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LOST SPELL  作者: 雲居瑞香
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精神世界(アストラルサイド)

一応注意書きですが、この物語は私の創造、フィクションです。この物語に出てくる人物、団体、事象は現実世界に関係はありません。


「リア! エリス!?」


 突如として開いた穴を、リアノーラとエリスが滑り降りていく。1人じゃないだけましだろうか。セレストが駆け寄ると、地下への穴は閉じた。

「はあ!? どういうこと!?」

 トラップハウスか、ここは! セレストは心の中で盛大につっこむ。ドアノブをまわすことがスイッチになっていたようだが……。

「開きそう?」

 ウェンディが閉じた地下扉を示しながら尋ねた。セレストは首を左右に振った。


「無理だな。古い魔術がかかってる。リアくらいの魔術出力でぶっ飛ばせれば別だけど、私たちくらいの魔力じゃ開けられないな」


 リアノーラのふざけた魔力量ならこの扉にかけられている魔術をぶっ飛ばせる気はする。だが、セレストやアーサーにはそこまでの出力がない。

「……リアノーラ様とエリス様は大丈夫でしょうか」

 アーサーが心配そうに言うが、セレストはけろりとして言う。

「ま、大丈夫だろ。ケロッとして帰ってきそうな面子だし」

 エリスは意外と魔力が高いし、リアノーラに至ってはなんで現代人のくせにこんなに魔力あるんだ、ってくらいの魔力を保有している。2人が落ちた瞬間はあわてたが、冷静になれば、むしろこっちの方が危ない気がする。それはエドワードも同じだったらしい。


「あの二人は殺されても死ぬような奴らじゃないからな……むしろ、俺は自分たちの方が心配だ」

「ああ。エドワードは魔力皆無だもんね」


 セレストが遠慮なく言った。アルヴィンよりはあると思うが、それでもどっこいどっこいである。

 しかしまあ、冗談ではなくセレストたちも危険かもしれないのだ。このパーティーメンバーの中で最強の魔術師が消えたのだ。状況は悪いに決まっている。


「しっかし、どうする? 私とアーサーじゃろくな魔術は使えない」


 リアノーラが異常なのであって、セレストやアーサーも魔術師としては能力が高い方に分類される。リアノーラがけた外れなだけである。

 一度戻ってもいいが、なんだかんだでリアノーラとエリスのことも心配だ。まあ、2人はケロッと戻ってくること請負だけど。

「……2人を捜しに行こう。気になるし」

 ウェンディが言った。他2人もうなずく。リアノーラがいなくなると、セレストが場を仕切ることになったらしい。

「わかった。でも、さっきので気づいた。この地下、かなり強力な魔術で場をゆがめられてる。魔術の使えないウェンディとエドワードは絶対に1人にならないこと」

 いいね? と念を押すと、ウェンディとエドワードは深くうなずいた。なんだかんだ言って、いい子たちだな。

 とはいっても、どこをどう行けばいいのかわからない。しかし、リアノーラのとエリスの2人が落とし穴に落とされた以上、どこかに似たような仕掛けがあるはずなのだ。

「セレスト様。これを」

 地下室を探索していたアーサーがセレストを呼んだ。見ると、壁が回転扉のようになっている。

「よく見つけたな」

「風が吹き込んできましたので、もしやと」

 アーサーは風属性の強い魔術師なのかもしれない。ちなみに、セレストは地属性が強いと判明している。ゆえに水の気の強いリアノーラと相性がいいのだ。

 回転扉を通って先に出る。魔法で作り出した光が、仄明るく道先を照らした。が。


「……見えないな」


 沈黙の末にエドワードが言った。ウェンディに確認すると、彼女も先は見えないという。一番視力がいいはずのウェンディにも見えないとは、どれだけ広い空間……って。

「……もしかして、これは幻覚なのか?」

「幻覚……ですか」

 アーサーが首をかしげた。だだっ広いだけの空間にしては違和感がある気がする。こんな時、リアノーラがいればいいのに。肝心な時にいない娘である。

 唐突に、エドワードが剣の鞘で石畳を激しく打った。耳を澄ませて、反響する音を聞く。

「……駄目ですね。俺には幻聴なのか、そうでないのか区別がつかない」

 反響してくる音で広さを探ろうとしたのだろう。だが、五感が狂わされているのかもしれない。正確な広さはわからなかったようだ。

 セレストは手に持った槍を握りなおすと、慎重に先に進んだ。エドワードとウェンディの手もずっと剣の柄にかかっている。

 周囲を警戒しながら進む。リアノーラとエリスは地下のさらに深くに落ちたので、どこかに下に降りる階段でもあればいいのだが……。


「きゃっ」


 リアノーラのあげた悲鳴より短い悲鳴が上がる。セレストが後ろを振り向くと、ついてきていたはずのウェンディとアーサーがいなかった。ということは、さっきの悲鳴はウェンディの悲鳴だろう。目の端に、横の壁が回転して閉まるのが見えた。また回転扉だ。

「……。ここ、トラップハウスなんですかね」

 取り残されたエドワードがセレストに言った。セレストはどっちつかずなことを言う。

「うーん。トラップはトラップでも、魔導かトラップなのかもね。ほら、また開かないし」

 今度はセレストが槍で壁をたたくが、びくともしなかった。ちなみに、エドワードがやっても同じだった。


「……2人だけになったな」

「……ですね……大丈夫ですかね」

「まあ、ウェンディもアーサーもなんだかんだ言って戻ってきそうだけどね」

「じゃなくて、俺たちがです。……俺、魔力なしだし」

「……」


 思わずセレストは沈黙した。エドワードは現実的だ。リアノーラに思いを寄せるような変人でなければ完璧なのに。しばらく2人とも立ち尽くしていたが、歩き出した。立ち止っていても仕方がない。2人とも頭はいいが行動派である。


「……エドはさ。リアのことが好きなわけ」


 沈黙の中とことこ歩くのがさみしくて、セレストは尋ねた。エドワードとは会話くらいはしたことがあるが、親しいとはいえない。ユリシーズなどとなら、文通としていたりするのだが、エドワードのことはよくわからない。そこで、妹分のことについて聞いてみたのだ。


「……まあ、好きですね」

「愛してる?」

「……ええ」


 ためらったが、言い切った。セレストが聞いた噂では、エドワードはかなりいい男に分類されるのだという。セレストの認識……というか、貴族の女性のほとんどの認識としては、アルビオン一いい男は宰相のアルヴィンである。エドワードは彼に次ぐほどのいい男だという。確かに、頭はいいし剣の腕もいい。それに、彼は美形だ。意外と面食いなリアノーラにとっては重要な要素である。

「……ま、確かにリアにはちょっともったいない男だよな」

 そういうと、エドワードが少し照れた表情になる。と、その時。


『――――あ、通じた? あれ? ダメ? 聞こえてたら返事してちょーだい』


 突然、リアノーラののんきな声が脳内に響いた。どういうことだ。セレストはエドワードの方に顔を向けた。

「……エドワード。今の、聞こえた?」

「今の?」

 首をかしげているから、聞こえなかったのだろう。魔力がないからだろうか。一応突っ込んで聞いてみる。

「いや。今、リアの声が――」

『あー、エドには声が届かないのよ』

「会話できてる!?」

 突然セレストが声を上げたので、エドワードがびくりと飛び上がった。

「な……なんだ!? どうしたんですか!」

「……ええっと。ちょっと待ってね」

 セレストは混乱する頭を押さえ、状況を整理すべく頭の中でリアノーラに問う。


『あんた、何してんの』

『うん。通じてる通じてる。よかったぁ。あのね。私たち、異空間に迷い込んでることに気付いてる?』

『異空間……幻覚じゃないのか』

『ある意味幻覚だけど。私のフィールドに近いって言ったらわかる?』

『ああ……』


 セレストは納得した。それなら、この微妙に納得のいかない状況も納得できる。

 リアノーラの魔術は特殊で、アストラル系魔術とセレストは呼んでいる。アストラルサイドは精神世界で、いわば幽霊とか、精霊とかの世界だ。リアノーラが通常の攻撃魔法を苦手とするのは、魔術の才能が大幅にこの精神系の魔法に割かれているからだと思われる。


 その魔法で、リアノーラは自分自身に都合がいい、異空間を形成することができる。魔力の消費が激しいので、あまり使わないようであるが。リアノーラがどこからともなく道具を取り出すのはこの異空間の存在が彼女の周りにあるからだ。

 リアノーラの異空間は精神世界だ。その中で、彼女は絶対の王である。それに近い空間ということは、この空間は、その空間を広げた魔術師に都合のいい世界ということになる。


『能力が近いから、こうして力場をゆがめて、精神つなげて……まあ、テレパシーみたいなもんね。セレストは血がつながってるから、つなげやすかったのよ。ホントはウェンディの方がよかったけど、彼女魔術がつかえないから、つなげにくくって』


 リアノーラが一気に言った。相変わらず常識はずれな女である。テレパシーで思念を送って会話しているらしい。いくら血のつながりがあると言っても、リアノーラとセレストは遠縁の血縁だ。

『……残念だが、ウェンディとアーサーとはぐれた。私はエドワードと一緒だよ。頑張ってウェンディにもつなげてくれ』

『うげ~。頑張るー』

 しばし、リアノーラの声が途切れた。ウェンディに呼びかけているのだろう。その間に、セレストはエドワードに説明した。


「今、リアから連絡があった。ここは異空間らしい」

「……異空間?」


 魔術師でないエドワードにはピンとこないらしい。身近な奴で説明してやる。

「リアがどこからともなく剣を取り出したりしてるだろ?」

「あ、ああ……」

「あれの拡大版だと言っていい。あれはリアの空間だけど、ここは誰の空間からわからないから、危ない」

「ああ。リアの言う隔離空間のことですか」

 エドワードが納得したようにうなずいた。そうか。リアノーラはこの亜空間を隔離空間と呼んでいるのか。何故知っているのかと思えば、彼はリアノーラとともにこの空間に閉じ込められたことがあるらしい。


「ネタを明かされてしまえば、私にもこの空間に違和感を覚える。でも、言われなければ気付かないくらい成功に出来た異世界だ。たぶん、リアにもこんなにうまくできない」

「……俺は2回目ですけど、あまり違和感は感じられませんが」


 やはり、魔力の有無の違いだろうか。感覚の違いかもしれない。感覚の鋭いものは気づくこともある。リアノーラの魔術ははっきりしているので、この異空間のように現実に沿う形の魔術は感じられにくいのかもしれない。


『お待たせー。連絡取れたわよ。同じ回線をつなぐから、セラとウェンディも会話できるわよ』


 リアノーラがさらりと言うのが聞こえた。器用だな。いくら性質の近い魔術だと言っても、ここまで利用できるのは彼女のセンスだろうか。

『ウェンディ、無事?』

 手始めに安否を尋ねてみる。疑っているわけではないが、本当に会話できるのか試すためだ。

『だいじょーぶ。心配かけたわね』

 ウェンディが軽い調子で答えた。うん。ウェンディだ。無事ならいいのだ。

『2人とも、今どのあたりだ?』

『わかんないわよ、そんなこと』

『ここ、異世界だからね……私は扉を開いたら合流! とか考えれば合流できそうだけど』

 相変わらず無茶な女だな。まあ、リアノーラの言葉も一理ある。アストラル系の魔術は精神力が大事で、この空間はアストラル系の魔術で作られているに違いないからだ。

 ただ、セレストはリアノーラほどの魔力がない。だから、リアノーラが当然のように使う魔術を使うことができないことが多い。今度のも無理だろう。だから、リアノーラが迎えに来てくれるのを待つしかない。


「大公!」


 突然、肘のあたりをつかまれて、セレストははっとした。会話に夢中で気づかなかった。目の前に―――。

「何、あれ」

「俺に聞かれても困るんですけど」

 エドワードが肩をすくめた。2人の目の前には、四足歩行のモンスターっぽいものがいた。犬ほどの大きさで、見たことのないものだ。闇に溶け込みうなっている。ただ、牙がやたらと大きい。


『どうしたの?』


 リアノーラの声が聞こえた。セレストは端的に答える。

『モンスターに遭遇した』

『あら。だいじょう……って、こっちも出たよ』

『あら、あたしたちのとこも』

 どうやら同時多発的に出てきたらしい。リアノーラが言った。

『通信、切るからね』

 セレストが同意する前に、リアノーラ側から切られた。こうなれば、セレストに再度つなぐ方法はない。セレストは意識を目の前のモンスターに移した。ずっと手に持っていた槍を構える。先に進むには蹴散らさなければならない。


 幸い、エドワードは剣の腕がよく、彼の剣にかけられたリアノーラの魔術もよく効いていた。セレストは彼を援護する形になる。セレストもフェアファンクス家で訓練を受けた剣士である。いや、剣士じゃなくて槍士だけど。本当は夫のデュークの方が強いのだが、っていうか、彼らは大丈夫だろうか。

 最後の1匹を切り伏せ、セレストは息をついた。本物のように血を流すモンスターを避け、先に進む。


「お。合流~」


 見ると、リアノーラがのんきに手を振っていた。怪我ひとつない。思った通りというか、相変わらずふざけたやつだというか……。というか1人か。エリスとはぐれてしまったのだろうか。

「リア。ウェンディとアーサーは?」

「さあ……。そのうち合流できるといいけど」

 と、リアノーラも少し心配そうだ。

 ふと、セレストは違和感を覚えた。しかし、何がずれているのかわからない。セレストが内心首をかしげていると、エドワードがリアノーラたちの方に足を踏み出した。エドワードは抜いた剣をリアノーラに向ける。

「エドワード!」

 セレストが声を上げるが、エドワードは答えず、静かに言った。


「お前は誰だ」

「……は?」


 リアノーラとセレストの声が重なった。セレストはリアノーラを見る。どこからどう見てもリアノーラだ。


「どういう意味?」

「お前は、俺の知っているリアノーラ=フェアファンクスではない」


 ほとんど、エドワードの勘だったのだと思う。しかし、リアノーラだと思っていたものは面白げに顔をゆがめた。その表情は、リアノーラではありえない。


「あ~あ。うまくいくと思ったのに。久しぶりに魔力の強い女が来てさー」


 リアノーラがリアノーラの口調ではない口調で言う。

「どういうこと? リアは? エリスは?」

 セレストはエドワードの後ろに下がりながら尋ねる。状況が悪い。この場に干渉できるはずのリアノーラは行方不明で、たぶん、こいつは強い。


「どうしたんだろうな? 死んでるかもしれないね。あの女は、私を封印した奴だからな」


 このリアノーラの姿をしたものが奇妙な音などの正体らしい。

「……お前は誰? 何をしようとしているの?」

 セレストが尋ねると、そいつは芝居がかったしぐさで両腕を広げた。

「よくぞ聞いてくれた! 私はアラステラ・ローウェル。ローウェル家の放蕩息子さ!」

 自分で言うな。セレストと、たぶんエドワードも心の中でツッコミを入れる。

 リアノーラの姿がぐにゃりとゆがんで痩身の男の姿に変わった。着ているものが200年ほど前のものである。ここは精神世界アストラルサイドだから、この男、もう生きていないのだろう。


「私はこの城で、悪魔召喚の儀式を行っていた。しかし、うっかり死んでしまってね。私の家族は旅先で行方不明になったと思ったようだよ」


 ということは、リアノーラが見た白骨死体はこいつのか。


「あきらめきれない私は、我が一族が悲願を達成するのを待った。この地下室に来たやつの体を乗っ取れば、私はまた儀式を続けられる」


 だから、幽霊になって返ってきたのか。口寄せは、不可能ではないが、よほどの力を持っていないと体の持ち主が了承しないのにその体を使うことは難しい。


「ところが、やつらはこの城を国に売りやがった。国はこの城を学校として使いだした。だんだん人々の魔力は弱まり続けて、私は半ばあきらめかけた。そこに現れたのがあのリアノーラとかいう娘さ! 強い魔力を持つばかりか、私の親族じゃないか! うってつけだと思ったね」


 そういえば、ゲイブリエルの母方の実家がローウェル伯爵家だといっていた気がする。最悪じゃないか。


「ところがあの女、私を封印しやがった。だが、その封印は私の干渉でだんだん弱まっていったよ。ちょいと仕返しするために、あの女の前に私の骨を出したり、あの女を呪ってみたりしたが、うまくかわされた」

「っていうか、彼女、共同墓地を掘り返しに行こうとしたからね。そんな嫌がらせは通じる相手じゃないよ」


 セレストは思わず言い返した。リアノーラはそんな柔な女ではない。

「ちぇ。相手が悪かったかなぁ。あいつの肉体も奪えなかったし。お前たちを人質にしたら、奪えるかな?」

 アラステアは不気味に笑った。セレストは思わず身震いする。

「お姉さんは魔力があるね。悪いけど、来てもらおうかな。そっちのお兄さんは始末しといて」

 そういうと、何か人型のモノがエドワードの方に向かってきた。これは……。

「そ。人の死体に悪魔を憑依させたんだ。私の力作。お兄さん、魔力ないんでしょ。頑張ってね」

 アラステラを相手にしていると、リアノーラがとても優しい女の子であったことが分かった。アラステラが背を向ける。


「大公! あいつを追ってください!」


 エドワードに叫ばれ、セレストはとっさに氷魔法を放ったが、途中で相殺された。ここはアラステラのテリトリーで、セレストはあまりにも無力だった。


「やめなって、お姉さん。一緒に行こうじゃないか。魔術師のお嬢ちゃんに会えるよ」


 手を伸ばすアラステラの背後で、何かがうごめいた。アラステラがとっさに身を翻すが、剣は彼の体を通過し、エドワードとの間に刺さった。

「なに、あれ。今、通り抜けなかった?」

「アストラル体……要するに、幽霊なんですよ!」

 のんきなウェンディにアーサーが全力でつっこみを入れた。ウェンディは剣で肩をたたきながら言う。

「そーよね。生きた人間の気配じゃないもの」

 そう言ってウェンディはアラステラに斬りかかる。

「ウェンディ! 物理的な攻撃じゃ効かないぞ!」

「そんなの、やってみなきゃわからない、でしょ!」

 ウェンディは気合の声を上げてアラステアに再び斬りかかる。精神世界で大切なのは気力。しかし、ここは彼のテリトリーだ。少々精神状態に異常があると思われるアラステアに、魔力が上乗せされているとはいえ、物理的攻撃は通じなかった。


「アーサー! 無事ね!? リアたちを知らない!?」

「いいえ。大丈夫だと、信じましょう。ところで、あのアストラル体ですが……」

「私たちでは、無理かもな……」


 セレストは唇をかんだ。アラステラ相手に、セレストたちは無力だった。

「……愛の魔法は、通常の魔法よりずっと強いと言いますが」

「エドワードか。……というか、それよりも……」

 セレストは口ごもる。

 ここまでセレストたちが追いつめられているのに、リアノーラが現れないのは、不自然なような気がする。まあ、彼女も超人ではないから、そんな非常識なことはできない、と言われてしまえばそこまでだが。だが、やはり違和感は感じる。

 その時、ウェンディが倒れた。彼女を中心に血だまりが広がる。セレストとアーサーは飛びつくようにウェンディの元に向かった。


「あは。残念でした~」


 アラステラが整った顔で邪悪に笑う。なまじ、顔立ちが整っているだけにその表情が恐ろしく見える。


『残念なのはお前だよ』


 唐突に声が聞こえた。頭の中から聞こえるというより、壁の方から聞こえる気がする。ただ、普通の声ではない。低く響いている気がする。


 そして、その声は聞いたことのあるものだった。




ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


「精神=アストラル」という解釈は私独自のものです。どちらかというと、正しくは「精神=スピリチュアル」ですね。アストラル体は魔術に関係するのですけど、かじった程度なので説明できません(笑)

リアの魔法に名前を付けたかったのですが、図らずもついてしまいました。アストラル系魔法。

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