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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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287/288

第287話「外周変数の沈黙」

奥州、米沢城の一室。

伊達輝宗、十六歳は、南の国境から戻った斥候の報告を静かに聞いていた。


伊達は外周変数である。

中央の構造とは独立して動き、時に全体に影響を与える存在だが、今の彼らは動かない。


「越後は農具の増産に注力しており、軍勢を動かす気配はございませぬ」

報告を聞いた輝宗は、深く息を吐き出した。


「戦をしていないのに、こちらの動きがすべて読まれている。恐ろしい若者よ」

伊達が少しでも南下の兆候を見せれば、上杉は即座に情報の網を動かし、的確に防備を配置してくる。

戦を仕掛ければ、こちらの脆弱な構造が真っ先に崩壊することを、輝宗は本能的に察知していた。


「今は動くな。内の安定を優先せよ」

輝宗の指示により、伊達の軍事圧力は内に向けて圧縮された。


敵を殺しすぎない、勢力を安易に崩壊させないという思想は、目に見えない圧力として奥州の地をも縛っていた。

伊達の沈黙は、越後にとっての東側の安全を無言で保証していた。

世界は説明されない。

ただ、各主体が己の維持のために最適に動いた結果だけが、均衡という形で残る。

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