新生クランと天位(3)
ハユハが担当したブロックは、城門前の戦闘フィールドだ。
中規模程度の城塞の周囲には堀が設けられていて、城門に続く橋が架かっている。
この橋は石造りの頑丈なもので、横幅は5mほどの広さだ。
橋自体の長さは堀に準じ、20mほどある。
その橋の中央にハユハは佇んでいた。
橋の少し手前に、次々と転送させられて来るイベント参加者のプレイヤー達。
その総数は約100名だ。
プレイヤー達は各々の武器を抜いていく。
中には少しでも有利にしようと、自身に先行でバフをかけている者もいる。
空中に浮かぶカウントタイマーの表示が”0”を示した。
すると一斉に橋になだれ込もうとするプレイヤー達。
ハユハは優雅に弓を取り出す。
そして上方に弓を構えて、
「まずは半分程減らしたいところですが、、、」
そう呟くと真っ赤な球体を弓から放つ。
「Lv99 爆撃矢 」
放たれた真っ赤な球体が、橋に押し寄せようとしていたプレイヤー達の上空に到達する。
プレイヤーの一人がそれに気づいて慌てる。
「や、やばい! 広範囲攻撃スキルだ!」
「みんな散らばれ~!!」
上空で一瞬だけ停滞していた真っ赤な球体が、無数の粒に分裂した。
一斉に橋に押し寄せてしまった為に、プレイヤー達の殆どが直ぐに逃げ出すことは叶わなかった。
無数に分裂した深紅の粒が、高速で逃げ遅れた大半のプレイヤー達に降り注ぐ。
深紅のその1粒1粒が、高威力のウェポンスキルのダメージを伴っており、しかも爆発するのだ。
降り注いだ深紅の雨が、爆発の連鎖を生み出し、固まっていたプレイヤー達を一瞬で即死させてしまう。
何とか爆発矢の範囲から逃れたプレイヤー達が、その光景を見て唖然とする。
ハユハが再び弓を構えなおす。
「さぁ~て、骨のあるプレイヤー何人程でしょうねぇ」
一方、荒野の戦闘フィールドを担当していたのはキヨミンだ。
各自、同時刻に戦闘が開始されたので、キヨミンは既にプレイヤー達と肉薄していた。
一応魔法を使えば、遠距離からの攻撃も可能なキヨミン。
しかし、ハユハのような戦闘スタイルは性に合わないと、いつも鈍器を持っておもむろに敵陣へと突っ込んでいくのだ。
プレイヤー達が目前に押し寄せた時、キヨミンは邪悪な笑みを浮かべる。
「Lv99 メテオストライク 」
キヨミンが振り下ろしたモーニングスターが、プレイヤー達ないし地面を直撃する。
そして大爆発を起こし、巻き込まれ爆散して吹っ飛ぶプレイヤー達。
キヨミンを中心に前方範囲10mのクレーターが出来上がってしまう。
この法王に集団で無策に近づくのは悪手と定石になっているのだが、、。
お祭り騒ぎの為か、皆一度は法王の代名詞である”メテオストライク”を食らってみたかったのだ。
ある意味、AOフリークと言うかキヨミンのファンなのかもしれない。
その状況を見て無事だった後方のプレイヤー達が、たたらを踏んで停滞する。
そんな残りのプレイヤー達を一瞥するキヨミン。
そして即死したプレイヤーに片足を乗せて足蹴にすると、
「はははははっ!」
「全員ミンチだ!!」
プレイヤーの一人が怯えたように、
「く、、さすがナインピラー随一の戦闘狂、、、」
「それに奇跡システムで手に入れた、その二刀流」
「そのせいで中衛クラスだというのに、この異常な火力の高さ、、、」
他のプレイヤーがキヨミンを罵倒する。
「そのチートのようなパッシブでナインピラーになって嬉しいか!!」
そのプレイヤーが次の瞬間、キヨミンに一閃されて即死する。
「ぐぼはっ?!」
モーニングスターとトールハンマーを持って不気味に佇むキヨミンは、
「あほが!」
「二刀流はナインピラーになった後に、奇跡で発現したパッシブや!」
怒りの形相でキヨミンは、二つの鈍器を掲げて悠然と進み始める。
「何か気分悪くなってきたわ!」
「ほんまに全員ミンチにしたろか、、、」
天幕でモニタリングしていたロアが苦笑する。
「あらら、、、キヨミンさん怒らせちゃったか、、」
「それにしても、、」
ロアは椅子にもたれかかる。
「奇跡システムねぇ、、」
「あんなのが有るから、妬みが強まってアンチが増える」
『水春氏が公式で言うには、どのプレイヤーも大小さまざまな奇跡が何かしら発現すると言っていた』
考え込むようにロアは腕を組んで唸りだす。
『殆どのプレイヤーは実用的では無いものだったりする、、』
『そして何故か上位プレイヤー程、強力なパッシブやスキルが奇跡システムで発現する傾向にある』
まるで癇癪を起したように頭を掻くロア。
「運営の意図をあれこれ分析して考えるだけ無駄か、、」
「すぐに修正、方針転換される可能性も有る訳だし」
そして落ち着いたロアは、雨音が担当している草原ステージにモニタリングを切り替えた。
まだ戦闘は始まっていないようだ。
お祭り騒ぎなので、キヨミンの状況のように皆突っ込んでいきそうだが様子が違う。
それはあらゆる面で雨音は畏怖され警戒されているからだ。
雨音はAOでカリスマ的な存在だ。
そう剣聖に匹敵するほどの。
AOコンテンツ攻略の権威であり、PvPにおいても理論上最強と言われている。
そんな雨音をプレイヤー達は一挙手一投足注目するのだ。
雨音が静かにプレイヤー達に歩を進める。
そして剣の柄に手を掛け、払うように優雅に引き抜く。
剣は少し小振りのロングソードで、ガード部分に美しい装飾が施されている。
その剣の刀身は両刃で、淡く薄い青色に発光していた。
遠目に雨音を観察していた1人のプレイヤーが驚愕する。
「お、おい、、あれって、、」
「クロノスの剣じゃ、、」
他のプレイヤーが雨音の剣を鑑定する。
「Sword of Khronos、、、」
「逆上の塔の主、、時間神クロノスの剣、、、」
草原に集まっていた100名のプレイヤー達がどよめく。
モニタリングしていたロアも驚愕する。
「ソードオブクロノス、、、」
「逆上の塔最深部100層のボス、クロノスを倒し、、」
「エンドコンテンツ逆上の塔をファーストクリアした者が、手に入れられる1つだけの報酬武器、、」
唖然とするロア。
「まさか攻略不能と言われた"逆上の塔”をクリアしたんだ、、、」




