剣聖の四天王とunknown(1)
冬月の姿が消失し、unknownが正体を現わす。
そして新生クラン、ソードエスカトスの3名が微動だにせずunknownを凝視していた。
何をしでかすか分からないunknownを警戒したからだ。
ロアの傍にヒゲモジャが立ち、少し離れた柱のオブジェクト付近に待機するハユハ。
何時でも互いをサポート出来るよう布陣する。
焦れたようにunknownが一歩踏み出した。
「どうした?」
「かかって来ないのか?」
何か考え込むようなロア。
「、、、、、」
unknownがロアに向かって走り出す。
「なら、こっちから行くぞ」
ヒゲモジャがロアを庇うように前に立つと、
「奴は僕が直接相手しますから、」
「フォローお願いします」
unknownの斬撃をヒゲモジャはその拳で相殺する。
ロアは杖を構えつつ思案する。
『おかしい、、』
『この不利な状況で何故戦おうとする?』
険しくなるロアの表情。
『こうなる事は想定内なのか?!』
『なら目的は、、、?』
ヒゲモジャとunknownの激しい戦闘音が神殿フロアーに響き渡る。
近接戦闘なら随一と言われる拳王の攻撃を、unknownは難なく捌き打ち合い続けた。
その様子を感心しながら眺めつつも、ハユハは弓で狙いをつける。
するとunknownがハユハから見て、ヒゲモジャの影に隠れるような位置どりをした。
ハユハは顔をしかめて再び感心する。
『上手い、、こちらをも把握しているのか』
『それにこの動きは、、、』
ロアもハユハと同じ印象と考えに至る。
『世界最強決定戦で、6対1になった時のシウスさんの動きに似ている、、』
『下手に魔法を撃てばモジャさんに当たっちゃうし、』
『範囲魔法は論外だし、、』
ハユハが舌打ちをして構えていた弓を下げる。
その様子をみたロアは、
『ハユさんも私と同じか、、、』
『本来パーティーを組んでいれば仲間に攻撃は当たらないのだけど、、、』
『最上位10名のプレイヤーは、システム上PvPではパーティーを組めない、、、』
そうAOのPvPにおいて、剣聖とナインピラーを含む10名は互いにパーティーを組む事が不可能なのだ。
理由は簡単で、最上位10名が強過ぎる為だ。
つまり剣聖ないしナインピラーがPvPで共闘するとなると、誤射や誤爆などのフレンドリーファイヤーに注意しなければならない。
ロアは悔しそうに唸る。
『くぅ〜、こちらのデメリットを上手く利用されている』
今までヒゲモジャと近接で競り合っていたunknownが、突如後方へ大きく回避行動をとった。
違和感を感じたヒゲモジャだが、下がったunknownに追撃する為に追いすがる。
その刹那、unknownの左手が掲げられ戦闘ログが流れた。
[unknownのホーリーレイの構え、、]
咄嗟に足を止め横に回避行動をとるヒゲモジャ。
すると直後に白く輝く閃光が、元いた空間を裂いた。
「うお! 危なぁ、、」
とヒゲモジャが声を漏らす。
だがヒゲモジャの20m程後方に居たハユハに、ホーリーレイが直撃してしまう。
驚愕するロアとヒゲモジャ。
既の所でガード出来たようで、ハユハの体力ゲージは5分の1も減少してはいなかった。
unknownはニヤリと笑む。
「残念、、」
ヒゲモジャはunknownを警戒しつつ、視線だけをハユハに向けて呟く。
『まさか、僕とハユハさんを同時に狙ったのか?!』
ヒゲモジャの視線に気付いたハユハは、冗談ぽく汗を拭うような焦った仕草をする。
驚きはしたが、ハユハにもまだ余裕が有るようで胸を撫で下ろすヒゲモジャ。
一方ロアはそうでもなかった。
目を見開き唖然としていた。
『プレイヤースキルの高さと、精度の高い操作、』
『本当に、、まるでシウスさんのような、、』
そして自分の考えを否定するように、ロアは首を小さく横に振る。
『こんな戦い方、長く保つはずが無い』
『私達が味方を巻き込んででも本気で戦えば、』
『チーター1人倒す事なんて造作も無い!』
ロアの不安を払拭するように、unknownへ猛然と襲いかかるヒゲモジャ。
unknownは余裕の笑みを浮かべながら、再び大きく後退しヒゲモジャの間合いを外す。
また同じ事か?と警戒したヒゲモジャは、追撃を躊躇った。
その逡巡をunknownは見逃さない。
手を掲げると高速詠唱で魔法を発動させた。
「 闇嵐 」
unknownから闇色の突風と漆黒の破片が噴き出し始める。
そしてあっという間にフロアー全体を包み込んでしまう。
そしてロア達の視界は完全に奪われ、unknownの正確な位置が把握出来なくなってしまった。




