結と過去とトラウマと(1)
ヒカリが藤妙子と会っている頃、結はとある喫茶店に一人でコーヒーを飲んでいた。
何故一人かと言うと、弥生と放課後に待ち合わせをしていたのだが、役員会で遅れているのだ。
放課後の喫茶店で、一人物思いにふける結は実に絵になっていた。
中身はともかく、外見はかなりの美少女だからだ。
丁度、窓際の席に座っていたものだから、道行く人の目に留まってしまう。
しかし全く動じない結。
普通なら赤の他人にジロジロ見られれば、誰だって嫌なものだ。
だが読者モデルをしている結からすれば、この程度の人の目は気にならない。
人に見られたり、注目される事に慣れているからだ。
さすがに声をかけられる事は無かったが、小一時間有名税として晒し者になった結は、さすがに待ちくたびれていた。
弥生のスマホにメッセージを入れて、帰ろうかと思い始めた頃、ようやく待ち人が到着する。
申し訳なさそうに結を見て、弥生が小走りに近づいてきた。
「ごめんね、、、」
「役員会が押しちゃって、、」
結は特に気にした様子もなく、
「仕方ないよ、クラス委員なんだし」
「誘った私のタイミングが悪かっただけだよ〜」
弥生が席に着くと直ぐにウェイトレスが来て、アイスミルクティーを注文する。
そして弥生は結に笑顔を向けて、
「ここは私がもつから、他にも好きな物注文してね」
気にしなくてもいいのにと、苦笑する結。
弥生はお冷を一口飲んで一息つく。
「で、何かな?」
「私に話があるんでしょ?」
すると結はニヤリとした。
弥生は、不気味な結の笑顔に少しだけ怯む。
結は、向かいの席に座る弥生の方に身を乗り出す。
「お兄ちゃんと付き合ってるのよね?」
困った顔で苦笑する弥生。
そして諦めたように弥生は、
「バレてましたか、、、」
「さすが結ちゃん、鋭いわね」
悪戯っ子のような笑顔で弥生を見やると、
「まぁ、お兄ちゃんの様子がおかしかったからね」
「口を割らせちゃった」
弥生は、少し引き気味で結に笑みを向ける。
「ほんと、、怖い妹さんね、、」
「それでね、お兄ちゃんの事で何か困ってる事ないか、」
「お節介を焼きに来たの」
と何故か自身満々で言う結。
「う〜ん」と、弥生は考え込む。
そして少し嬉しそうに、
「特に無いかな」
「と言うか、コウくん凄く優しいよ!」
間髪入れずに結も嬉しそうな顔で、
「でしょ!」
「なんせ、私が鍛え上げましたからね!」
「そうなんだ、、」と困った顔で弥生は相槌をうつ。
『鍛え上げたって、、、』
『女性の扱いや接し方って事でいいのよね、、』
と色々と心配になる弥生。
弥生のそんな様子もお構いなく、結は自身満々のドヤ顔で、
「ヘタレなお兄ちゃんでも、私にかかればあんなもんよ!」
苦笑するしかない弥生。
そして突然、結は改まる。
「で、正直なところ、どうなのかな?」
弥生は、結のコロコロと変わる様子に驚きつつも楽しんでいた。
しかし今度は真面目な顔だ。
弥生も改まって、
「不満は全然ないよ」
「ただ、、心配な事はあるかな、、、」
結にしては珍しく真剣な表情で問いかける。
「何かな?」
「差し障りなければ、話して欲しいなぁ」
少し俯いて、まるで思い悩むように弥生は話し出す。
「うん、、」
「コウくんって学校では、全く自分から人とコミニケーションをとろうとしないの、、」
「過去に色々有ったみたいだけど、」
「このままで良いのかなって、、、」
結は心配そうに弥生を見つめる。
「お兄ちゃんは、何も話してくれなかった?」
弥生は首を小さく横に振る。
「ううん、、」
「少し話してくれたけど、詳しくは何も、、、」
腕を組んで椅子の背もたれに結は身を委ねる。
「そっか、、、」
「実はね、」
「え?!」と内心で叫ぶ弥生。
本人が言いたがらない事を、妹が躊躇無く言うのか!、、と驚いたからだった。




