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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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第60話「小さな戦」

戦国。


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だが。


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全てが、大戦ではない。


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越後南部。


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小さな村。


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「山賊です!!」


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兵が、叫ぶ。


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十数人。


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飢えた浪人崩れ。


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普通なら。


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誰も気にしない。


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だが。


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兼継は、立ち上がった。


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「兵は」


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「すぐ出せます」


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兼継は、少し考える。


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火輪銃なら。


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一瞬。


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だが。


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首を横に振った。


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「足軽だけで行け」


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家臣が、少し驚く。


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「……よろしいので?」


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兼継は、静かに答えた。


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「全部を私がやれば、育たん」


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沈黙。


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少しずつ。


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考え方が変わっている。


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戦国は広い。


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つまり。


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自分一人では終わらない。


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数日後。


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山賊は、討伐された。


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大戦でも。


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名戦でもない。


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だが。


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兵たちは、生きて帰った。


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村人たちは、頭を下げる。


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「ありがとうございました」


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若い足軽が、少し照れくさそうに笑う。


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その様子を。


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兼継は、静かに見ていた。


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天下は、まだ遠い。


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だが。


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こういう“小さな戦”の積み重ねで。


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国は、生きる。


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そのことを。


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兼継は、少しずつ理解し始めていた。


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(次話へ)


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