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天位雨音とクロノスの剣

ロアはモニターを食い入るように見つめていた。



恐らく現状最強の武器である事は間違いない、”それ”が今初披露されたのだから。



ニヤケながら冷や汗をかくロア。

「こんなお遊びで、その能力を見られるなんて!」





兎に角、お祭りイベントである。

遠くから天位を眺めていても何も楽しめない。

そう思った一人の参加者が率先して武器を片手に、天位に突っ込んで行く。



雨音が踏み込んだように見えた。


次の瞬間、突っ込んできたプレイヤーの脇をすり抜ける様に雨音は移動していた。

その刹那にプレイヤーは、雨音に軽く斬り付けられる。

致命傷ではない、ただの通常の小攻撃だ。



その様子を見ていた後続のプレイヤー達が安心したのか、次々に雨音へ押し寄せ始める。


一人が鋭く雨音に槍で突き攻撃を放つ。

だが、それをあっさりと横に躱し、雨音は再び軽く斬り付けて前へ進んでゆく。


なんとも素早いのだが、雨音はのらりくらりと進んでは軽く斬り付けるだけだ。

そしてとうとう雨音は、100名のプレイヤー達に包囲されてしまう。



じりじりと距離を詰めて包囲するプレイヤー達。

その中のプレイヤーが口々に、

「斬り付けられたが、ダメージもショボイし状態異常効果とかも全然ない、、」


「何がクロノスの剣だ、、見掛け倒しかよ!」


「自分から囲みの中に入ってくるなんて、」

「理論上PvP最強とか、ただのはったりなんじゃないの?」


雨音の口角が少し上がったように見えた。



雨音は静かに呟く。

「Lv99 BlowByImpact(ブローバイインパクト) 」


クロノスの剣が水平に薙ぎ払われる。

前方では無く、雨音を中心に360°だ。


ブローバイインパクトは片手剣のウェポンスキルである。

自身を中心に基本的に前方範囲で、斬撃による衝撃波を飛ばして対象をノックバックさせるスキルであった。

しかし雨音の使ったLv99は、前方では無く自身を中心に全方向広範囲に及ぶ。


LV99ブローバイインパクトを受けたプレイヤー達は、雨音を包囲していた為に一斉に被弾してしまい、かなり後方までノックバックされてしまった。


だがそのエフェクトの派手さとノックバック効果の割には、ダメージは少なかった。

だれも致命傷にはならず、逆に唖然とするほどだ。



本来、ナイトなどの盾職がエネミーなどを引き付けて、敵を寄せ付けないように時間を稼ぐ技なのだ。

故にダメージは大したことが無かった。

それを知っているプレイヤー達は、LV99の技として少し驚いたが冷静さを取り戻す。

「効果範囲の広いだけのスキル使いやがって、、」

「馬鹿にしてんのか!」

誰かがそう罵った。



その時、天位は静かにソードオブクロノスを天に向けて掲げた。



天位雨音は微笑みながら、

「発動せよ! クロノス 」

「 Time Manipulation "タイムマニピュレーション"【時間操作】 」


天位を中心に闇のような汚染フィールドが広がってゆく。



そしてプレイヤー達全てを、その闇が覆ってしまう。

視界はクリアだ、、しかしすべての背景が真っ黒なのである。

恐らく天位を中心に、暗黒の空間が形成されたのかもしれない。



静かに佇む天位。

その手に握られたこの世で1つしかない剣から、禍々しいほどの闇のエフェクトが漏れ出していた。



一人のプレイヤーが呟く。

「身体が、、、動かない?!」


別のプレイヤーがそれを否定する。

「違う、、動くが、、」

「めちゃめちゃ動きが遅い、、」


それに同調するように他のプレイヤーは、

「というか、、遅すぎ、、」

「これじゃ止まってるのと変わらん!!」



天位は静かに語り出した。

「ソードオブクロノスの固有スキル、、」

「タイムマニピュレーション」

「今回初披露だが、サービスで皆さんにその能力を明かしましょう」



殆ど身動きの取れないプレイヤーの間を悠然と歩き抜ける天位。

「この剣で少しでもダメージを受けた対象は、」

「時間的行動制限を強制的に受けてしまう」


そしてプレイヤー達から離れた場所まで来ると、

「もう体感しているだろうが、」

「詰まる所、限りなく動けなくなると言う事だ」



ロアはモニターの前で驚愕する。



天位は、空いた手を少し掲げた。

「チャージ、、、Lv99 闇火球(ダークネスボーライト) 」

すると天位の頭上に、サッカーボールサイズの黒い火の玉が出現する。



微動だにせず呟く天位。

「魔法剣士、、」

「実は最強火力を誇る攻撃魔法を使えるクラスだが、」


黒い火の玉が徐々に巨大化してゆく。

「その詠唱(キャスト)の長さからvE、vP共に全く機能していなかった」

「それ故に、魔道士(マジックユーザー)に攻撃魔法の使い手として遅れをとっていた」



天位はニヤリと笑み、プレイヤー達を見据える。

「しかし、この"時間操作"により状況は一変する」



天位の頭上で超巨大化する黒い火球。


プレイヤー達は、驚愕し恐怖し顔が蒼白になってしまう。



天位は尚も静かに語り続ける。

「最長の詠唱をもって最大チャージされた、ただのダークネスボーライトは、」

「最強の攻撃魔法となって名を変える」



掲げられた天位の手がゆっくりと振られる。

「Lv99、、、」


そして黒き大火球が、それに呼応するように高速でプレイヤー達に放たれた。

「 闇火葬(ダークネスクリメイション) 」



全てを覆い尽さんばかりの闇の大火球がプレイヤー達に直撃する。


それに伴い大爆発と、黒い衝撃波のエフェクトが辺りを埋め尽くし視界を奪う。





エフェクトが収まると、そこには巨大なクレーターが出来上がっていた。


そしてプレイヤー達は、只の1人も立っていなかった。

100人もいたプレイヤーが、只の一撃の魔法で全滅してしまったのだ。



モニタリングしていたロアが、口を開けたまま硬直してしまう。

『なんなの、、これ、、』

『時間制御もビックリだけど、、、』


自分が唖然としていた事に気付き、ロアは我に返る。

「そもそも魔法剣士が魔法を"チャージ"出来るなんて初めて聞いた!」

「しかも最強の魔法に化けるなんて、、」



そして冷静にロアは考える。

『おそらく今公表した以外に、デメリットやウィークポイントが有るはずだけど、、』

『時間制御で取り敢えずは死角無しか、、、』



ロアは「いーっ!!」と頭を掻き出す。

「ナインピラーだからかもしれないし、、」

「手持ちの超レアアイテムの効果を偽って、公表したかもしれないし、、」

「考え出したらキリがない!!」



一人で暴れているロアに、ダイレクトチャットで誰かが呼びかけた。



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