事実上最強と理論上最強(1)
草原ステージに佇む二人の影。
一人はAOランキング1位、剣聖シウス。
もう一人はAOランキング10位の天位雨音。
二人の距離は15m程だ。
雨音はゆっくりと青白いオーラを発する剣を抜き放つ。
「さて、この剣で上位プレイヤーと戦うのは初めてだが、、、」
「初めてが貴女でよかった」
静かに雨音を見つめるシウス。
「、、、、、、」
雨音はニヤリとシウスに微笑みかける。
「何故なら貴女以外では、」
「全力を出せそうにないからな」
イベントフロアーに設置された巨大ディスプレイを、静かに見守るプレイヤー達。
プレイヤーの一人が呟いた。
「事実上最強と理論上最強、、、」
「これって、、、」
傍にいた他のプレイヤーが同調する。
「世界最強決定戦みたいなもんなんじゃ?」
頷くプレイヤー達。
「だよな!」
「プライベートイベントでこんなカードが観れるとか、、」
「最高じゃねぇか!!」
観戦していたプレイヤー達が各々に呟いていると、いつの間にか最強の二人による戦闘が始まっていた。
青白い巨大な斬撃が直撃して、爆発のエフェクトが視界を奪う。
シウスが放った烈風が雨音に直撃したのだ。
しかし雨音は微動だにせず、魔法障壁でいとも簡単に防いでしまう。
並のプレイヤーキャラクターなら、剣聖の烈風を喰らえば即死だと言うのに。
観戦していたプレイヤー達は、その次元の違いを間近に感じて唖然とする。
魔法障壁で守勢に回った雨音。
そして烈風のエフェクトで若干視界を悪くした為、アドバンテージはシウスにあった。
少し離れた位置からシウスは、素早く雨音の側面に回り込む。
雨音は視線だけをシウスに向けたように見えた。
見失ってなどいないぞと、言わんばかりに。
雨音が素早く静かに片手を掲げる。
「 多重魔法詠唱 発動 」
雨音に突進しようとしていたシウスの足が止まる。
一瞬で流れるよう次々に、魔法を発動させる雨音。
「チャージLv99 コールライトニング 」
「チャージLv99 ダークネスボーライト 」
「Lv99 マジックミサイル 」
驚愕するシウス。
一度に3つもの魔法を雨音は発動させたのだ。
マルチキャスト、そしてチャージ。
どちらも"直接"初めて目にするスキルだ。
チャージに関しては先程のプレイヤーとの戦闘で、シウスもモニタリングしていて確認済みだ。
故に時間を与えては不味いのは明らかだった。
しかしマジックミサイルがシウスに向かって飛来する。
1つの魔法でありながら、10にも及ぶ白く光る魔法の矢が迫るのだ。
シウスが攻勢に回るのは無理があった。
シウスの左手が瞬動した。
「 絶掌 」
絶掌により形成された不可視の障壁に、マジックミサイルが着弾する。
砕け散る魔法の矢が光を放って、辺りを眩く照らした。
先程とはまるで逆の立場に立ったシウス。
アドバンテージは今、雨音にあった。
間髪入れずに雨音がシウスの目前に迫っていた。
雨音の青白い刀身がシウスを襲う。
シウスの漆黒の刃が、それを迎え打つ為一閃された。
互いの刃が衝突し甲高い音が響き渡る。
そして勢いのまま振り抜かれた刃は、弾きあって互いの距離を離してしまう。
シウスはそのまま後方に素早く退がる。
だが雨音は追おうしなかった。
ニヤリと笑んだ。
「いいのかい?」
静かにその場に佇む雨音の両側には、チャージされて巨大化しつつある黒い火球と紫電の球体が浮かんでいた。
「距離をとれば、最強魔法が完成されてしまうよ」
シウスの表情は珍しく険しい。
雨音は青白く発光する剣を見せるように掲げる。
「まぁ近づけば、このソードオブクロノスの間合いだがね」
シウスは静かに呟く。
「そうだな、、、」
"最強"の剣聖が押されている、。
観戦するプレイヤー達の目にも明らかだった。




