冬月と罠(2)
冬月の火球を至近で受けたヒゲモジャは、たたらを踏むように後方にノックバックしてしまう。
なんとかガードは間に合ったが、物理と違い魔法は完全にガードは出来ないのだ。
自身の魔法耐性によるレジストによりダメージが軽減され、その半分がガード時のダメージとなる。
あまりレジスト出来なかったのか、ヒゲモジャは顔をしかめる。
「イタタタ、、、」
ヒゲモジャが怯んだ隙を冬月は見逃さなかった。
ボーライトの爆煙を煙幕代わりにヒゲモジャに肉薄する。
だが突如飛来した弓矢が、冬月の側面に直撃しヒゲモジャへの攻撃を留まらせた。
しかし冬月にダメージは入らない。
予め仕込んであった魔法障壁が発動し、飛来した弓矢のダメージを相殺したのだ。
そして特に慌てる事もなく、冬月は後方へ大きく距離をとる。
それを見越した様に、次々と冬月の足元に弓矢が飛来し少し顔をしかめた。
追いすがるよう続けて飛来する弓矢。
冬月はさらに後方に退がる。
このフロアーと隣のフロアーを繋ぐ通路へ一旦退避する為だ。
フロアーと通路の境目に何とか到達する冬月だが、不可視の壁に阻まれている事に気付く。
冬月は舌打ちをする。
『なるほど、、罠か、、』
いつの間にか魔王ロアが拳王の傍に立っていた。
「残念だけど逃げ場はないよ」
このフロアーにいくつも有る巨大な柱の影からハユハも姿を現わす。
ロアは笑みを浮かべ冬月を一瞥する。
「 究極封印 」
「このユニーク魔法で、フロアーからは一歩も外に出る事は出来ないよ」
冬月は不可視の壁を背にニヤリと笑うと、
「たかだかLv94のプレイヤー1人に、ナインピラーが3人がかりとは、、」
「リンチのつもりかい?」
ハユハが冬月に向けて、突然挙動無しの弓矢を放つ。
「君が只のプレイヤーなら、こんな事はしないさ!」
ノーモーションで放たれた高速の矢弾が冬月を襲う。
既の所で回避する冬月だが、刹那に矢弾は妙な軌道を描いた。
ホーミングしたのだ、矢弾が。
冬月の表情が険しくなった。
『追尾型の魔法矢、、!』
『まずい!』
魔法の矢弾を回避出来ず咄嗟にガード体勢に入る冬月。
そして顔をしかめた。
何故なら只の矢ならガードすれば済む事なのだが、魔法の矢弾には必ず何かしらの追加効果が発生するからだ。
ダメージが通らなくても、相手に矢が接触すればいいのだ。
魔法の矢弾は、冬月が危惧した通りにガードの上からエンチャントされた魔法が発動する。
それは雷属性の"スタン"だ。
矢から放たれた雷が冬月を覆い尽くし、感電させ動きを封じた。
それを確認したロアとヒゲモジャが、間髪入れずに追撃体勢に入る。
ロアは杖を正面に掲げると、そこに巨大な魔法陣が形成され雷が収束し始め、
「ライトニング、、、、」
ヒゲモジャは右腕を弓の弦を絞るように引く。
「拳王、、、」
そして2人は同時に攻撃を繰り出す。
ロアの形成した魔法陣から、凄まじい雷撃が束となって放たれる。
「ブラストー!」
ヒゲモジャの引き絞られた右手が勢いよく前方に押し出され、眩い巨大な闘気が高速で放たれた。
「波動掌!」
高速で放たれた"ライトニングブラスト"と”拳王波動掌”は、身動きが取れない冬月に直撃する。
雷の嵐と闘気による衝撃波が冬月を覆いつくし、眩いエフェクトが視界を奪う。
ヒゲモジャはその様子を見つめ静かに呟く。
「ナインピラーの大技を2つも受けて、普通なら、、、」
ロアが頷く。
「即死だけどね、、、」
視界を奪っていたエフェクトが少しづつ消えてゆく。
その間隙に体力ゲージが”0"になった冬月の姿が見えた。
膝から崩れ落ち行く冬月。
その刹那、冬月の右手が瞬動し、戦闘ログが流れた。
【冬月、弐の太刀 烈風の構え、、、】
ログを見逃さなかったヒゲモジャは、即座に反応する。
「!!」
ロアに高速で迫る”烈風”を、ヒゲモジャが間に割って入るようにして防いだのだ。
当のヒゲモジャは何とかガードしたようで、ダメージはあるが深刻な状況ではない。
しかしヒゲモジャは険しい表情で呟く。
『魔法剣士が烈風とは、、』
『しかも戦闘ログにLv表記もなしか!』
ヒゲモジャに守られたロアは、ドヤ顔で啖呵を切る。
「あなた、unknownでしょ!!」
不気味な笑い声を漏らす冬月。
その冬月の姿が徐々に、まるで桜が散るように崩れてゆく。
「流石ナインピラー、、、」
「簡単には倒させてくれんか」
ハユハがロアとヒゲモジャの元まで来ると、
「君は我々におびき出されたんだよ」
「unknown、、、」
冬月の姿が崩れ去ったその場所には、ロアが知るunknownの姿があった。
ロアはunknownに杖を向けると。
「ナインピラー3人を相手にして、勝つ道も退路も残ってないわよ!」
「投降しなさい」
unknownは静かに笑む。
「剣聖はナインピラー6人相手にして勝って見せただろう?」
「たかだか3人、、、」
不敵な笑みに変わったunknownは、悠然と前へ歩を進める。
「それに、おびき出されたのは、、」
「お前達だ」




