思いやりと優しさと(6)
コウは、床に座り込んだまま固まってしまった。
何故なら弥生が突拍子も無い事を言い出したからだ。
夏用の薄い上掛け布団をめくり上げて、弥生はコウを招き入れるように
「コウくん、おいで、、、」
と言ったのだ。
弥生はニッコリ微笑むと、
「言ったでしょ、ご褒美をあげなきゃね」
「だから早くおいで」
頭の中が麻痺したような感覚にコウは捕らわれる。
そして弥生に言われるがまま、ベットに入り込む。
コウは、弥生の横に添い寝するような形になった。
上掛けが被されてコウと弥生だけが、まるで隔離された空間にいるようだ。
弥生がコウに抱きつくように、胸に顔を埋めてきた。
驚きと緊張のあまり、コウは身体が硬直する。
その上、密着する位に抱きついてきたので、弥生の身体の柔らかさが直に伝わりコウの煩悩ゲージが振り切れそうになる。
コウは内心で『やばいやばい!』と繰り返し慌てていた。
健全な年頃の男子なら、確実に"反応"してしまう状況だ。
と言うか、、"反応"してしまっている。
『うわ〜ん、、幻滅されてしまう、、』
とコウは脳裏で泣き言を叫ぶ。
そうコウが慌てている時に弥生は、
「ごめんね、、」
「私が風邪なんか引いてなければ、、何でもしてあげるのに、、、」
そして埋めていた顔を上げて、弥生は上目遣いにコウを見る。
「だから、、」
「コウくんの好きにしてくれていいよ」
「わたしを好きに触って、、、」
コウは理性が吹っ飛びそうになった。
しかし相手は病人だ。
いくら据え膳でも、若さ故の誤ちなど出来ない。
グッと堪えてコウは、
「ま、待ってくれ」
「まだ俺たちは17なんだぞ!」
「学生だし、何かあってもまだ結婚もとれないんだぞ!」
弥生はキョトンとした表情で、
「何言ってるのコウくん、、」
「2025年から法改正されたんだよ」
「男女共に16歳で結婚出来るようになったんだから」
唖然となるコウ。
「まじで?」
真面目な顔で弥生は、
「まじまじ」
今ので若干冷静さを取り戻したコウは、たどたどしく、
「そ、そうなんだ、、、」
『何でそんな事知ってるんだよ、、』
「ところでコウくん、」
「さっきの続きなんだけど、、」
と弥生が改まって言う。
コウは、何の事か分からず戸惑う。
「え? なんだっけ?」
弥生はモゾモゾと動いたと思うと、コウの背中に手を回して来た。
「コウくんのAOの師匠で、恩師のひと」
「今はどうしてるの?」
熱で火照った弥生の手が、コウの背中にその熱を伝える。
そして同時に弥生のリアルな艶かしさも伝えた。
コウは焦りつつ答える。
「AOのβテストが終了したと同時に、会う事は出来なくなったよ」
呆れた様子で弥生は、
「え?」
「連絡先は、交換しなかったんだ?」
少し困った表情でコウは答える。
「オンラインの関係って言うのは特殊でね」
「そこまで踏み込むと、その時の良い関係が壊れてしまうと考えてしまうんだ」
「まぁ、人によって例外もあるけどね、、、」
弥生は理解に苦しむと言う表情で、
「じゃあ、その人はもう現実どころか、ネットでも会えないんだ?」
何故か嬉しそうにコウは、
「いや、、、」
「その人はβテストの最終日に、こう言ったんだ」
「君が良い意味で変化し続けて、成長し続けるなら」
「きっとまた、この世界で会えるだろう」
それを聞いた弥生は苦笑する。
「何だか凄い抽象的でキザな言い回しだね」
コウも苦笑して頷く。
「そうだな、、」
そして弥生はまるで拗ねるように、コウの胸に再び顔を埋めると、
「やっぱりコウくんは凄いよね」
「自分なりに前向きに生きてる、、、」
「でも私なんか、、、」
急に弥生の様子が変化した。
心配になってコウは呼びかける。
「弥生?」
弥生は辛そうに、
「コウくんに、私も聴いて欲しい事があるの、、」




