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LOST SPELL  作者: 雲居瑞香
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ナイツ・オブ・ラウンドの事情

今回も最初と最後の落差。事件が起こってるのに何してるんでしょうね、彼らは。

 リアノーラは学校からまっすぐ宮殿に向かい、図書室に引きこもって魔法陣を調べまくっていた。日が暮れるころ、何とか解読に成功する。実は、魔法陣の種類はすでに分かっていたが、研究員気質というかなんというか、わかることをすべて調べつくしてしまった。ずっと本とにらめっこしていたので目が痛い。リアノーラは水を飲み、解読資料を持って図書館を後にする。

 ナイツ・オブ・ラウンドの事務室に行くと、怪我をしている第3席リディア以外の現行ナイツ・オブ・ラウンド全員プラスアルファがいた。姉のユーフェミアと王太子ソフィアだ。

 アルビオンの王族は長子相続だ。貴族は基本的に男子相続だが、場合によっては女子でも相続できる。つまり、何らかの事情があるのなら、リアノーラでもフェアファンクス公爵を継げるのだ。そんな気はさらさらないが。

 さて。現在の王太子である第1王女ソフィア・エリザベスはとても美人だ。切れ長の目、ウェーブがかったシルバーブロンドに碧眼。すっとした顎のライン。長身の細身でスタイルがいい。ソフィアとリアノーラの姉ユーフェミアは、驚くほど似ていた。髪の色こそユーフェミアはプラチナブロンドだが、それ以外の見た目、声などはとてもよく似ている。ユーフェミアがソフィアの専任騎士なのはその辺に理由がある。要するに、影武者なのだ。

「みんな、集まってるのね」

「お前を待っていた」

 第2席ユリシーズが、座れ、という風に空いているソファを指さした。リアノーラは素直に座る。

「何か分かったか?」

 ユーフェミアが身を乗り出す。眼鏡はしていないが、髪は三つ編みのままだった。服は制服のままだ。

「とりあえず、この魔法陣は召喚術に近いわね。かなりオリジナルがくわえられてる。何を召喚しようとしたのかはわからないけど」

 召喚術師をたしなむリアノーラでも、何を召喚させようとしたのかさっぱりわからん。まあ、リアノーラは正確には召喚術師に入らないのだが。

「遺体の少女は?」

「……何かを召喚するための生贄、と言ったところかしらね」

 そうとしか考えようがなかった。魔法陣だけでは魔術は発動しない。魔法陣は魔術を助けてくれるが、あくまでもそれだけ。魔力を加えてやらなければ、魔術は発動しない。もちろん、呪文を唱えるよりは魔力量は少なくて済むのだが。

 そして、魔術の規模が大きければ大きいほど、使う力は大きくなる。この場合は召喚対象が大きくなるほど使う魔力は多くなる。そして、命は人間が持つ最大の力。それを利用されたと考えるのが一番自然だと思われる。

「それに、気になる文字が。これ」

 と、リアノーラはソファの前のテーブルに魔法陣を写したノートを開いておく。魔法陣の一部。正しい見方をすれば上となる部分に、文字が刻まれている。

「この文字。superbia……つまり、高慢ってこと」

 高慢。それは、宗教でよくつかわれる、7つの大罪の1つ。魔術にも、影響してくることがある。古代フェーン語は、さしものリアノーラも読めなかったので、調べた。宮廷図書館には何でもある。素晴らしい。

「あと6回は殺人事件が起きると?」

 ユリシーズが首を傾けた。リアノーラは腕を組む。

「……う~ん。私、宗教関係は詳しくないからよくわからない」

 リアノーラは基本的に理系だった。歴史を専攻しているアレクシアならそれなりに詳しいと思うが。別に歴史や宗教の知識がないわけではないが、詳しいわけではない。

「……お前、魔女のくせに………」

 アンドリューが呆れたように言うが、仕方がないだろう。

「なに? 文句あんの? 中世、魔女や魔法使いを捕まえて処刑したのは神殿でしょうが」

 アルビオンや大陸の魔術大国ローデオルなどは魔術師たちをよく保護していたが、大陸のその他の国では、魔女狩りが行われていた時期がある。すぐに鎮火したが、魔女狩りで死んだ魔術師は数知れない。もっとも、魔術師でない人間よりも魔術師の方が多かったからすぐに鎮火したのも無理ない。魔女狩りを続けて行けば、王家も処刑しなければならないから。

 そして、魔女狩りを主導していたのは神殿だ。もしくは教会。魔術師と神殿は相性が悪いのである。魔術の最盛期である300年前、エリザベス女王期のころには、特別な魔力を持つ人を聖人として祀っていたこともあるようだ。神殿もコロコロ立場を変える。

「まあとにかく、私に聞いても無駄ってことで」

「………」

 全員沈黙した。魔術のことは何でもリアノーラに聞けばいいと思っているのか。そんなはずないだろ。それに、これは魔術がかかわっているだけで、事件はふつーの殺人事件だ。……いや、普通ではないか。

「ところで、被害者の名前は?」

「あ、ああ。名前はエマ=フロイド。平民の娘だな。年は17。ユーフェミアと同じクラスだ」

「ああ、やっぱり」

「あんな子、いたかなぁ」

 ユリシーズの報告に納得するリアノーラと、腑に落ちない様子のユーフェミア。姉のクラスメイトを妹の方が詳しいという謎の状況。

「ま、死んだあとの人の顔って、結構わかりにくいものね」

 さらっと怖いことを言ったのはウェンディ=エンフィールドである。リアノーラたちの父方のいとこで、エンフィールド伯爵の娘だ。ナイツ・オブ・ラウンド第7席になる。フェアファンクス家の血を引いているにしては小柄で、金髪に瑠璃色の瞳と、気の強そうな顔立ちが特徴だ。ナイツ・オブ・ラウンドの主君であるアルビオン国王チャールズ4世が「見た目で選んだ」というだけあり、彼女も見目が整っている。剣の腕も確かだ。

「ユフィの場合は、本当に顔を覚えてないだけだと思うけどね」

 リアノーラが冷静につっこむ。そして、やはり冷静に言った。

「ナイツ・オブ・ラウンドはこの事件にかかわらないでしょ? だって、関係ないものね。だったら独自調査するしかないわよね?」

 にっこり笑って言うと、実質的にナイツ・オブ・ラウンドを仕切っているユリシーズはリアノーラの友人ベアトリックスとよく似た整った顔に、引きつった笑みを浮かべた。

「……お前の恐ろしいところは、恐ろしく頭の回転が速いことと、笑顔が脅迫に見えることだな……」

「何それ。私がサディストだって言いたいの?」

「よくわかってるじゃないか」

 ユーフェミアが鹿爪らしくいう。リアノーラはにっこりする。

「お姉様。首絞めますわよ」

「いいよ。お前に私が殺せるわけないから」

「……」

 さすがは姉。妹のことをよくわかっていらっしゃる。ある意味ユーフェミアのためにナイツ・オブ・ラウンドに入る覚悟をしたリアノーラだ。そのリアノーラにユーフェミアが殺せるわけがない。たとえシスコンと言われようが、それは事実だ。

「確かにナイツ・オブ・ラウンドには関係ないが、お前には関係あるぞ、リア」

「宮廷魔術師から協力要請が来たから?」

「その通り」

 ユリシーズがうなずいた。リアノーラはため息をつく。

 いくらリアノーラが魔術師でも、できることはたかが知れている。殺人事件は管轄外だ。リアノーラにできるのは、魔法陣の解読ぐらい。犯人逮捕は警察の仕事。

「オーケー。了解。魔術関係は協力するわ。それでも、軍警察は私に情報を渡したくないでしょうね。私、騎士でもあるけど宰相の娘でもあるから」

 情報をすべて渡せば、宰相である父アルヴィンにすべて筒抜けになる。軍警察はそれをよく思わないだろう。

 結局のところ、自力で調べるしかないのだ。真相が知りたいのなら。



* + 〇 + *



 休日、ベアトリックスはアレクシアと祥子とともに遊びに来ていた。と言っても、祥子がベアトリックスとアレクシアを引っ張りまわしているだけである。アレクシアはそれなりに楽しそうだが。

 別にベアトリックスも楽しくないわけではない。いい友達を持ったなぁと思う。ただ、この2人といるとベアトリックスの長身が目立つのである。

 ベアトリックスは、自分が長身であることを悲観したことはない。最近では彼女くらい背の高い女性がいないわけではないし、背が高いとスタイルが良く見える。それに、剣を持つときに有利だ。ただ、小柄なアレクシアと祥子を見ていると、かわいいなぁ、と思うのだ。ちょっとうらやましいと。彼女たちが着るようなかわいい服は、ベアトリックスには似合わない。ベアトリックスの服装はいわゆる男装に近く、現にかわいい女の子を2人はべらせていると思われているのか、男たちの視線が痛い。近くまでくれば、ベアトリックスが女だとわからないはずはないのだが。

 いつもはいるリアノーラがいないのも痛い。彼女もそこそこ背が高い。彼女が隣にいれば、ベアトリックスがさほど目立つことはないのだ。まあ、彼女は男装しても女に見えるお嬢様顔なのだが。

 たぶん、先日フェナ・スクールで起こった殺人事件で飛び回っているのだろう。ナイツ・オブ・ラウンドは騎士団で、関係ないはずだが、魔術がかかわっている以上、数少ない魔術師のひとりであるリアノーラはかかわらざるを得ない。

 ベアトリックスがわからないくらい小さくため息をついたとき、アレクシアが振り返った。


「ねえベリティ。あそこにいるの、リアじゃない?」

「ん?」


 ベアトリックスは目を眇めた。この3人の中ではベアトリックスが一番視力がいい。だが、そんな理由がなくても、一目瞭然だった。

 緩いウェーブを描く銀色に近い亜麻色の髪。腰まで垂らし、カチューシャをしている。跳ねるように歩いていて、スカートのすそがふわふわ揺れている。同行者と手をつないでいた。

 あんな髪の色をした女は、リアノーラくらいだ。背格好もあう。隣にいるのは、リアノーラと同じくらいの背丈の……たぶん、女の人、かな。ベアトリックスと同じくらいの長さの黒髪だ。

「……何してんのかしら」

 祥子も目を細める。遊びに行こう、と誘ったときに仕事がある、と断ったのに。どう見ても遊んでいる。

「……ちょっと脅かしてやりましょうか」

「あいつを驚かせるのは難しいと思うぞ」

 ベアトリックスがまじめに言う。リアノーラの背後を取るのは難しい。ベアトリックスでも難しい。リアノーラは気配に敏感だ。

 そういいながらも、3人はリアノーラの背後に近づいた。本当に仕事中ならば、リアノーラは怒るだろう。ベアトリックスが手を伸ばす。その手が、がっちりとつかまれた。半身を返し、つかんだ方の逆の手に持った小さなナイフを突きつけてきた。

「なんだ、ベリティか」

「いや、君、わかっててやったでしょ」

 つっこみを入れたのはリアノーラの同行者であるエリスだった。意外と後ろから見るとわからないものである。リアノーラのように特徴があればわかるのだが、黒髪というのは珍しくない。最近では短髪の女性も珍しくないし。


「後ろから声かけるんじゃないわよ。うっかり斬っちゃうじゃないの。仕事中だって言ったでしょ」


 ナイフを納めながらリアノーラは言った。再びエリスと手をつなぐ。

 防寒しながらもどこかふわふわした格好のリアノーラとは違い、エリスは男装だった。すらりとしたパンツ姿である。全身黒い。正直かっこいいと思った。男に見えるメイクもしており、少女姿のリアノーラと並ぶと恋人同士のようだ。

 リアノーラはエリスと手をつないで歩き出す。眼を見合わせたベアトリックスたちもその後について行った。3人がついてきても、リアノーラもエリスも何も言わなかった。

「リアたち、何してんの?」

 祥子が遠慮なく聞いた。ベアトリックスが尋ねると怒られただろうから、正直ありがたい。ベアトリックスも気になっていたのだ。リアノーラは見た目は無害そうな美少女だが、中身はサディストである。キレることはあまりないが、だからこそキレた時が恐ろしい。言葉も辛辣である。

「仕事だって言ったでしょ」

「いや、どこからどう見ても仕事じゃないし」

 祥子がつっこむ。まったくもって同意見だ。リアノーラはちらっと祥子を見て、エリスを見た。エリスが苦笑し、うなずく。リアノーラは端的に言った。

「前」

 そういわれて、ベアトリックスたちはいっせいに前を見た。日が出ているとはいえだいぶ気温が下がってきている。コートを羽織った人が行きかう中、ベアトリックスはリアノーラの言いたいことを理解した。

「……なるほど」

「わかった?」

「ああ。2人とも大変だな」

 ベアトリックスは内心あきれるやら感心するやらで複雑な表情を浮かべた。彼女の袖を祥子とアレクシアが引っ張る。

「ね、何?」

 問われてベアトリックスは2人にしかわからないように前方の結構離れたところを行く男女の2人組を指さす。そして、2人からああ、という声が上がった。ちょうど女性の方の横顔が見えたのだ。距離はあるが、見覚えはあるだろう。何しろ、彼女はリアノーラの姉ユーフェミアとそっくりだから。

 なぜなにどうして、デートしているようにしか見えないリアノーラとエリスが仕事中なのか。それは、要人護衛中だからである。その要人とは、この国の王太子ソフィア王女だ。

 本来なら、ナイツ・オブ・ラウンドであるリアノーラとエリスの出る幕ではない。だが、ソフィアは専任騎士を1人しか持っていない。その唯一の人がユーフェミアだ。だが、ユーフェミアにこんなことを頼めるわけもなく。お鉢が回ってきたのがこの2人なのだろう。リアノーラとエリスなら威圧感もなく道行く人にとけこめる。

「えっと……デート?」

 アレクシアがかわいらしく首を傾ける。リアノーラがうなずいた。

「っていうか、お見合いかしらね。フィーアももうすぐ20歳だしね」

 国を背負う人に、子供がいないのはいろんな意味で問題である。

「相手の人は?」

 美人なお姫様の相手が気になる祥子。きっと、美形じゃなかったら縁談をつぶしてくれとか言いだすに違いない。美形には美形を、というのが祥子の言だった。


「エドワード」


 ……………。

 沈黙が流れた。平然とその名を言えたリアノーラが信じられない。

「……えっと、エドワードってナイツ・オブ・ラウンドの?」

 エドワードという名前はアルビオンで珍しくはない。他人かと思って祥子は確認したのだろうと思うが……。

「そうだよ。侯爵家の子息だし、身分的には問題ないし、いろいろプレミアついてるし、王族になっても問題ないわね」

 さらりと言ってのけた。きっと、リアノーラのこの態度と言葉を見たら、エドワードは泣くだろう。

 ベアトリックスたちは、エドワードと親しいわけではない。時々リアノーラと一緒にいる騎士のお兄さんと言った感じだ。学校でもたまに見るけど。

 それでも、エドワードがリアノーラに向ける好意をはっきりと感じていた。リアノーラが、それに気づいていないはずがない。それなのにこういうことを平然と言うサディストである。エドワードもどうしてこんな女を好きになったのだろう。

「リア……エドがかわいそうだよ。本人の前でそういうこと言っちゃだめだよ」

 エリスもあわれに思ったらしく、リアノーラにくぎを刺した。

「言わないわよ。そもそも、あの2人の縁談がまとまる可能性は低いでしょ。エドは侯爵家の跡取りだもの」

 ああ、そういう考え方もあるのか。同じ貴族だが、ベアトリックスはそういう感覚はあまりなかった。たぶん、女だからそういうことを言われていないからだろう。リアノーラも女だが、王位という特殊な枠組みに分類される。王族は、女性でも継承可能だ。だから、幼いうちから言い聞かされているのだろう。

 尾行中の2人がカフェに入ったので、リアノーラは数軒離れたカフェに入った。屋外のテラスで、同じく屋外テラスで向き合っている2人を観察した。ソフィアはにこにこしているが、エドワードは表情が引きつっている。まあ、相手は王族だから仕方がない。

 顔がユーフェミアに似ているので一発でソフィアだとわかったが、彼女の今日の髪は栗色だった。リアノーラが魔術で色を変えたのだろう。便利な魔術である。大衆には、ソフィアは銀髪のイメージが強い。そのため、髪の色が変わると意外にわからなくなるのである。ベアトリックスも、リアノーラが髪の色を変えたら一瞬見間違えると思う。

 口封じのためか、リアノーラが3人におごってくれた。完全庶民感覚の祥子は単純に喜んでいる。

「そういえば、どうしてデートなの? 普通のお見合いなら、屋内で十分じゃない」

 祥子が冷静に言う。数学は苦手だが、学内でもトップクラスの成績を持つ祥子は考えが鋭い。言われてみれば、確かにそうだ。

「普通の人みたいな感じで相手を選びたいみたいよ」

「陛下も甘いよね。その護衛に自分の護衛を割くくらいだし」

 エリスもにっこり笑って何となく怖い気がすることを言った。エリスも大概腹黒い。だがしかし、言われてみればチャールズ4世の護衛はどうなっているのだろうか。エドワードもあそこにいるし、3人抜けては戦力低下だ。エリスは苦笑して言葉をつづけた。


「宮殿にいるなら、陛下は大丈夫だと思うけどね」

「人数も減っちゃったしねー。おかげで抜けられないし」

「君が抜けたら困るよ。エドがショックで引きこもっちゃうからね」

「恋する乙女か、あの男は」


 たぶん、その通りだと思う。

「でも、そろそろリディさんが戻ってくるからね」

「何もないといいわね」

 リアノーラがさらりと言った。リアノーラの言葉はさらりとしているが、深い。というか、すでに自分の通う学校で殺人事件が起きているのだが、それは『何か』に入らないのだろうか。

 ベアトリックスはリアノーラの全身を眺める。リアノーラはスタイリッシュな格好をしていることが多いが、今日はふわふわしている。ふわふわ、というのが一番しっくりくるだろう。ふわりとした明るい色のスカートに、レースのついたコート。カチューシャも飾りがついていてかわいい。

 リアノーラも長身だが彼女はこういう格好もよく似合う。眼は切れ長気味だが、それでも美人だとこういう特権がある。ベアトリックスも整った顔をしているが、リアノーラのふわっとした感じがないのである。リアノーラがぽやっとした雰囲気で突っ立っていれば、どこぞのお嬢に見えるだろう。いや、本当にお嬢様だが。


「何見てるのよ。ベリティもチョコケーキ食べる?」


 リアノーラに見とがめられ、ベアトリックスは目をそらした。祥子とアレクシアは遠慮なくチョコケーキを食べていた。リアノーラ本人はモンブランケーキを食べている。

 リアノーラがちらりと護衛対象を見た。彼女は見なくてもだれがどこにいるかわかる。彼女いわく魔術なのだが、それもあってリアノーラが採用されたのだろう。利用され過ぎて倒れたりしないか、ちょっと心配である。

「……いらない」

「そう」

 リアノーラが暖かいカフェオレを口に含んだ。リアノーラがちょっと微笑む。

「私がナイツ・オブ・ラウンドになったら、ベリティは怒ると思ったわ」

 ベアトリックスが騎士を目指しているのはリアノーラたちも知っている。魔術師であるリアノーラが先に騎士になったら、ベアトリックスが怒ると思われても仕方がないと思った。

「そこまで短慮じゃないよ」

「そうね」

 目を細めたリアノーラがもう一度ソフィアとエドワードの方を見た。ベアトリックスも目をそちらに向けると、2人が席を立っていた。リアノーラが3人に目を向ける。

「じゃあ、これで」

「気を付けてね」

 エリスもにっこり笑い、2人はソフィアとエドワードの追跡……ではなく護衛に戻る。というか、エドワードがいる時点で護衛はいらない気がするんだけど。


「大変だねー、ナイツ・オブ・ラウンド」


 祥子がホットチョコレートを飲みながら言う。祥子は美人と同じくらいチョコレートが好きである。

「完全にナイツ・オブ・ラウンドの職務レベルを超えてる気がするけどね」

 ベアトリックスがちょっと呆れて言った。大丈夫だろうか、この国。

「……でも、ちょっと心配だよね。リア、過労で倒れたりしないかな」

 きっと、過労死したら労災が下りるのだろう……と、今はそんなことは関係ない。アレクシアの心配は、ベアトリックスと祥子にも少なからずある。

 ただ、リアノーラが倒れた暁には、真っ先にキレるのは父親のフェアファンクス公爵だと思う。何度か顔を合わせているが、彼はリアノーラに対して過保護だと思うのだ。あんなサディストでも、親にとってはかわいいらしい。なんだかんだ言いつつも、ベアトリックスもリアノーラはいいやつだと思っているので、人のことは言えない。


ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

いつか300年前の革命についても考えなければ、と思っています。

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