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第287話「外周変数の沈黙」
奥州、米沢城の一室。
伊達輝宗、十六歳は、南の国境から戻った斥候の報告を静かに聞いていた。
伊達は外周変数である。
中央の構造とは独立して動き、時に全体に影響を与える存在だが、今の彼らは動かない。
「越後は農具の増産に注力しており、軍勢を動かす気配はございませぬ」
報告を聞いた輝宗は、深く息を吐き出した。
「戦をしていないのに、こちらの動きがすべて読まれている。恐ろしい若者よ」
伊達が少しでも南下の兆候を見せれば、上杉は即座に情報の網を動かし、的確に防備を配置してくる。
戦を仕掛ければ、こちらの脆弱な構造が真っ先に崩壊することを、輝宗は本能的に察知していた。
「今は動くな。内の安定を優先せよ」
輝宗の指示により、伊達の軍事圧力は内に向けて圧縮された。
敵を殺しすぎない、勢力を安易に崩壊させないという思想は、目に見えない圧力として奥州の地をも縛っていた。
伊達の沈黙は、越後にとっての東側の安全を無言で保証していた。
世界は説明されない。
ただ、各主体が己の維持のために最適に動いた結果だけが、均衡という形で残る。




