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第77話「霧の関東」
関東は、広かった。
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道。
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川。
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城。
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村。
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全部が、細かく絡み合っている。
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「上杉が南で動いたらしい」
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旅商人が、小さく呟く。
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「でも、まだ北だろ」
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別の男が、茶を飲む。
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「関東までは遠い」
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それが。
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今の空気だった。
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越後。
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怪物の国。
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だが。
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まだ。
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全国を呑み込むほどではない。
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その頃。
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北条氏康は、静かに地図を見ていた。
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霧。
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川。
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街道。
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「上杉は、まだ伸びる」
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家臣たちが、黙る。
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氏康は、続けた。
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「だが、急ぎすぎれば崩れる」
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静かな声。
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「国は、戦だけでは回らん」
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北条は。
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そこを知っている。
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だから。
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耐える。
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焦らない。
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関東は。
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まだ北条の国だった。
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