい時間を過ごす事が出来た。



さて後は帰宅するだけだが、コウは取り敢えず弥生の意思を確認する事にした。


丁度交差点で信号待ちの良いタイミングだ。

「この後どうする?」


弥生は少し困ったような表情をした。

「う、うん、、、」



そして弥生は、コウの胸にそっと片手を置く。

「今日は、、、」

そのまま少しコウを優しく押すように、

「今日は、、真っ直ぐに自分の家に帰って、、」



意外な弥生の言葉にコウは訝しむ。

「、、、、」

だが出来るだけ表情を出さないようにコウは装う。

弥生を気遣ったのだ。

「そうか、、分かった」



そんなコウの気持ちに気付いた弥生は慌てて、

「勘違いしないでね、コウくん!」

「何か含むところがあるんじゃなくて、、」



照れた顔を隠すように弥生は俯いた。

「今日は、コウくんから、、」

「大きなご褒美を貰っちゃったから」


「これ以上、コウくんから貰っちゃったらバチが当たっちゃいそうで、、、」



コウは溜息をついた後、弥生の頭にポンと手を置く。

そして静かに優しく、

「何か不安になる事が?」



少し驚いた表情をする弥生。

「、、、、」

さらに苦笑すると、

「普通、その歳の男の子は大体鈍感なんだけどねぇ」

「コウくんは鋭いよね、、」



静かに弥生を見つめるコウ。

そんなコウを褒めるように弥生は、

「コウくんみたいに些細な事で気に掛けてくれるのは、例外中の例外だよ!」



コウはそんな事を聞きたい訳では無い、と言うように率直に一言、

「で?」


弥生はまた苦笑しかけて堪える。

「優しいというか、、遠慮がないというか、、」



そして弥生は、深呼吸するように一息つく。

「そうね、、、」

「こうやってコウくんと一緒にいる時間が凄く嬉しくって」

「楽しくって、、、だからもし、、」



コウの瞳を弥生は切なそうに見つめる。

「もし、一緒に居られない時間が長くなったり、増えたり、」

「万が一、もう二度と会えなくなったりしたら私、、、」



コウの両手がゆっくり動き、弥生をそのまま優しく抱き寄せる。



コウは弥生を抱きしめて、

「馬鹿な事を考えるな、、」


抱きしめられた弥生は、安心した表情で頷く。

「うん、、」


人の往来が殆ど無い交差点だが、流石に恥ずかしくなった弥生はコウから離れると、

「こんな所、学校の子に見られたら困るんじゃない?」


苦笑するコウ。

「そうだな」


コウは来た道を戻ろうと身を翻す。

このまま交差点を渡れば、弥生の家に向かってしまうからだ。

「じゃぁ、今日は真っ直ぐ帰るよ」

「また明日、、」



コウを見送るように小さく手を振る弥生。

「うん、またね!」

「コウくん、、」



弥生はコウに抱きしめられた暖かさの残滓(ざんし)を身体中で感じていた。


まだ9月の下旬に入ったばかりで、外は残暑がキツイ。

さらに日本特有の湿気を伴った空気が、暑さを一層際立たせる。


でもコウの体温は"暖かく"心地よかった。

その暖かさを忘れたくない。


だが、コウが自分から遠ざかって行く姿を見ていると、"それ"がまるで距離と共に薄れ行くようだ。


心細さが自分を支配して行くように、暑さが自分に纏わり付いてくる。



それはきっと錯覚なのだろう。


分かってはいるが、弥生はそこに無いコウの暖かさに、つい手を差し出してしまいそうになった。



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