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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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第73話「尾張の鍛冶場」

火花が、散る。


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鉄を叩く音。


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熱。


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煙。


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尾張の鍛冶場は、昼でも暑かった。


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「もっと急げ!!」


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職人が、怒鳴る。


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火縄銃。


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槍。


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鉄板。


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全部が、足りない。


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「最近、注文おかしいぞ……」


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若い鍛冶職人が、汗を拭う。


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量が異常。


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戦国。


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だが。


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最近の尾張は、“国全体が動いている”。


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「信長様、何考えてんだろうな」


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誰かが、小さく呟く。


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その時。


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鍛冶場が、静まる。


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織田信長。


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突然。


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入ってきた。


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「よう」


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軽い声。


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だが。


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全員の背筋が伸びる。


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信長は、静かに鉄を見る。


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「悪くねえな」


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職人たちが、少し息を吐く。


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褒められた。


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それだけで。


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空気が変わる。


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「足りるか」


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信長が、静かに問う。


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老鍛冶が、少し悩む。


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「……まだ厳しいですな」


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鉄。


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人。


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時間。


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全部が必要。


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だが。


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信長は、笑った。


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「なら増やせ」


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即答。


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「人も」


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「鍛冶場も」


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「全部だ」


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その目。


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完全に先を見ている。


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戦だけではない。


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“時代そのもの”。


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職人たちは、少し震えた。


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この男。


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本当に。


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戦国を変える気だ。


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(次話へ)


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