黒瀬ヒカリとヤン・メイリン(5)
ヒカリは食事を摂りながら、お喋りをしようとメイリンに誘われる。
グアハオ会長は、若い者同士で楽しみなさい、と言って席を外した。
私は他人から何歳に見えるか分からないが、一応年齢は伏せてある。
それでも実質17歳なので若いのは確かだ。
メイリン社長の年齢は正直、外見からは判断しかねた。
美人だし、お肌もツヤツヤだし、実際"若く"見える。
まさか10代な訳ないとは思うが、流石に直接年齢を訊くのは憚られた。
グアハオ会長が50〜60歳程に見えるので、メイリン社長はおそらく20〜30歳といったところだろう。
料理がズラリと並ぶ大きな長テーブルへ、ヒカリとメイリンが向かう。
ヒカリはビュッフェ形式なのが助かったと内心で呟く。
好きな物を好きなだけ取る事が出来るからだ。
つまり少量だけでも問題ない。
そしてヒカリとメイリンは、たわいも無い世間話に花を咲かせる。
メイリンはヒカリの予想に反して気さくで、とても話しやすい人柄だったからだ。
ヒカリとしても綺麗な女性と話が出来るのは役得である。
メイリンが少しの間、席を外したのを切っ掛けに、他の招待客がヒカリに群がり始めた。
群がるとは言い方が悪いが、礼儀と節度を守って皆順番にヒカリに声を掛け始めたのだ。
国内の財界人だけではなく、国外の来賓も多くヒカリに興味津々なようである。
引っ切り無しに来る招待客の相手をするヒカリ。
大変だが、これが本来の仕事だから仕方ない。
戻って来たメイリンが、苦笑しながらこちらを眺めていた。
そしてメイリンは、遠目だがヒカリに少しだけ頭を下げて離れて行く。
ヒカリの独占で仕事の邪魔になってはいけないと、気を利かせたのだろう。
小一時間は来賓等の相手をしただろうか、、。
ヒカリは疲れ切って、会場の隅に用意されている椅子に腰掛けて休憩していた。
俯いてため息をつくヒカリに、誰かが近づき声をかけた。
「お疲れのようだね、黒瀬さん」
ヒカリの目の前に立っていたのは水春だった。
「水春さんか、、、」
水春は手に持った、ミネラルウォーターが入ったグラスをヒカリに手渡す。
ヒカリは、グラスの水を一口含み喉を潤すと、
「メイリン社長が離れた隙に、怒涛のように話しかけられましたよ」
「例の如く、連絡先を教えて欲しいだの、、」
「この後、飲み直そうだの、、色々お誘いを受けました」
ニヤリとして水春はヒカリを見やる。
「だが上手いこと全ていなしたのだろ?」
ヒカリは、フっと、鼻で笑う。
「まぁそうですね」
「連絡先等は、全て水春さんに通してという感じで躱しましたよ」
「パーティーの後には、ケツカッチンと言う事にしておきました」
水春は苦笑する。
「皆、黒瀬さんの美貌と才能に興味津々だからね」
「大変かもしれないが、ぞんざいに扱わないでくれよ」
「私の大事な取引き相手だからね」
とぼけるような仕草をするヒカリ。
「分かってますよ、、」
「お仕事ですからね」
そしてヒカリは、また溜息をつくと水春へ改まって向き直る。
「水春さん、、」
「前から聞きたい事があったんです」
少しだけ訝しげに片眉を上げる水春。
「うん? 何だね?」
ヒカリは手に持ったグラスを見つめて、
「何故、AOのトッププレイヤーに強力な力を持たせたんですか?」
「それはナインピラーのユニークスキルや、剣聖のWOSの事かい?」
と、疑問に疑問で返す水春。
ヒカリは頷く。
水春は、少し考える様子を見せて、
「う〜ん、、」
「開発当初は、そんな予定は無かったんだよ」
「だがねβテストを経て、正式サービスが始まり、」
「君の存在を知って考えが変わった」
ヒカリは少し驚いた様子で聞き返す。
「私が切っ掛けなんですか?」
大仰に頷き、水春は話を続ける。
「そうだよ」
「当初、トッププレイヤー達の実力は、それ程差がないと思っていた」
「運や相性で毎回タイトルホルダーが変わると想定していたんだ」
水春はお手上げと言わんばかりのジェスチャーで、
「だがどうだい、実際は全くの想定外だった」
「ナインピラーは1年近くタイトルホルダーが変わっていない」
「さらに君に関しては、サービス開始から公式無敗だ」
そしてヒカリを鋭い瞳で見つめる水春。
「だからね、私は考えを改めた訳だ」
「最強の10人には、それに相応しい最強の力を持たせようと、、」
「どうせ最強だし、鬼に金棒持たせたところで結果は同じだからね」
水春の話を考察するようにヒカリは呟く。
「でもそれだと、ナインピラー間で技の相性やクラスで差が出てしまうのでは?」
「それに、私とナインピラーとの間でも差が開いているように思えます」
水春はニヤリとする。
「本当にそう思うかね?」
「え?」
ヒカリは、何か見落としが有ったのかと思い、それがつい口から漏れてしまった。




