剣聖の四天王とunknown(2)
ロアでさえ数える程しか使った事のない魔法を、unknownが使用した。
それは闇嵐という魔法だ。
対象に与えるダメージは微々たるもので、PvP、PvE共に誰も使わないゴミ魔法とされていた。
しかし非常に効果範囲が広く、使用者の魔力値に比例してさらに拡大する。
その上、極小の闇の破片が舞うエフェクトの為に、視界が奪われてしまう。
さらに断続的に続く微々たるダメージで、走る行動がキャンセルされて結果走れなくなると言うオマケ付きだ。
こう見れば相手の行動を封じる便利な魔法に見える。
だが使用出来るクラスが魔導師のみで、消費MPが多すぎるのだ。
この闇嵐を使うくらいなら他の魔法を使う方が、コストパフォーマンスも効果も高いのだった。
ロアは考える。
魔導師には無用の魔法かもしれない。
しかし、それがハイブリッドなチートキャラなら話が違ってくるのでは、、と。
『私なら、、、』
「ハユさん! モジャさん! 目くらましだよ!」
「烈風と背後からの疾風に気を付けて!」
直ぐに注意を喚起するロア。
ヒゲモジャはロアの声に頷いた。
そして未知の相手に心が踊ったヒゲモジャは笑む。
「チートによるハイブリット故に、」
「単身でもナインピラー3人を相手どる手段があると言う訳か!」
突然ヒゲモジャの正面にある闇が2つに割れた。
unknownがヒゲモジャに烈風を放ったのだ。
それを目視したヒゲモジャは、unknownの大凡の位置を看破する。
『これを相殺して、死角からくる疾風に備える』
『疾風が来なければ直接波動掌をぶち込んで終わりだ!』
ヒゲモジャは即座にウェポンスキルで相殺にかかる。
「Lv99 虎砲 」
雷撃を纏った縦拳が烈風と衝突する。
その刹那、ヒゲモジャの背後に鈍い衝撃が走った。
青白い巨大な斬撃が、ヒゲモジャの背後に直撃したのだ。
「な?!」
ヒゲモジャを背後から襲った"それ"は、烈風だった。
ヒゲモジャはダメージを受けた反動で前につんのめる。
『前後から同時に烈風だと?!』
直ぐさまヒゲモジャは精神的な体勢を整えて、次に来るであろう"背後からの疾風"に集中した。
しかしヒゲモジャの"読み"は外れる。
unknownが正面に突然現れたのだ。
納刀した状態で現れたunknown。
恐らく納刀し、疾風改でヒゲモジャの懐へ瞬時に移動して来たのだろう。
そして納刀した真の狙いは、ゼロ距離なら全クラス最大級の威力が出るウェポンスキル。
「零の太刀 羅生門 」
迎撃も回避も防御も叶わなかった。
unknownが居合から放った一閃がヒゲモジャを切り裂いた。
「ば、ばかな、、、」
既に烈風の被弾により体力ゲージは半分に減少していた。
そんな状態で羅生門に耐えられる訳もなく、ヒゲモジャは地に伏せた。
闇嵐の効果が切れ、フロアー全体に視界が通るようになる。
ロアとハユハは呆然とするしかなかった。
2人の眼前には倒れ伏したヒゲモジャと、無傷のunknownがその傍に立っていたからだ。
unknownが不敵に笑みヒゲモジャを見下ろす。
「ランキング3位の拳王もこの程度か、、、」
「調子に乗るな」
ハユハが静かに呟いた。
何の抑揚もない声色だった。
だか、ロアには分かった。
日頃、滅多に怒らないハユハが怒りを露わにしていると、。
そしてほんの少しだけロアの心に期待が膨らむ。
公式戦では見せないハユハの本当の"怖さ"を観られることに。




