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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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第78話「越後の夜」

夜。


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越後の城は、静かだった。


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風。


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火。


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遠い話し声。


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兼継は、一人で廊下を歩いていた。


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最近。


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眠りが浅い。


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武田信玄。


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織田信長。


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北条氏康。


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考えることが増えた。


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「……面倒だな」


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ぽつりと呟く。


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以前は。


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敵を斬れば終わった。


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だが。


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今は違う。


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道。


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米。


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冬。


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民。


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全部が、繋がっている。


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その時。


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廊下の向こう。


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若い兵が、慌てて頭を下げる。


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「兼継様!」


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兼継は、静かに見る。


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兵は、少し震えていた。


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「……何だ」


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「見回り中です!」


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短い返答。


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兼継は、少しだけ沈黙する。


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そして。


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静かに言った。


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「寒いだろう」


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兵が、目を見開く。


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「酒を出させろ」


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そのまま去っていく。


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若い兵は、しばらく動けなかった。


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魔王。


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だが。


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最近の兼継は。


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少しだけ、人間らしかった。


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(次話へ)


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